第16話
朝、目が覚める。
「さあ、トレーニングよ。いきましょう!」
「ほい?」
まだ外が暗い様な朝、なんか気配すると思って目を開けたら目の前にソフィアの顔があった。文字通りの寝ぼけ眼で薄暗い今、彼女の表情はよく見えないが声は昨日よりもやる気に満ちていた。
「ほら!貴方の服はよくわからないけど、これでいいでしょう?」
「へえ?あ、ああ。」
勢いに押されて了承してしまう。しかし布団から出ると微妙な肌寒さでやる気が早速減衰、そして昨日の夜も遅かったので眠気を自覚して更にやる気減衰。
「…どうしようかな。」
『行くぞ、ソフィアに付き合ってやれ。』
ここでリキが何故かソフィアに加勢、でもこいつの声もちょっと眠そう。まあ一心同体だからか、俺と生活リズムが一緒っぽいんだよな。
『すまない、ソフィアに付き合ってくれないか。カラ元気につき合わせて申し訳ないが。」
その後にイズが語り掛けてくる。今も鼻歌が聞こえるソフィアの様子から彼女には聞こえていない様だ。
まだ暖かい布団が足元で手招いている中、それでも昨日泣いていた彼女を思い出し、ぎりぎり怠惰に勝つ事が出来た。
「分かったよ。」
そう言って俺も布団から出る。一人だったらまず起きない朝だが、誰かに必要とされている理由のある起床は、仕事をしていた頃よりも納得のあるものだった。
「ほら、流石にだらしないわよ、旦那様!」
「まって、ちょっと、息がさ…。」
そしてそのまま早朝ランニング十キロとなった。ペース速いし足痛い。リキの力を使えばなんてことない距離だが、自身の力で走るのが必要とソフィアが言うので自力である。
「まあ初日だしいいわ。それじゃあ剣を振りたいのだけど、いい場所は無いかしら。」
「ああ、それなら、マンションの裏山が丁度いいぞ…。あまり人来ないし。」
「それじゃあ行きましょう!あ、それとガンプさんも呼んで!」
そのまま裏山へ走っていく彼女の背を目で追いながら息を整える。だが一人になり冷静に考えてみれば、リキを持つ前の俺なら5キロ走れるかすら分からない。借りた力での戦いでも鍛えられてはいるのだろうな。
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