第12話

『よし!好感度部分と指示関係の緩和がちょっとできたぞ!』


「必要だけどよりによってそこかよ。ちなみに肝心の距離離れたらってやつは?」


『まだできてねえ…。』


「おい!」


『はあ。』


 最後のイズのため息は大体目が覚めてから三時間後、一応リキは一定の成果を上げていた。なお今ソフィアさんはシャワー中である。ちょっとドキドキするが、周りに人?が多すぎてそういう方向に行きそうにないのが悲しい。


「ごめんなさい、替えの服はあるかしら。」


 そして裸のままで居間の方にやってくる彼女。


「お、あ!ちょっと、ちょっとそんな!」


「え、やだそんな見られて恥じる様な体のつもりじゃないのだけど。」


 そんなやり取りの後ガンプに服を届けさせる。ただ冷静に思い出してみると、彼女の体はバキバキに鍛えられて巨乳ってより胸囲がでかいって感じだったのでちょっとモヤる。


「と、とりあえずどうしようか。」


「できれば一度、ホテルに戻りたいわ。服も出来れば変えたいし。」


「…すまん。」


 一応彼女の服は洗濯機で回しているが、まあ乾くのは夜だろう。なので替わりに俺の服を着てもらってるが流石に彼女に似合う様な服は持っていない。


「それじゃあ行きましょう。ええと、ご主人様かしら、この国では。」


「いや、それはちょっと。」


 そんな話をしながら二人で外へ出る。というのも彼女が泊まっているホテルが一キロ以上先にあるので一人じゃいけないとの事だ。なおガンプは外に出せないのでこの生活が始まってから日中は基本お留守番である。


「着いたわ。ここよ。」


「うお、ここは。」


 彼女の案内の元ついて行くと、ここらで有名な高級ホテルにたどり着く。なお神片達は体内に収納してある。まあここら辺からも一心同体であるってことは解ったんだろうな。


「なんだこりゃ、彼女金持ちなのか?」


 その疑問に律儀にもイズが答えてくれた。


『これは我がかつての使い手の子孫が作った企業のホテルだ。プロクタルという企業名は知らないか。』


「え、ああ。あの外資の大企業?」


『そうだ。子孫たちは来るこの戦いの為に私が居ない間も準備を続けていてね。貴様の剣の情報もその経営と並行に行っていた各国の調査の元に手に入れ、ここに来たのだ。』


「はあー、え、いや、ずっる。」


『まあ戦う前から、戦いは始まっていたという事だ。』


『へえー。』


 おい、へーじゃないだろリキ。とはいえ、毎回初戦で死んでたリキには取れない戦法だ。よく生き残れたな俺。


「それでは行きましょう、旦那様。」


「え、いや、あー、うん。」


 なんか照れくさくなりながらもここまでの道中でその呼び名に決まっていた。仕事していた頃に既婚者の女性が配偶者を旦那と呼んでいたのでギリごまかせるだろう。


 そのまま手を引かれエレベーターに二人で乗る。彼女の部屋に入るとホテルなのに俺の部屋より広い。これスイートとかそう言うやつか?


「うわー、ねえこっちに住みたいんだけど。」


「嫌よ、私はあなたの家の方が落ち着くし、この国らしくて好きよ。」


 そういう物なのかと思うと同時に、彼女の意志が反論として出た事で一応支配状況の緩和は出来たんだという事を理解する。


「それじゃあ着替えるから少しまっててね。」


 そう言って彼女はそのまま服を脱ぎ始めた。俺は急いで後ろを向く。


「おい、なんか色々緩和できたんじゃないのかよ!」 


『いや、ソフィアはもとからあんな感じの女性なんだ…。』


「素かよ!」


『お前もいちいち硬くなんなよ情けねえな…。』


 武器二振りとごちゃごちゃ話した後で振り返ると、彼女はロングスカートのドレスに変わっていた。女性っぽい服装もあったのか。すごい良い。


「貴方だったら別に見ても構わないのに。」


「…なあ好感度関係緩和入ったんだよな?」


『ああ、今確認しても直ってるぜ。』


「え、何、おじさん趣味とかか?」


「いえ、私は貴方の顔は好みではないし、体つきももっと鍛えている男の方が好きね。」


 淡い期待に正直な告白により、いきなりしょんぼりである。ただその俺の様子に彼女は慌てる。


「だ、だけど貴方は私に勝ったわ。私だって強くて頼りになる男性が良いのだけど、神片使いになると並の男なんてものの数では無いわ。けど貴方は男の使い手で、イズと私に勝った。そのうえで優しいし、紳士だからね。」


 おお、これは、なんか好感度が高い!この世の春がこんなタイミングで来たか!これなら同意の上、その上でそこそこにこちらの言う事を聞く状態。これは!


『お、また助平な事考え始めたな。』


『やはりこうなってしまうのか…。なぜ使い手が男なんだ…。』


「ぐおお。」


 なんだよこのストッパーは、生殺しじゃねえか!


「私は見られながらでもかまわないけど?」


 その一言が余計につらかった。

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