第10話

 女性を抱えて家路を走る。女性の服装はなんか豪華だ。詳しくは知らないが宝塚とかの軍服のやつっぽい感じ。コスプレ用みたいな安い生地でもないし、どこで売ってるんだこういうの。


 家に着くころには疲労感が激しく、アパートの駐車場でガンプを外したので自分の部屋である二階まで彼女を担いで登るのがつらかった。


「おい、一応無力化出来てんだよな。」


『たぶん…。』


 リキの説明では支配下に置いているという事らしいが、こいつの自信の無さのおかげでいまいち信用できない。


 とりあえず彼女は意識が無いまま床に座らせた。寝室がロフトで梯子で登る場所にある物だから彼女を持ち上げられないのだ。


 そして疲れているのに微妙な緊張感によって結局眠れず、そもそも寝首を掻かれる可能性まである為に目の前で見張る。もし寝てしまっても何かあったらリキが起こすとの事。


 戦いの後に疲れと眠気とも戦う事となった今、あのままほっといた方が良かったのではという弱音も頭によぎる中、結局彼女は起きずに俺もそのまま眠ってしまった。




[暫定マスター、起床を。]


「うん?」


 外が明るい、眠ってしまったようだがそれ以上に見るべき物があった。目の前に剣先が突きつけられているのだ。


「うお!まって、ちょっとまって!」


「ふう、わかったわ。」


 そう言って女性は細剣を鞘に入れ、何事も無かった様に目の前の床に座った。


「おい、リキ!なんかあったら起こすって言っただろ!」


『…え?あ、すまぬ、我も寝てしまった様だ。』


「あー、もう!というかあんた何で剣を向けて待ってたんだ!」


「本当に負けてしまったのかを確認する為ね。あのまま刺そうとしても剣が進まないから、良い確認になったわ。」


 ええ?とりあえず家に入れたけど、結構やばい人じゃない、この人。


『これでわかっただろうソフィア、我々は負けて、支配下に置かれた。』


「そう、ごめんなさい。イズベルド。」


『いや、お前は歴代の使い手の中でも最強であった。我々の力不足だったという事だ。』


「え、えーっと、とりあえず自己紹介とかしない?」


 そこでお互い自己紹介。彼女はソフィア・プロクト。神片である細剣はイズベルドであり、北欧の小さな島から来たとの事だ。


「私はソフィアと呼んで。イズベルドは普段イズって呼んでるわ。」


「んじゃ俺もそう呼ぶか。よろしく、ソフィア、イズ。」


『ん、が、ぐう…、わかった。』


『お前愛称で呼ばれるのすごい抵抗しようとしたな。』


「よし、それじゃあ…」


『まて、確認したい事がある。』


 色々詳細を聞こうとすると珍しくリキが話を遮る。そもそもなぜ今彼女達と普通に会話が出来てるかを聞きたかったのに。


『今これ隷属どんな感じなんだ?手順を一つそのまま飛ばしてしまってな。』


『…最上級状態だ。このままではまともに生活も出来ん。』


 ふーん。と聞きつつやっぱりミスってんじゃねえかと思いながら、リキの名誉の為に黙っとく。しかしリキは結局わからない事が多いらしくって、イズに色々教えてもらっていた。


「はー、んでどんな感じなの?」


『ソフィアも私もは今貴様から一キロ以上は離れられない状況だ。それに恐らくどんな命令でも聞く。』

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