第9話

『くッ、殺せ!』


「うお、誰だ!」


 急に聞いた事の無い、男の渋い声が頭に響く。


『相手の神片だ。それじゃあ死ね!』


「待て!」


 またリキが俺の腕を乗っ取ったのだろう。勝手に上がる右腕を左腕で止める。


『何言ってんだ!早く殺すぞ!邪魔するんじゃねえ!』


「嫌だ!なんか、なんとかならないのか!」


[危険な敵対象をこの状況で見逃す事は推奨できません、暫定マスター。]


『やるしかねえ!やるしかねえんだよ!それに、俺の初めての勝利なんだ!殺せ、殺させてくれえ!』


 なおも強くなる右腕の力を何とか引っ張り返すも、説得する言葉が見つからない。しかし、一点気になる事があった。


「お前の勝利じゃねえだろ!」


『はあ?』


「俺達の勝利だ!おい、処遇は多数決だ!」


『はあ!』


「俺は反対だ!なんとか、別の手段をさがそう!」


[私は殺害については合理性の観点から同意しますが、暫定マスターの意見を尊重します。]


『おい、きたねえぞ!』


 そうリキは言い返すも右手の勢いは緩み、その瞬間に俺自身が腕に力を入れる事でコントロールを取り戻した。


『大体、どうしろって…。』


 そう言うリキはなんか急に黙ってしまった。


「とりあえず一度起こすか?」


[いえ、危険です。起こした瞬間に暴れられれば、もう一度無力化できるかは不明です。]


 俺はリキとのやり取りで彼女から意識を外していたが、よく見ると全銃口は彼女に向いた状態だった。ガンプが警戒してくれていた様だった。


『あ、あったぞ!隷属化!』


『貴様!それは、それだけはやめろ!』


「あるんじゃねえか!ふざけんな!」


『いや、これ普通やらねえんだよ、吸収の方が効率も良いし手間もかからん。』


「だが殺さないで済むならそれしかない、よくわからんがやってくれ!」


『はあ、しょうがねえなあ。とはいえ初勝利だ、使い手サマの言う事聞いてやるよったく。』


『やめろおおお!』


 相手の剣はかなり嫌がり叫び声が頭に響くが、とはいえ殺さないで済むならそれしかないだろう。リキは自身の刀身を地面に刺さる細剣の柄部分に当てる。


 すると高音の風切り音と共に光り、それらが徐々に大きくなっていった。


「お、おい!なんだこれ、本当に大丈夫か!」


『いいから黙ってろ、初めてやるんだよこっちは!』


 そう言って続けるリキの刀身を当て続けると、音と光がまだまだ大きくなる。これは本当に大丈夫なのかと思いながら、任せるしかないかとリキを信じた瞬間。


『やべっ。』


「えっ。」


 その一言と共にパキン!という音がして、音も光も止んだ。そして一瞬の間があった後に。


『作業完了です…。』


「おい、本当か?」


 すごい怪しい感じ終わり、剣と女性を見るもうんともすんとも言わない。


[とりあえず、彼女達を回収しましょう。]


「え、ああ。うん…。」


 微妙な空気のまま、とりあえず彼女と剣を持ち帰る事となった。




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