第6話
[援護します。]
ガンプが腕部にある銃を撃つ。命中したように見えるのだが傷つく様子が見えない。現実を受け入れられなかったが、それと同時に左からフェンスを突き破ってマシラが一匹女に飛び掛かった。
[煙幕を張ります。]
理想的なタイミングでガンプは煙幕を張り、なんとか逃げる事が出来た。
「お、おい!なんなんだよこれは!」
『言っただろう、戦が始まっちまったんだ。あの神片は初めて見るが、ただもんじゃねえ!』
騙されたと思いながら唸りつつ、怒鳴ろうとした瞬間にガンプに肩をたたかれて首を横に振られた。俺はとりあえず落ち着き、状況を知ろうと質問する。
「ちなみに別の神片と戦うとどうなるんだ。」
『破壊されたら吸収される。使い手ごと。』
「はあ?」
俺は最悪リキだけ消える物だと勝手に思っていた。まさかの一蓮托生状態だったのだ。
「じゃ、じゃあ逃げよう。」
『駄目だ、神気を覚えられた。追跡される。』
「おい、嘘だろ。な、ならお前最強の刀だっていつも言っていたじゃねえか。勝てるんだろ?」
『…む、無理だ。』
「いや、なんでだよ、戦う前からそんな。」
『無理なんだ、俺は勝った事が無いんだ!いつも最初の一戦で負けて、戦が終わった後に復活しているんだ!』
「はあ?なんで、お前!なんで俺を選んだんだよ!」
『お前は精神力も弱くて、魂も薄汚かった。だから、死んでもいいかと思って選んだんだよ。』
「ふざけ!」
そう叫んだ後に俺は黙った。そもそもリキの言っている事は間違っていない。だが、この一カ月も満たない期間で俺は自覚できるほどにその汚さが取れた気がしていたんだ。
そして刀からは怯えと恐怖が震えと共に伝わってくる。あの傲慢なコイツが気持ちを隠さず正直に伝わるほど、恐ろしいのだろう。あの傲慢は虚勢でもあったのだ。
それを感じた今、社会や組織から負けた俺と、戦いに負け続けたコイツが重なった。この出会いはある意味似た物同士だったからなのかもしれない。
「…ならば、やるぞ。」
『だ、だけど。』
「それ以外ねえだろ!それ以外、ねえんだよ!」
[リキ様、正直申し上げますとあなたが弱いとは思えません。あなたの出力はとんでもなく高いです。本来、あのマシラレベルのモンスターは未来では複数人が囲み銃撃して破壊します。それを一刀の元に切り伏せるのは異常です。]
『あ、ああ。まあ実際俺は最強ではあるんだ、斬り合いじゃあな。力の操作と共に力そのものとして俺は他の神片よりも強い。だが、それだけで、力を変換する術を持っていないんだ。いつも遠目から攻撃を撃たれて、ジリ貧のうちにやられちまうんだ…。』
「それじゃあ、ガンプの銃でいつもの様にやればいけるんじゃないか?」
『駄目だ見ただろう、完全に効いてなかっただろうが。神力がこもってない非力な弾じゃあ何度当てても傷すらつかん。もっと神力を詰めれる金属を使って、威力が高い攻撃じゃないと無意味だ。』
[ふむ、解りました。しかし恐らくあなたと私の力の根源は同質であると、ここ数日の分析から判明しています。ならばやりようがあります。暫定マスター、装着をお願いします。]
「ソウチャク?なんだそりゃ。」
[…まさかと思いますが暫定マスター、マニュアルを確認しておられないのですか?]
「え?あのPDFで十ギガのあれ?しかも全部英語のやつ。見てない、というか見れないんだけど。」
その時、ガンプからピー、という音と共に頭部にあるファンが急速に回り、排気口から熱風が漏れ出た。これは最近こいつが覚えたロボ的ため息だ。
[了解しました、プランを作成します。他、何か金属がたくさん置いてある様な場所はありませんか?]
「え、金属?それならここから少し外れにホームセンターがあるな。」
[ではそちらに向かいましょう。道中説明いたします。ついてきてください。]
「え!おい、そっちじゃないぞ!」
[地図情報から検索し、ホームセンターの位置は特定しましたが、最短距離では近づいている敵対象と遭遇します。回り道としてこちらへ進みましょう。]
『わ、わかった、行くぞ。』
怯えながらも刀で俺の腕を引くリキと共に、俺はガンプについていった。
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