第7話
「ふう着いたな。というかこれで逃げ切れたんじゃないか?」
『いや、無理だ。ゆっくりとだが、また近づいてきている。』
[それでは解錠とセキュリティの突破を行います。原始的なので楽で良いですね。]
そう言ってガンプは自動ドアを開けて中へどんどん進んでいく。俺は追いかけた後、道中で聞いた通りに包丁や銀食器など一そろい掴んでガンプの背部ハッチに入れていく。
「はあ、これ泥棒だよな完全に。」
[これから死体になるよりかは良いかと。]
なんで俺がこんなことを。そう思いながらも、直近の日々が生きる選択をするよう俺を後押ししてくる。
「あ、ゴム板か。」
このとき、何となく対人戦という事を理解して、ゴム弾という存在を思い出した。生き残る為に必死に準備をする今、それでも殺しを避けれないかと思い、手にとってガンプに入れた。
「リキ、ちなみに相手は女だったが珍しいのか?」
『いや、普通使い手は女だ。』
「え?そうなのか?」
『ああ。本来、女の方が神力が通しやすく早く力に順応する。男女の単純な身体能力差は知っているが、結局神片の前じゃそんなものは僅かだ。それに基本、神片の精神性は男だ。だからまあ、好みとして女の方を近くに置いておきたい。』
「お前、じゃあ本当になんで俺なんか選んだんだよ。」
『毎度惚れた女の死に目を間近で見るんだ、だからどうせまた死ぬ今回は死んでもいいようなやつを選んだまでだ。』
「…はあ。」
道中でひとしきり怒ったのでもうその気力も無かった。
『だが、お前との日々も意外と悪く無かった。やれるだけ、やるぞ。』
「…ああ。」
[それでは準備出来ました。また、対象の映像情報を共有します。]
そう言ってガンプは映像を映し出した。それは家の屋根ほどの高さからで、夜なのに妙に明るめに写っていた。近くには砕かれたマシラが転がっており分解が始まっている。
その前を歩く者は一目で美しいと言える金髪の、スレンダーな長身の女性だった。彼女はそのまま流れる様にこちらに剣先を向けると映像は壊れる様に消えた。
[ドローンで写したのはここまでです。]
「そ、そうか。…ん?」
特に先ほどの接敵以上の情報は取得できなかったが、その画面をよく見ると下にタブが伸びており、そのタブを指で触るとスクロールが出来た。するとそこには見知らぬ文字が、そこそこな速度で流れて行っていた。
「これはなんだ?」
[はい、資料として毎度技術研究所に提出しているのですが、どうも技研側が今回一般にも公開した様です。まあ、未来は娯楽が少ないですから。]
その一言でふざけるなと思い、一瞬キレて叫びそうになるがガンプに肩を叩かれて止まる。
[申し訳ありません。しかし、今はここを突破するのが最善かと。]
「…わかった。」
それもガンプの言う通りだ。
[その上渡したマニュアルの収益の要項に記載されていたのですが。]
「…はい。」
ここがガンプの言う通りであるのは理不尽を感じるが、それを言う暇も当然無かった。
[それでは接続を行います。]
「あ、ああ。」
ガンプはそう言って展示用のオフィスチェアに座ると腕や胴体がバカッと開いた。
[ここに座り、接続と調整を行います。敵前の為調整は最低限ですが、初回の今、接続時に強力なエネルギー、神力が発生する為に恐らく居場所はばれてしまうでしょう。]
『速度勝負だな、間に合うのか?』
[後四分以内に行わなければ間に合わない計算です。]
「わ、わかったやるぞ!」
結局迷う暇も無く俺はその椅子に座る。それと同時にバシバシと開いた部分が閉じ、ガンプの中に包まれていく。
「しかし、まさかこんな機能があるとは。」
[いえ、これが私の本来の用途です。とはいえもともと偵察任務でこの時代に来た今、まさかこれを使うとは予想できませんでしたが。]
『なあ、俺はどうすりゃいいんだ?』
[適度にエネルギー、神力を放出してください。こちらで波長を合わせます。]
『こ、こんなもんか?』
[出力が高すぎます。もう少し抑えてください。]
『え、これでか?わ、わかった。』
俺はガシャガシャという機械音と、コイル鳴きのような耳障りな異音の中に包まれる。そして。
[初回接続開始。装着者以外の人間は周囲から離れてください。]
『い、いや、俺ら以外誰もいねえぞ?』
[プリセットの警告です。お気になさらず。]
『あ、ああ。』
そんなやり取りの後に、俺は目を瞑っているにも関わらず光の中に包まれた。
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