第5話

 今回はマシラが三体、割と早期に発生した様で夜十時に、場所は少し離れた場所の商店街付近に発生という予報だ。


「それじゃあガンプ、いつも通りで行こう。」


[了解。]


「とりあえず一度衝撃剣で飛ぼうか。」


『あ、ああ。』


 リキの様子に違和感を感じながらも俺は刀身を地面に叩きつける。するとスーパーボールのような反発で人の身が宙に跳ぶ。これは斬撃の衝撃を広範囲に分散、かつ神片の力で強化した威力で2、30メートルは跳べる。


 このほかにも斬撃特化や切る威力を一点に集めた斬突もできる。とはいえ衝撃剣は範囲も広い上に敵の攻撃が弾き易いので最近はこれが基本になっている。


「どこら辺か判るか?」


『恐らく、あそこらへんだ。』


 夜空の中で服をはためかせながらリキは方向を示す。場所は栄えている屋根付きの商店街だ。着地にもう一度衝撃剣を使って着地し、腕輪からガンプに位置を伝える。


「さて、どこから来るか。ガンプ、レーダー頼む。」


[了解。]


 現地で合流したガンプに頼むと反応一体。そしてその報告の後すぐに、少し奥の十字路右側からマシラが来た。


『こちらには気づいてないぜ。』


「ああ、な、なあ。なんか急に寒くないか?」


[気温測定、そうですね、確かに先ほどの位置からここまでで10℃落ちてます。]


 この時は何だろうと思いつつ、冬が近いからかと自身を勝手に納得させていた。


「それじゃあ俺らが切りかかる。気づかれたり外したら、陽動頼むよガンプ。」


[了解。]


 ちょっとした事前確認の後、ゆっくりと走り出して飛びかかろうとしたその瞬間、マシラの左側面が一瞬で凍り、人影がそれを砕いた。


「な、なんだ!」


『あ、うわ。』


 明らかに動揺するリキを不思議に思いながらその影をよく見ると、金髪の美しい女性が涼し気な顔で十字路の逆側から歩いてきた。そして光に消えるマシラから目を離し、こちらに気づくと目があった。


「おお、あれが別の使い手か!初めて見た!」


 俺はリキの言う神片の戦いの詳細を知らなかった。なぜならそれを聞くとリキはいつも口を濁し、とりあえず化物を殺して食わせろと言うばかりだったからだ。


 なので俺は神片が皆で化け物を倒していくような物だと思っていた。俺は手を振り彼女に近づく。彼女は手に持つ細剣を構え、知らぬ言語で小さく何かをつぶやいた。


『馬鹿!逃げろ!』


「は?」


 急に右手の感覚が無くなったと思ったら、勝手に右手が剣を振り、前方から迫る氷を弾いた。


「な、なんだ!急に攻撃してきたぞ!」


『戦いが始まっちまった!神片同士の殺し合いが!』


「はあ?」


 その言葉で初めて、そして何となくであるがこの戦いの意味を知った。蟲毒の類だったのだ。

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