第3話

「あ、あれ?」


『ある程度はこちらで防御してやる!情けねえ、早く構え直せ!』


 怒りを再燃させるが、筋肉なのか、恐怖なのか、腕が震えているのを感じる。しかしそれでも改めて向き直ると。


「撃て!」


[了解。]


 大猿が左方向に吹き飛んだ。


「ギャアアア!」


「効果あり!大丈夫か!」


 その声は学校のプールから聞こえ、そちらを見ると月光から二人の影が飛び降りてきた。一人は青年であり、もう一人は一回り小さい、鎧の様な形の恐らくロボットだ。


「え、誰?」


『何者だ?』


 え、この刀の関係者じゃないのか?


「詳しくは話せないが、援護する!」


[いや、マスター、無理です。時間協定違反となり、強制転送が開始されました。]


「んな!あの馬鹿共が!仕方ない、君にこれを渡す!」


「は、はあ。」


 そう言って渡された物はなんかとげとげしている、腕輪?だった。


[マスター、それは。]


「後で俺が始末書書くさ!それより死人が出る方がまずい!ガンプレート、頼んだぞ!」


[…了解。]


「まずい、ここじゃ転送に巻き込んでしまう!俺は離れる!頑張って、生き残ってくれ!」


 そう言って青年は走り、プールの影に走っていくと空に上がる閃光が一瞬伸びた。


[それでは、暫定マスター。指示を。]


「え!まじで何!」


『お、おい、なんだこの人形は!』


 おい、しゃべる刀がびっくりしてんじゃねえよ!そう突っ込もうと思ったが、先に大猿から、殺意の混ざった爪が振り下ろされていた。


「ギョアアアア!」


「うおわあ!」


『ぬわ!』


[回避成功。]


 それぞれが驚く中、横に居たロボットだけが余裕のまま避けた。


[指示を。]


 そして変わらずの合成音声が聞こえる。ロボットとは距離が離れていたのだが妙に聞き取れたのは、この腕輪から声が出ていたからだ。


「あー!わからんけどあいつを撃て!」


[了解。]


 そういってロボットは大猿を撃ち、命中。怯ませた。


「おおすげえ!」


『なんだありゃあ、威力が低すぎるぞ。』


「え?」


 だが本当に怯んだだけで大猿は直ぐに立ち直り、ロボットの方に飛び掛かる!


『あー!もういいからあの背中ぶった切れ!』


「え、ええ?ああ、わかった!」


 そう叫んで俺は飛び掛かり、そのがら空きの背中を思い切りぶった切った。叫びと共に猿は光に消え、その光は刀の柄に伸びていった。


 光が消えた後に俺は辺りを見回すと、ロボットと刀は全く消えない上で地面やプール壁面にはヒビが入った状態だったので、急ぎ家に逃げ帰った。

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