久しぶりのそれ



「おおおおお!!綺麗になったなァ」



ゼンが目を輝かせて門に触った。

確かに綺麗になったな。俺たちの存在を消すために、改装工事でもしたのだろうか。

落書きだらけでボロボロだった門は、白く高級そうな立派な物に変わっていた。



「1年ぶりだな。」



ゼンは目を細めて、すっと学校名の下を懐かしそうになぞった。アイツが書いた落書きのあった場所だ。

学校名をぐちゃぐちゃにスプレーで消して、オレンジで大きく書いた夢だ。



「校舎も、綺麗になってンだな」



起き上がって、上を見上げているゼンの視線の先を辿ると窓ひとつ割れてない校舎。

登校時間をずらしたためか、校舎の廊下には人気はなかった。



「なァ、教室どこか知ってんの?」



ゼンが俺知らねえよ?と続ける。



「ああ、A組らしい」



お節介なやつが教えてくれた。俺達2人はA組だと。

その時は、行く気もなかったので半分に聞き流してたけど、今になって聞いていてよかったと心からそいつに感謝する。


ゼンは少し考える素振りを見せたあと、ああフウかと笑った。



「あいつァ、お節介の塊だなァ。」



「そうやな」



「テメェ譲りの性格だ、」



ゼンが頭を叩いてくる。地味に痛いんよなあ、コイツ力強いから。

そんな軽口を叩きながら、校舎へと足を踏み入れる。

もう何人かは俺たちの存在に気づいたかもしれないな。窓から丸見えやろうしな。

踏み入れたその先は、ガランとしていた。


授業をしている教師の声以外、一切聞こえない。



「静かやなあ」



この学校がこんなに静かなだなんて、先輩も奴等も想像付かへんやろうなあ。

荒れていたわけちゃうけど、良くも悪くも賑やかな学校やったし。



ゼンと2人、暫くお互い何も会話を交わさずに歩くと、2年A組のプレートが見えてきた。

A組が端っこで良かったと、心底思う。

C組とかだと教室の前を通ることになる。教室につく頃にはもう大騒ぎだ。



「ゼン、」



「わーってるよ、問題は起こさねェ。」



俺たちは其のトビラを開いた。




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