第39話 ヒャッハー

「ヒャッハー!」


 ここはレベロン川。

 ここにボートを数台持ち込んだ。

 何をするのかと言えば、

 対戦型シューティングゲーム。

 

 的はフライングピラニア。

 こいつら、どんどんと川から飛び出してくる。

 それをボートから狙い撃ちするのだ。

 高速でぶっ飛ばしながら。

 フラピラを何匹撃ち落とせるのか、

 そうやってゴールを目指す競技。


 撃墜数は、ボートがカウントしてくれる。

 ボートはね、例によって魔物化した。

 船先に目と口がある。

 

 エネルギー源は魔素。

 魔素を自動的にとりこむ。

 これは他の機械と同じ。



『ゴシュジンサマ、ゲキツイスウハ◯ヒキです(御主人様、撃墜数は◯匹です)』


 魔物とは言うものの、ボートは実に礼儀正しい。

 しっかり僕達の言うことを聞く。

 頭のいいワンちゃんみたいだ。

 愛着も湧いてくる。


「セロス、次いくよ!」


 セロスっていうのは、ボートにつけた名前。

 他の2台はスキロス、ソーロス。 

 あ、他の魔物となった機械、耕運機とか、

 全部に名前をつけている。



『ふー、これは本当に面白いの』


 パレオ水着姿の女神様が顔を上気させている。

 その御姿、僕には刺激が強すぎる。


『だね。こんな競技はアメリカにもないよ』


 なぜか、アメリカの神トラロック様も参戦している。

 地球での活動は制約が多く、肩が凝るらしい。

 こちらの水着は……どうでもいいか。

 

『一応さ、僕も姿を変えて自動車レースとかやってるんだけどね。あんまり目立つことできないから、フラストレーションがたまるんだよ』


 トラロック様、どうやらレースだけじゃない。

 高速道路をオートバイで時速300km逆走とか、

 追跡するヘリコプターをブッチしたとか、

 乗り物系には目がないようだ。



 ここでのボートレース。

 まず、速度が半端ない。

 水上にも関わらず、時速200kmを軽く超える。

 ひょっとしたら300kmを超えるかもしれない。


 殆ど空を舞っている状態だ。

 羽があれば、余裕で空を飛ぶ。

 水上機の離水速度は100kmぐらいらしい。


 というか、むしろ空を飛んだほうが安全だ。

 着水したときの衝撃がとんでもない。

 

 でも、ボート亜魔物も


「ヒャッハー!」


 って叫びなからノリノリで運行している。

 

 飛び出してくるフラピラもボートについていけない。

 簡単に通り過ぎてしまうから、

 操縦者兼射撃手は、そのタイミングを測りながら、

 フラピラをショットしていく。


 出発は河川港である。

 出発したら猛スピードで川を上流へ駆け上がる。

 約100km先にゴールがある。

 

 だから、この競技はスピードレースでもある。



『あ、やりやがったのじゃ、妾も反撃するのじゃ!』


 もう一つある。

 ボート同士が邪魔し合ってもいいことになっている。

 というか、積極的に潰しにかかってくる。


 時速200km超、下手すると300kmの世界で、ボートがフラピラを撃ち落としつつ、ボートに体当たりをかまし、100km上流のゴールを目指す。



『どうじゃ!今回は妾の勝ちじゃぞ!』


 女神様はこれで18勝目だ。


『うーん、今回は一度ボートがひっくり返ったのが敗因かな』


 川の途中で急流ポイントがあり、

 そこはむき出しの岩石とか浅瀬とか

 川最大の難所コースになっている。

 トラロック様はそこで船をひっくり返したのだ。

 すぐに体勢を整えたのだけど、

 そのコンマ何秒の遅れが後々まで響いた。


 彼は悔しそうだ。

 でも、すでに30勝している。


 僕は?

 ああ、聞かないで。

 まだ勝ち星なし。

 でもね、いい線いってるんだ。

 勝利は間近だ。


 さーて、ダウンコースだ。

 下り最速を目指してレッツゴー!


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