第37話 女神様の拠点2

 土地選定から建物完成まで、約半年かかった。

 比較的早く完成したと思う。


 それは女神様が急がせたせいもあるのだけど、

 僕が密かに供給したお菓子や飲料。

 これがみんなのやる気を出させた。

 工事担当者も含めてね。

 

 僕は担当者さんにお願いして、

 現場に毎日差し入れに行ってもらっている。

 毎日の現場視察も建設費に含まれているし、

 そのついでだ。

 担当者も僕のお菓子や飲料を心待ちにしてるし。


 異世界ほどではないけど、

 いったん異世界送りをした飲食物は

 日本に送り返しても効果が持続する。

 10分の1ぐらいになっちゃうけど。


 ああ、ちなみに全額僕が払った。

 \(^o^)/

 まあ、いいんだけど。

 ルシールといっしょに

 寂しく金鉱を掘るだけ(泣)。


 ただね、日本で金を売りすぎている気がする。

 気のせいかもしれないけど、

 税務署とかが調査に来たらやだな。

 まあ、隠すことはないし、

 税務署に相談に行ってるからね。


 でも、そろそろ外国で簡単に金を売れる場所を

 探してみるのもいいかもしれない。


 ◇


『では、転移させるかの』

 

 女神様は気負うこともなく、

 そう宣言すると、僕の眼の前から消えた。

 建物ごと。

 ごっそりと、地盤も含めて。

 僕も転移する。


 あ、僕は次元転移だけじゃなくて、

 いわゆる転移魔法を女神様から教えてもらった。

 

 行ったことのある場所ならば、転移できるやつ。

 次元転移だと、何故か森の中になるんだけど、

 そこからは、一気に川向うへ転移。



『おお、待っておったのじゃ。どうじゃ、ぴったりであろう』


 見事なもんだ。

 それなりに精密調査して地形を整えたりして

 転移場所の準備をしたんだけど、

 隙間もなく転移している。

 建物に球体をおいても転がらない。

 見事に水平だ。


 リビングの大きな窓からは池や森が見渡せる。

 この池がまた美しい。

 透明度が非常に高い青色。

 汚染される要因がないからね。

 5mぐらいの水の底でも

 手が届くような深さに見える。


『あとは天界から眷属を何人か連れてくるかの』


 さすがにこれだけ広い建物。

 女神様一人では手に余る。

 というか、女神様には建物維持の心得がない。

 魔法でどうにかできると思っている。

 そもそも、一人じゃ寂しいし。


『何をゆうておる。お主も頻繁に来るのじゃ』


 うわ。

 なんだか、毎日顔を出せ、って感じ。

 まあ、転移魔法で一瞬だから手間はかからない。


『あとは便利家電魔導具とゲーム一式じゃの。ああ、今はいらんが、こたつの大きいやつも欲しいの』


 うーん、女神様。

 引きこもり女神様一直線のような気が。


 家電魔導具は僕が開発したものがメインだけど、

 ゲーム機はそういうわけにはいかない。

 レベルが高すぎて。


 で、日本から持ち込んだんだけど、

 これが機械系亜モンスター化した。

 動力源があるとそうなるみたい。


 まあ、人畜無害だからいいんだけど、

 手足がついて歩き回るし、

 目とか口もあるんだよね。

 


【魔牛】


『マスター、いい場所見つけたんですが』


 女神様別邸でのバタバタが一段落したころ、

 ルシールが僕に報告してきた。


『魔牛の大群、見つけました』


 おお、確かにそれはいい情報じゃないか。 

 どこ?


『女神別邸をさらに奥に行くと、大平原というか、大草原がありまして。そこに魔牛の大群が住んでいます』


 そんなことなら。

 僕はルシールをつれて大草原を見に行ってみる。


『ああ、遠いので私の背中に乗ってください』


 すると、ルシールは『ボワン』と音を立て、

 白馬・ペガサスの姿になった。

 これが本来のルシールの聖獣としての姿である。


 え、お尻痛くない?

 背中は背骨でごつごつしてるぞ。


『大丈夫ですよ。魔法で姿勢を制御しますから』


 ◇


 その言葉通り、乗り心地は楽ちんだった。

 それに、結界で風も吹き込んでこない。

 僕はウトウトしていると、


『マスター、つきましたよ』


 あれ、もうついたの?


『何言ってるんですか。2時間以上飛んでましたよ』


 そんなに僕寝てたのか。


『ええ、山を2つ越えました』


 ああ、目前には大草原が横たわる。

 ああ、これは確かにとんでもなく広そうだ。

 地平線の彼方まで草原っぽい。


『現状ではどの位の広さかわかりません。前に飛んでみたときは、白馬の形でダッシュして1時間以上飛ばしても草原の端っこにつきませんでした』


 ほう。

 白馬のルシールがどの位の速さで飛べるのか。


『測ったことはないですけど、そうですね、日本の新幹線よりは楽勝で速いと思いますよ』


 むちゃくちゃ速いじゃないか。

 仮にルシールの飛行速度が時速500kmとする。

 そうなると草原の広さは最低500km以上、

 多分1千km以上はあるんじゃないのか。


『アメリカのプレーリーみたいな感じ?』


 プレーリーは、北アメリカ大陸の中部に広がる

 大草原。東西約千km、南北約2千km。


『ちょっとわからないですけど、半端ないですね』


 それと、ちょっと暑い?


『随分と南に来ましたから、そのせいでしょうか』


 うーむ。

 村の位置はおそらく北半球。

 緯度はわからないけど、日本と同程度だろう。

 ただ、かなり乾燥した地域だけど。


 そこから千km以上南下した場所。

 沖縄とか台湾とかの緯度の場所で

 雨の少ない場所。

 行ったことないけどイメージでテキサスとか。

 少し内陸部。



 さて、この異世界プレーリー。

 見渡す必要はない。

 そこら中に獣がいる。

 千とか万とかの単位じゃない。

 数百万?

 

『あれが魔牛ですね』


 ルシールは魔牛などと僕にわかりやすく

 言ってくれるが、

 野牛のほうがわかりやすいだろうか。

 長毛の水牛だ。

 アメリカバイソンに似ていると言えなくもない。

 ごっつい大型牛。


 頭部には1m誓い2本の湾曲した角。

 体長は最大で5m、平均は4m程度。

 肩の高さは最大で3m、平均は2m程度。

 体重は推定2~3トン?


 サイとかカバ、あるいは象並の大きさだ。


『マスター、大きいだけじゃないんですよ。突進力が凄いですね』


 たいていの魔牛はのんびりしているのだが、


『ガチン!』


 あ、あちらで喧嘩している。

 重戦車のガチの取っ組み合い。

 離れたところから向かい合い、

 全速力でぶつかり合ってるぞ。

 まるで、騎士の決闘だ。


 離れてみているけど、ぶつかったときの衝撃が

 こちらまで伝わってくる。

 小型ダンプが正面衝突している衝撃、

 という感じになるのだろうか。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る