第36話 女神様の拠点1
日本で女神ズがやらかした。
クリスティーナ様以外の。
食べ過ぎでぶくぶく太ったのだ。
勿論、天界のブートキャンプ行きだ。
ドナドナされる女神様たちは暴れていたらしい。
『妾はちゃんと警告しておったのじゃが』
ああ、確かに。
『でもの、さすがの天照も怒っての。まあ、これは妾たちが悪いのじゃ。他人(神様)の管理するところで好き放題暴れればいい気はしないからの』
ああ、怒っちゃたんですか。
『うむ。での、妾たちは日本出禁を食らったのじゃ。まあ、自重しようとは思っておったがの』
自重?(そういう言葉を知っているんだ)
『何を考えておる?妾は無意識の領域までお主の考えをキャッチできるのだぞ?』
ああ、ごめんなさい。
だって、女神様、非常に活発でしょ?
『ふむ。での、その活発さを妾の世界で発揮することにしたのじゃ』
は?
『妾の一番の不満はの、妾の世界では美味しい甘味や食事がないことなのじゃ』
ああ。
女神様が日本にこだわる最大の理由ですよね。
『じゃがの、お主がなかなかやりおる。今まで何人も転生者を送り込んできたのじゃが、こんなに早く結果を出したものはいないのじゃ』
はあ。
ちなみに、過去の転生者たちは?
『死んで転生してきたものは、現地化したの。お主のような場合は、希望があれば日本に戻ってもらったのじゃ。まあ、昔の話じゃ。もう、誰も生きておらん』
なるほど。
『での、別荘でも建てようかと思うての』
別荘ですか。
『うむ。豪華仕様のやつじゃ』
別に女神様の管理する世界ですから、
僕がどうこう、いうことではありませんが。
『じゃからの、手を貸せ』
ああ、まあそうなりますよねー。
『場所はあの村の近くで、でも人がめったに現れない場所がいいぞ』
そんな場所に心当たりがあるわけ……いや、
ないわけではないですね。
『ほう、どこじゃ?』
村の近くに、とは言うものの村人が早歩きで2時間以上はかかるんですが、川が流れています。
レベロン川って言います。
川幅数百mぐらいあります。
渡ろうとすると大量の魔魚が襲ってきます。
この川に至るまで、厳しい荒野が続きますから、
実質的にこの川が人の住む限界線です。
『ふむ。その川の向こうは人類未到の秘境というわけか。いいではないか』
まあ、渡航した気まぐれがいたかもです。
僕ですね、あの川に港を作るつもりなんですよ。
川遊びするために。
『ほう、川遊びとな』
だから、そのついでに川向うの調査してみますね。
◇
川港はすぐにできた。
港というよりは、湊とでも言うのかな?
河川港。
まあ、船1艘を停泊させるだけだからね。
港というのもおこがましいんだけど。
ちょろっとした桟橋。
とは言うものの、例のフライングピラニア、
フラピアがいるからさ。
それなりの結界魔法とかで港を囲んでいる。
問題は、川向うの土地。
ほとんど真っ平らでずっと奥まで見通せる。
低木が稀に生えてるだけで、
あとはほとんどまばらな草原。
それと、川近くは洪水とか怖いし、
実際、よく氾濫するらしい。
そのせいなのか、土壌が黒っぽい。
ずっと奥へ行くと高台っぽい場所がある。
そこまで行ってみるか。
その高台は川からどうだろう、
10km程度の地点から盛り上がっている。
そして、さらに奥に行くと森やら山やらがある。
僕的に候補を何箇所か見繕って
女神様に提案してみるか。
◇
『おお、妾はここが気に入ったのじゃ』
ここは候補地の一つ。
山の中腹にあり、周囲は森林って感じなんだけど、
大きな池または湖があり、視界も開けている。
勿論、景色もいい。
『ここに決めたのじゃ』
そっからが大変だった。
女神様が住まうような館の建設のノウハウ。
僕達が持っているわけがない。
秘匿性を優先しているから、
異世界の建築家に頼むのもちょっと。
記憶喪失スキルはあるんだけどね、
建築って関わる人数が多いから。
『日本の建築家に頼めばいいではないか』
またもや、無理難題を。
『日本の建築家は地球的には有名なんじゃろ?日本で建物をたてて、それをこちらに移転させればいいのじゃ』
ああ。
できるのかな?
試しに山奥の寂れた古民家を買取った。
寂れた古民家なんて二束三文だからね。
で、一気に古民家を転移。
女神様が。
流石に、女神様のマジックバッグは容量が大きい。
土台を含め、なんの問題もなく転移できた。
まあ、騒動になるからもとの日本に戻したけど。
『問題ないじゃろ?日本でそれなりの場所で建設してじゃ、転移させればよかろう』
でも、人の目がありますよ?
天照様もどういうか。
『まあ、関係者の記憶はなくしてもらおうかの。山奥にたてるのじゃから、人の目もあまりないじゃろ』
天照様は?
『妾が話をつけるのじゃ。これからはあまり天照の面倒をかけんことになるから、喜んで賛成してくれるじゃろ』
そうなのか?
◇
天照様の許可はとれたようだ。
詳細はわからない。
で、土地の購入から設計から
日本でも結構大変な日々が待ってるんだけど、
土地はまあいい。
それこそ限界集落のさらに山奥の物件を見つけ、
建物は速攻で撤去。
周囲の土地を異世界の転移場所に似せて改変する。
ああ、魔法でね。
魔法は使っちゃ駄目っていう体裁があるんだけど。
なんだか、なし崩し的になってる。
そこに建物を建設するわけだけど、
もうね、女神様、設計段階でもノリノリのわけで。
打ち合わせについてくるんだよ。
女神様、出禁だったはずじゃ?
まあ、そのほうが話が早いからいいんだけど。
女神様もネットやら書籍やらで、
こうしたいああしたいって妄想にひたってるし。
でもね、担当者的に大変。
だって、ハリウッド真っ青、世界的な美人コンテストで軽く優勝しそうな女神様がお客様なんだ。
確かに女神様にはオーラを抑えてもらっている。
でも、これだけ至近距離だと抑えきれない。
担当者は全員目がハートマークになるし。
男も女も関係なく。
なぜだか、関係ない人までついてくるし。
設計会社訪問したら、結構大きい会社だったんだけど、もう会社総出で歓迎されたし。
社長さんまで出てくるんだよ。
満面デレデレの顔で。
『関わったものにはの、紐づけをしておる。終わったら記憶をなくすようにしておる。カメラ対策もばっちりじゃ。いろいろな記録も建設完了とともに消去されるのじゃ』
あああ、可哀想に。
女神邸は彼らの中でも最高の作品かもしれない。
その記憶をなくされる。
建物の建設費軽く1億円は超えるしね。
建築雑誌にのりそうなビジュアルの建物を
半ば設計士さんの思い通りに表現できるんだ。
確かに、女神様もあれこれリクエストはする。
でもね、相手はさすが日本を代表するような
設計士集団。
その彼らが全力をもって向かってくる。
プレゼンが半端ない。
女神様も感嘆符をいくつもならべてる状態だ。
予算はふんだん。
大まかな方向性は女神様の意向でも、
細部は設計士のやりたい放題。
これで燃えない設計士はいないでしょ。
しかも、クライアントが女神様。
女神様も建築途中であれこれ言わないし。
これ、多くのお施主さんがやるんだよ。
そのたびに大騒動だ。
まあ、設計段階で建物の細部に至るまで
関係者と具体的イメージを共有したからね。
勿論、女神様の力で。
それこそ、CGを越えるリアルさで。
あとはそのイメージ通りに建てるだけ。
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