第31話 女神ズ、怒られて正座。

『あなた達!正座するのですわ!』


『天照の、正座は勘弁するのじゃ』


『そうよぉ、わたくし、長年の無理がたたって膝が……』


『何を言っておるのですわ!ミネルヴァ様など、どんな怪我・病気でもなおすことができると普段豪語なさってるではありませんか!』



 隠れてこそこそと日本を満喫していた女神様ズ。

 日本の神、天照様に見つかる。


 天照様は、大昔の日本の装束に身を包む、

 清麗なる雰囲気を漂わせた女神様だ。


 本来、神が下界に降りるのには厳格な約束があり、

 基本的に禁止されている。


 隔絶した力を持つ神様が簡単に下界にいたら

 下界の統治が捻じ曲げられてしまいかねない。

 まして、それが他の世界の神であれば、

 管理者の神様にとってはたまったもんじゃない。


『(天照大神、昔は裸踊り大好きなはっちゃけ女神だったのじゃが、いつのまにか真面目女神になりおった)』


『何か、言いましたか?』


『い、いや、気の所為なのじゃ』


『もう、本当に。世界の管理が大変なのは、皆様もよくご存知でなくて?それが甘味食べ放題、カフェ、レストラン入り放題、服・アクセサリー買い放題』


『おろ?ひょっとして、天照の、羨ましがっておるのか?』


『わ、わ、わ、わたくしが羨ましがるなぞ、あ、あ、あ、ありえませんですの!』


『(さすが、クリスティーナ様は伊達に長い時間を過ごしておりませんな。女神様を見極める目をお持ちで)』


 ルシールが一言。


『(本来ははっちゃけ女神なのじゃ。なぜか気難しくなっておるがの。いろいろ味わいたくて仕方がないのじゃ)』


『何をこそこそ話しておるのですか!』


『ふむふむ、天照の。妾が知らんと思っておったら、大間違いじゃぞ?』


『な、何をですか!?』


『お主は本当は隠れてスィーツ食べておるのじゃろ?』


『は?な、何をこ、滑稽なことを』


『妾は知っておるぞ。お主が甘味を食べすぎて、下半身を気にしていることを』


『な、な、な、なんでそれを!』


『ふふふ。ネタを掴んでおるのじゃ。お主、天界の約束は知っておろうな。女神の女神たる理由』


『は』


『妾は今回少しばかり体型のバランスを崩しての。天界で眷属どもから寄って集って集団リンチを受けたのじゃが、妾がダイエットのしすぎで床に倒れておるときにじゃ、眷属どもが噂をしておっての』


『な、なにをですの?』


『次はお主じゃ、と』


『は、あ、ありえませんですわ!』


『ほう。じゃあ、天界の審議会で身体測定してみるかの?』


『あわわわ、ぜ、ぜーったい、しませんですわ!』


『自分に自信があるのなら、問題ないじゃろ?それか、審議会に審査を申し立ててみようかの?』


『クリスティーナ、貴方は天界の住人なのに、そのような悪魔の所業を!』


『そうだよ、天照』


『お?お主は?アメリカの神トラロックか。久しぶりじゃの』


『前回50年前の総次元神様ズ大遊宴以来だね』


『で、どういうことじゃ?突然』


『僕の担当するアメリカ、北アメリカなんだけど、食事が大味でね。で、数十年ぶりに日本に降り立ってみたんだ。気配を完璧に消して。食べ物の評判がいいみたいでね。そしたら、その評判は本当だったんだ』


『ほう』


『よく噂に出てくるコンビニの卵サンドイッチとコーラを買ってみた。で、品がないけどそのへんで軽く食べてみたんだ』


『ふむふむ』


『稲妻が走ったんだよ。いや、僕が稲妻の神ってことは関係なく。美味しすぎて、僕はそのままコンビニにダッシュで戻り、棚に残っている卵サンドを全部買い込んだってわけさ』


『ほう。日本のコンビニの卵サンドはそんなに美味いのかの』


『卵サンドだけじゃないけどね。でさ、僕は見たんだよ。天照を』


『下界で?』


『そう。コンビニに入っていくところを』


『そりゃ偶然じゃの』


『まあ、天照のようなビッグネームが下界でフラフラしていれば、僕のアンテナにキャッチされるからね』


『ああ、そういえばお主の気配察知スキルはとんでもなかったの。水のあるところでは地球規模で捜索範囲を広げられるって聞いたのじゃ』


『いや、流石にそこまでじゃないけど、まあ、それに近いかな。で、天照をこっそり観察していたら』


『観察していたら?』


『買うわ、買うわ。各種サンドイッチ。各種チョコレート。各種米菓。ファ◯チキ。各種ドリンク。量が多すぎて、会計のときに後ろに渋滞ができていたんだよ』


『う、嘘ですわ!』


『ははは。僕、スマホで動画をとったんだけど。見てみる?』


『いりませんですわー!』


『ふむふむ、天照。どうするのじゃ?いや、コンビニ行くなとは言わん。じゃが、お主だけずるくはないか?』


『……』


『日本の食のレベルの高さは天界でも鳴り響いておる。ここは混乱を生む前に少し約束事をゆるくしたほうがいいのではないか?』


『……』


『妾は反省したからの。目立つような動きはせんようにしとる。どうじゃ、その辺りで手をうっては。妾もお主の下半身のことなぞ、ちくったりせんぞ?』


『うー、ですわ。わかりましたですわ。決して大仰なことをしないように。その限りにおいてわたくしも目くじらをたてませんのですわ』


『おお、了解したのじゃ』


『くれぐれも、くれぐれも、騒動になるようなことはやめてくださいね?女神らしく、お優雅に。お願いしますね?』


『わかったのじゃ。お主らも大丈夫じゃな?』


「「「わかってるわよぉ。全然問題ないのよぉ」」」


 うーむ、大丈夫じゃないような……


『じゃあさ、僕も美味しいところ連れて行ってよ。君たちが動き回っているのは僕のアンテナでもキャッチされててね。ロイ◯ルホストだっけ?一緒に行こうよ』


『そうじゃ。天照もどうじゃ?』


『私は用がありますので!』


『ああ、知っとるぞ。お主がロイ◯ルホストの商品券を持っておるのを』


『あああ、なんでそのことを!いえ、頂き物なのですわ!いえ、何か邪な意図の全然ないものなのですわ!』


 うわー。

 天照大神様。

 汗だくじゃん。


『とにかく!楽しんでくださいまし!ですが!決して騒動を起こさないでくださいませね?頼みますよ?』


 そこまで言って、天照大神様はボワンといなくなった。


 で、アメリカの神を交えて5柱。

 プラス僕。

 物凄く場違いなんだけど。

 それと、誰が支払いするんだろう。

 僕なんだろうなあ。

 いや、いいんだけどさ。



 で、これはアメリカの神からの情報。

 建前では地球では魔法は駄目。

 でも、天照様も彼も魔法は使い放題らしい。


 節度をもって使うのであれば、

 魔法の使用は問題ないとのお墨付きをもらった。


 ああ、節度を保てないのがいる。

 約4名。

 特に、女神様ズの3名。

 だから、天照様が激怒してるわけだけど。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る