女神様ズ騒動

第30話 女神の団体様

「おや、女神様。ご無沙汰致しておりました」


 異世界から自宅に戻ってみると、

 そこには当たり前のようにモニターの前に陣取る

 女神様がいた。


「おお、久しぶりじゃの」


 一ヶ月ぶりである。


「えと、久しぶりなんですが、な、何やら随分と人が多いような」

 

 僕の居間には大きなモニターがある。

 通常は、こたつテーブル上のモニターでゲームをするのだけど、

 50インチモニターにもゲーム等を接続している。


 その大型モニターを前に、

 女神様と同じくらいゴージャスな超美人が

 集合していた。

 圧倒される。


「この者らはの、天界の女神どもじゃ」


 は?


「「「こんにちはぁ、相崎クン」」」

 

 うおお、心臓が止まりかけた。

 ミスユニバースとかに出ても軽く優勝しそうな

 女性がずらりとソファに座って眩しく輝いている。


 いや、顔は直視できないけどさ。

 目がつぶれそうで。

 奥手で女性を苦手とする僕がそんな彼女たちから

 挨拶される。

 よくショック死しなかった、と僕を褒めたい。


「「「は、は、はじめまし、イテッ」」」


 最後は舌を噛んでしまった。


『何ろうろたえておる。いつもどおりにやればいいのじゃ』


 いや、そう言われても。

 この日常あふれる日本の平均的な居間が

 異次元空間になっている。


『ああ、そう言えば、妾と最初に邂逅したときにの、お主に鎮静魔法をかけたの。それと、妾を何か誤解をしているようであったから、ちゃんと理解できるように誘導したの』


 思い出した。

 最初に女神様とあったときに

 急に女神様への緊張が溶けたし、

 女神様を受け入れるような気持ちになったんだ。


「「「ああ、そうなの?じゃあ、わたくし達もー」」」


 あ、急に気分が落ち着いてきた。

 直視できなかった女神様の顔も判別できた。

 これ以上どうするってぐらいの美人ではあるが。


 女神様はクリスティーナ様以外に3人。

 いや、3柱と言うべきか?

 

 紹介してもらうと、

 ミネルバ様、シアリーズ様、プロセルピナ様

 とのこと。

 何やら、由緒正しい名前のようだけど。


 その女神様たちがなぜ僕の部屋に?


『ルシールの奴めが妾を拉致して天界でひどい目にあわせたじゃろ?』


『女神様、お戯れを……』


『妾の眷属どもがの、寄って集って妾をいじめおって。今までダイエットに励んでおったのじゃ』


 拉致したのは正しい表現ではあるが

 そうしないと、女神様を天界でダイエットさせられない。

 女神様をダイエットさせるのは眷属の義務なのだ。


『女神様。夜中にこっそりお菓子を食べなければ、もっと早くすんだのですよ?』


『うむ。それは反省しておる。での、そのときにお菓子を取り上げられての。この者どもに気取られたのじゃ』


『そりゃ、独り占めするのは駄目よねぇ。私たちだって日本のお菓子とか欲しいに決まってるのにぃ』


『での、他のものに内緒にする条件でこの3女神を日本に連れてくることになったのじゃ』


『うふふ。内緒よぉ?相崎クゥン(ハート)』


 いや、(ハート)付けられても。

 それに誰に内緒?


『無論、他の女神、特に日本の女神、天照大神にじゃ。度々日本に来ておることがバレると、あやつは怖いからの』


『そうなのよぉ。わたくし達はこっそり来てるって感じ?彼女は女神の中でも力は一番つよいからぁ』


 何かすごーく嫌な予感がするのですが……

 すると、モールに行ったり?


『なにが嫌な予感がする、じゃ。行くのは当たり前じゃろ。もうお菓子がきれてしもうたからの。それから、ルシールが最近はまっておるというロ◯ヤルホストの苺デザート、妾たちも所望するのじゃ』


『ああ、女神様、早く行かないと販売終了してしまいますよ』


『おお、それは一大事なのじゃ。急ぐのじゃ』


 いや、女神様。

 あまりにも服装が……

 彼女たちの衣装は無駄にキラキラヒラヒラしている。


『大丈夫なのじゃ。認識阻害の魔法をかけての、モールで服を買えばいいのじゃ』


 すっごく、嫌な予感が……


『本当なら、もっと人目はばからずオープンに行きたいんだけどぉ』


『そうなのじゃ。普段妾たちは注目されることがないからの、称賛されるのは非常に気持ちがいいのじゃ』


 案外、女神様たちは庶民的なんですね。

 でも、この団体様が服屋めぐりをする……


『何をうろたえておる。レッツゴーなのじゃ』


 はあ。じゃあタクシーを呼んで……


『もう、忘れたのか?妾は一度いった場所ならば転移魔法が使えることを』


 ああ、そうか。

 2度めの女神様来襲のときは転移魔法で

 ひとっ飛びだったんだ。

 でも、確か地球では魔法は駄目だったんじゃ……


『大丈夫じゃ。認識阻害魔法をかけておるしの。それに、魔法が使えんと言うのはある程度までは建前じゃ』


 建前なんですか。


『そうじゃ。目立つようなことがなければ、ばれんのじゃ』


 なんだか、凄く嫌な予感がするのですが。


 まあそれはともかく、今は午前9時。

 ちょうど、モールが開きます。

 で、1日中モールなんですね?


『苺パフェを忘れてはいかんぞ?』


 はいはい。


『では、レッツゴーなのじゃ!』


「「「なのじゃ!」」」


 最後は念話じゃなくて、

 喜びが声に出たよ、女神様ズ。

 片腕を突き上げながら。


 ◇


 でも、大したもんだよね。

 移転前から人気のない場所を選び、

 移転後も認識阻害魔法で何気ない顔で歩いている。


『うむ。これで3回めのモールじゃが、とりあえず服屋じゃ』


 ああ、地獄の服屋コース。

 しかも4女神ズ。

 

 ◇


 ゆく先々で服屋さんは大騒動になった。

 店の外にも人だかりができてたりする。


 そら、ハリウッド真っ青の美人が勢揃い。

 何しろ、美人ってだけじゃない。

 気品があるんだよ。

 清潔感も半端ない。

 そこで一気に認識阻害の魔法をとき、

 服を選び始める。

 もうね、店内が一気に洗われたような感じになる。


 でも、上品なんだけど、傍若無人だからね。

 おっとりとしているけど活発な、って何言ってるかわかんないけど、3歳の幼児みたいな、見た目大人の女性が店内を荒らしまくるわけだ。


 しかも、店員さんは女神オーラに圧倒されるから、

 すぐに下僕状態。

 それも強制されたわけじゃなく、

 心からウェルカム状態。


 店員さん、もう満面の笑みで接客してる。

 萌死しなければいいけど。


 ◇


 とにかく、キリのいいところでというか

 服を選びまくっている女神様の背中を無理やり押して

 ロ◯ヤルホストへ。

 そうしないと、後から文句言われそうで怖いんだ。


 ここはチェーン店だけど、かなり美味しい。

 デザートも豪華で料理もなかなか。


 そりゃ、上には上がいるんだろうけど、

 僕レベルなら最上級のレストランだ。

 皆さん気の向くままに料理とアマオウパフェを

 頼んだ。


 もうね、店内が無言でこちらを大注目している。

 僕はどうしたらいいの。

 女性が苦手なのに、なんでこんな目に。


 ◇


 さて、満足してもらったところで

 地獄の服屋さんめぐりの再開。


 意外と女神様ズに人気なのがユ◯クロとか◯印。

 装飾性がないのがいいんだと。

 女神様の服ってゴテゴテヒラヒラキラキラ。

 装飾過多だから、新鮮に映るらしい。


 でも、そこは女神様ズ。

 逆にスタイルが抜群だから、

 ユ◯クロでも尋常じゃなく似合う。

 ため息しか出ない。


 まあ、天照様だけじゃなくて

 地球の神に見つかるといろいろよろしくない。

 だから、隠密性重視で。

 何か、記憶消去魔法とかかけまくってるみたい。

 それと、写真・動画に映らないような工夫も。

 どうやら、ノイズが入るようだ。


 あとは宝飾店だよね。

 これも服屋選びの一環として、コースに入っている。

 というか、見つけたらフラフラと入っていく。


 お金払うのは僕なんだけど。

 まあ、金鉱からほぼ無尽蔵に金が手に入るから

 いいんだけど。


 美人の集団を引き連れて、実際には引き釣り回されているんだけど、平気そうに高額のお金をカードで払う僕を見て、店員さんは何を思ってるのかな。

 お金持ちは日本に多いから、

 バブリーな奴、ぐらいに思っているのかな。


 あ、ちなみにカードは数社の銀行カード。

 1日の使用限度額があるからね。


 支払いにはカード以外の方法もある。

 前回初めて店に伺ったときに、


「等価交換というものもございます」


 ときた。

 金塊を店に預けて、その分を限度に宝石と交換。

 

「ああ、それはいいですね」

 

 で、僕は1千万程度の金塊を店に預けている。


 でもさ、僕ってどう見たって金持ちには見えない。

 チー牛食べてるのが似合ってるタイプだ。

 ロ◯ヤルホストだって場違い感半端ないんだから。

 

 ◇


 さて、なんとか服屋めぐりは終了し、

 地下の食品売り場へ。

 ああ、購入した山のような服は当然僕が。

 こっそりとマジックバッグへ。


『女神どもよ、まず言っておくがの。食べ過ぎには注意するのじゃ。体型が崩れたら大変じゃぞ?』


『あらぁ、大丈夫よぉ』


『そうよ、わたくし達、少食だから』


 あー、今日はロイヤルホスト以外にも

 3時のおやつにデニーズに入りましたよね。

 それから、モ◯バーガーも。

 しかも、大量に注文なされましたよね。


『まあ、自己責任じゃ。一応、忠告はしたからの』


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