第8話 集落の食事情は厳しい&金鉱

「まずは食料ですよね。どうしてますか」


 水は井戸がある。

 食料は雑穀中心の畑と森での採取。


 ただ、畑は土地が痩せており、

 せっかく育っても獣にやられたり、

 病気で枯れたりする。


 また、森の浅い部分では獲物がいなくなっており、

 かといってより深いところへ行くと、

 強力な魔獣・魔物が襲ってくる。


「とりあえずは、僕の狩った獣を供給しますよ」


 収穫は灰色狼1頭、角ウサギ5匹。


「ああ、これは貴重な肉!」


 住民いわく、なかなか獣には遭遇しないし、

 むしろ獣は危険で避けたいらしい。


「付近に川はないのでしょうか」


「歩いて2時間ほどの場所にあります。レベロン川って呼んでます。雨が降ると水害がおこるので、そばに住むことは難しいんやけんど」


「魚は食べないのですか?」


「魚ですか?うーん、王国では魚はあまり食べん。それにやっかいな魚の魔物がおるんですわ」


「案内してもらえませんか」


 魚をとらないなんてもったいない。


 ◇


「魚影がすごいじゃないですか」


「ええ、やけんど」


 というが早いか、川から何かが飛び出してきた。

 牙を生やしたトビウオのような魚だ。


「うおっ!」


 あらかじめ、この魚のことを聞いていた僕は、

 ナイフで簡単に撃退した。

 でも、突然襲ってこられたら対処に困ったかもしれない。

 その位、速度のある飛び出しであった。


「下手すると、あの魚がどんどん飛び出してくるんや。ほいで、あの牙であっちゅう間に骨にしちまうんや」


 姿格好はトビウオだけど、歯が非常に鋭い。

 悪質なピラニアといったところだろうか。

 僕はフライングピラニアと名付けた。

 長いので、通称フラピラとでもしておこうか。

 魚よりも川に近づく動物が好物らしい。


「わかりました」


 でも、僕にはナイフの雷攻撃がある。


「うりゃ!」


 ナイフを一閃。

 電気ショックが川中に襲いかかる。

 川幅は数百Mある。

 その半分くらいのエリアで

 気絶した魚が浮いてきた。


「みなさん、さあ、獲り放題!」


 さすがに川中の流れの早くて水深のある場所へは

 たどり着けない。

 それでも、浅瀬の川辺だけでも

 大量の魚が浮かんでいる。

 

 フラピラを真っ二つにしつつ、

 みんな、猛ダッシュで魚を確保した。


 ◇


「大漁だー!」


 僕達は気絶した魚を集落に持ち込み、

 池を掘ってそこに放流した。

 気絶から覚めた魚は再び水の中を泳いでいる。


「この際、好き嫌いは言っていられんでしょ。それと、いい食べ方があります」


 僕は魚の干物の作り方を伝授した。

 渓流つりが趣味だったことがあり、

 川魚を焼いたり干物にしたりしてたのだ。

 

 干物といっても、

 通常は生の魚をそのまま天日と風で乾燥させる。

 でも、川魚はそれ以外に焼き枯らしとか

 焼き干しがある。

 焼き枯らしは、魚を囲炉裏端などに吊るし、

 遠火でじっくり乾燥させたもの。

 焼き干しは、囲炉裏端などで一度焼いたものを、

 今度は天日で乾燥させたもの。


 ◇


「賢者様、なんから何まで本当にありがとうございます」


 僕はいったん集落を離れることにした。

 食料が寂しくなったからだ。

 食料とはメガ盛り弁当とお菓子である。


 集落を離れるにあたって、

 1週間分のお菓子をおいておくことにした。

 まだまだ住民の栄養状態は貧弱で、

 早急な対策が必要だと思ったのだ。


 あ、お菓子は仕事前に食べることを伝えて。

 これはルシールの助言だ。

 ステータスアップが一時的なものでなくなる。


「いや、僕も突然お邪魔しましたし、勝手なことばかりやってご不快に思われないか、と」


「まさか!命の恩人のような賢者様に向かって」


「いやいや、それは大げさでしょう。とりあえず、僕は集落を出発しますが、1週間後に再び戻ってきます。そしたら、もう少しちゃんとした対策を考えてみましょう」


 自分自身のことしか考えずに異世界に来たから、

 集落の手助けと言っても、この程度しかできない。

 いったん日本に戻っていろいろ準備をしたい。



 ただ、問題は資金。

 いつまでもボランティアはできない。

 

『マスター、でしたらこの近くに金鉱がありますよ』


 などと、僕の有能保護者が言い出したのだ。


 金鉱ってゴールド?


『もちろん。まあ、金鉱だけじゃなくて銀とか他の金属もとれますけど』


 だけどさ、金塊ザクザクってわけにはいかないでしょ?金鉱って含有率薄いっていうし。そもそも、掘るだけでも大変そうだし。


『マスター、なんのための賢者ですか。その程度のスキル・魔法ならば、現地にいけば発現しますって』


 というわけで、ルシールの案内で金鉱に向かったのだ。


 ◇


 ルシールの近いはあてにならんなー。

 集落からは走って半日かかった。


 翌朝、朝ご飯のメガ盛り弁当を食べてから、

 あ、マンモスとんかつカレーね。

 朝から、と思われるだろうけど、

 異世界に来たら、やたらお腹がすくんだよ。

 

 ルシールもマンモス大判ハンバーグ弁当を食べて

 お腹ポンポンしてるし。

 ほんと、その小さい体でどこに入るんだよ。

 まあ、それなりに体が膨張してるけど。


 その後、二人共サン◯リアのまろふ◯メロンクリームソーダと、井◯屋のミニ羊羹を食べてパワーアップ。


 ミニ羊羹はいいぞ。

 これはお菓子の中でも当たりだ。

 数字にできないのが残念なんだけど、

 やっぱりお菓子によってアップ率が違う。


 で、走る速度もパワーアップ。

 ちょっと怖いぐらいの速度で

 ビュンビュンと荒野を駆け抜けていく。


 それでも到着時にはお日様が南中していた。

 最低でも200kmは走ったかな?


『ですね。でも、この世界の広さを考えれば誤差みたいなものですよ』


 まあ、そうか。

 金鉱なんてそこら中にあるわけじゃない。

 それをピンポイントで言い当ててくれるんだから、

 やはり僕の有能保護者にはかわりがない。



『マスター、スキルの魔法の項目を見つめてください。そして、金鉱を発掘したいと強く願うのです』


 うし。

 言われた通りにやってみると。


 おお、使えそうなスキルが浮かんできた。

 鉱脈レーダー。採掘スキル。金属回収スキル。


 まず、鉱脈レーダー。

 金銀銅など、僕の知っている主要な金属の鉱脈を

 探し当てるみたいだ。

 採掘スキルは文字通り、鉱脈を掘るスキル。

 掘った鉱脈はどんどんマジックバッグに。

 それから金属回収スキル。

 掘った鉱脈から特定の金属のみ回収するスキル。



 では掘削するまえに、とりあえず昼飯だ。

 メガ盛り◯ンモス弁当。

 本日は特製からあげ弁当で、でかい唐揚げが

 ゴロゴロ入っている。

 マジックバッグのお陰で作りたて、

 湯気が出ている。

 からあげの匂いが鼻腔を襲って

 お腹がなりまくる。


「「ウマー!」」


 ルシールと叫びつつあっという間に完食。

 集落民の前では食べにくいんだよね。

 集落民にあげてもいいんだけど、

 僕達の分しかないし、

 安易に彼らの食生活を変えてしまいたくない。

 まあ、今更、という気もするけど。


 食べ終わったら、サン◯リアの期間限定、

 ミック◯ュソーダバナナ。


 んじゃ、ゴールド掘り、やってみますか。



 僕はどんどんと金鉱を掘っていった。

 金鉱は地表にあるわけじゃない。

 少し掘り進まないと駄目だ。


 鉱脈にぶち当たれば、あとはモグラみたいに

 坑道を作りつつ、金鉱を回収していく。

 金鉱と言っても、金塊ゴロゴロじゃない。

 見た目はゴールド味がない。

 あんまり普通の鉱石と変わりがない。

 金の含有量はそんなにないのだ。


 それでも、スキルで含有量の多い鉱石を探り当て、

 どんどん採掘する。

 このぐらいかな?

 4トントラック一杯分は採掘したろ。


 ……


 そこから回収した金は。

 手のひらに乗る量だった。

 _| ̄|○


『金の含有量は薄いですからねー』


 後で調べたのだけど、普通、金鉱石1tに対して、

 金は5~10g程度。

 優秀な金鉱で20g程度しか含まれていない。


 ここは目分量で1tあたり10g程度か?


『マスター、ガンバ』


 まったく、その通り。

 ひたすらモグラになって坑道を掘りまくった。

 


 結局、数時間かけて1kg程度の金塊が

 手に入った。


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