第6話 僕は賢者のはずなのに超人ハルクになった
じゃあ、行こか。
とはいうものの、どこへ?
あまり、怖い魔獣とかには会いたくないよね。
人間の街ってある?
『街というか、村でしたら南へ向かえばそのうち見えてくるかと』
歩き出して気付いた。
足が凄く軽い。
『次元渡りの効果ですね』
身体強化。
ちょっとジャンプしてみた。
立ち幅とび、軽く3mは飛んだぞ。
垂直飛び。
低木があるから飛んでみた。
木は僕より少し高い。
2mぐらいの高さがある。
軽く飛び越えた。
身体強化っていう程度のものじゃない。
人間を軽く超えてないか?
これだと、握力とかの力も相当ありそうだ。
じゃあ、走っていこうか。
『はい、マスター』
……
うーん、風になったぞ。
僕は自転車のりだからわかる。
これは時速30kmぐらい。
僕の通常の自転車巡航速度なんだ。
延々と走れる。
ほとんど疲れない。
当初は寒かったけど、
すぐに体が温まってきて快調だ。
いろんな方面での体力がパワーアップしている。
あとは空を飛べば、超人ハルクになれそうだ。
『次元渡りのためには強靭な身体強度が必要ですので、自然と身体が強化されます』
なるほど。
『ただ、力が強すぎるために、微小出力になれる必要があります』
ああ、何気にコップ握ったら割れちゃったとか。
普通にありそうだ。
僕はとりあえずバッグからコップを取り出し、
ニギニギしながら力のコントロールを覚える。
走りながら。
1時間ほど走った。
まだ風景は変わらない。
時々、魔物やらが湧くんだけど、
瞬殺しながら走る。
流石に少し疲れたかな。
じゃあ、一服。
カバンから取り出すはうま◯棒。
うま◯棒は大好きだから、
店においてあった全種類を買ってきた。
箱買いで15種類。
僕の取り出したのは、エビマヨ味。
ああ、これはうま◯棒の中でも
僕の好みベスト3の一つだ。
『あ、私も……』
え、お菓子ほしいの?
『ええ。女神様が本当に美味しそうにお菓子を食べてまして……』
もらえばよかったのに。
『そんな、畏れ多い』
ま、そっか。
ルシールにも袋を開けてエビマヨ味を渡した。
『カポ』
おいおい。
そのかわいらしい足と羽で受け取ったと思ったら、
一口で飲みこんじゃったぞ。
その小さい口で。
『あ、私、本来の大きさは大きいですから』
さっきも言ってたよな。
どのくらい大きいんだろう?
ボワン
うわっ。
ルシールが巨大化した。
白馬?
大きな羽が生えてるぞ。
あれか。
ペガサス?
羽を広げると5m以上あるんじゃないか。
大型車がすっぽりおさまってしまいそうだ。
これで空を飛んでいくのか?
『空を飛ぶのはスキルですから。羽で飛んでいる、というわけではありません』
なんだそうだ。
そういや、ドラゴンが小さな羽で飛ぶことがある。
ファンタジーの話だけど。
あれと同じことなんだろうか。
『マスター、この食べ物、とても美味しいですね。それに、なんだか力が漲るような。それに、私もマスターも発光してますね』
あ、それ、僕も思った。
食べたそばから力が湧き上がってくるんだよね。
それに、謎の体の発光。
これも次元渡りの効果?
『多分、そうですね。食べ物関係は随分とパワーアップされると言います。その効果が発光という形で現れたんですかね。これ、今は一時的なパワーアップですが、どうやら摂取直後に体に負荷をかけると永続的な効果になるみたいですよ』
ふむふむ。
そんなこともわかるのか。
「ええ。私には鑑定のようなスキルがありまして」
へえ、そりゃ便利だ。
負荷をかけるといいわけね。
そのあと、サン◯リアのまろう◯カフェオレ。
夏に自転車に乗るときは高確率でこれ。
他の地域は知らないけど、
関西では50円自販機がそこら中にある。
僕の住まい周辺だけかな?
僕の頭の中にも50円自販機の場所が入力済み。
多いところだと、50mごとにある感じ。
ただ、多くの自販機は50円はミニサイズ缶だけ。
ペットボトルとなると100円以上になる。
サン◯リアは100円ジャストが多いんだよ。
110円のとかめんどくさいでしょ?
10円がないと90円のお釣りがくるし。
もちろん、110円に比べるとお得感があるし。
だから、僕は50円自販機か、
最低でも100円自販機でしか買わない。
もっとも、スーパーに行くとミニ缶30円台とか。
激安価格のドリンクがおいてあるから、
それ買えって話なんだけど。
スーパーに入るのがめんどくさい。
あのね、ちょっと高めのロードバイクって、
外に置いておくと危ないんだよ。
対策なしだとホイールだけでも簡単にはずせる。
高額ロードバイクだと100万円軽く超える。
200万円前後の車体もある。
ホイール前後で100万円とか。
そのへんを走っているロードバイクだって、
数十万円のは珍しくない。
原則屋内保管。
雨風避けの意味もあるけどね。
そんなのがスーパーに止めてある。
じゃあ、盗もうか。ってなる。
スーパーには寄りにくいんだよね。
寄ったとしても、結構ガチ目にロックするし。
めんどくさくて仕方がない。
僕の住んでる場所はひったくりとか自転車盗難、
めちゃ多いから。
だから、自販機で。
ということになる。
◇
ふう。休憩完了。
パワーも充填済み。
よし、じゃあ再びかっ飛ばすぞ!
……
ああ、今度は時速40kmぐらいで巡航してる。
僕が自転車で追い風巡航してるときの感覚だ。
最高だ。
時々出会う魔物も随分離れたところから
どうだろう、30mぐらい前から瞬殺する。
ナイフを一振りするだけなんだけどね。
とは言うものの、1時間も走ると流石に
パワーが切れてきた。
腹が減ってきたのだ。
そのタイミングで森が目の前に。
『この森の向こう側に王国があります。その手前で村とか集落とかが散在してますね』
ふむふむ。
ちなみに、村とは住民が50人以上になると
正式に名乗れるらしい。
じゃあ、森に入る前に昼ご飯にするか?
『是非とも!私も期待していいですよね?』
もちろんだとも。
異世界では相方が一人いると聞いていたので、
10日分ぐらいの2人分のお弁当を用意してる。
ああ、あと大量のお菓子とかドリンクとか。
初日だから、パワーアップもっとしたいよね。
だから、メガ盛り◯ンモス弁当。
その名もマキシマムホ◯丼。
名前の由来はヘビメタファンなら知ってるよね。
ホルモンたっぷり、野菜たっぷり、ご飯たっぷり。
ホルモンには特製タレ。
これが美味いのなんのって。
『マスター、美味すぎますね!』
シマエナガサイズのルシールもバクバク食べる。
一口サイズが自分の体より多いのが不思議だ。
パックリごっそりと食べていく。
ふう、ごちそうさま。
さっきよりも発光の度合いが大きいかな?
おや?
ルシール、さすがに体が大きくなってるよ?
『このお弁当、ちょっと量が多いので、シマエナガサイズでは無理みたいです』
で、何。
次の姿はエゾモモンガ。
北海道のかわいいシリーズで決めてるわけ?
『すみません、私、本当に可愛いのに目が無くて。天界から日本を眺めていたとき、可愛いものが溢れていて、変身するならこれとこれっ、て決めてたんです』
シマエナガとエゾモモンガは日本でも可愛い動物
2トップって言っていいぐらい。
確か、飼育不可能というか、飼育するのは難しいらしいから、こうやって間近に見られて僕もウェルカムなんだけど。
「ちょっとステータス鑑定してみたんですけど、確かに数値がアップしてますね」
ルシールはステータスが数値となっているんだ。
「ですね。まあ、私の数値はかなり大きいですから、アップしたといっても誤差の範囲なんですが」
僕は自分のステータスを数値では見られないけど、
それでもパワーアップを感じるよ。
◇
さて、お腹がふくれたところで森に入る。
流石に、森の中では走り回れない。
原生林に近いからだ。
ナイフを振り回して道を作りながら
進んでいく。
森の中に入ったら敵が増えた。
だから、そのたびにナイフ攻撃をしてるんだけど、
レベルが上がったみたいだ。
そのうち、
ソニックウェーブ 衝撃波+音魔法
ライトニングウェーブ 雷魔法
フレイムウェーブ 強力な炎攻撃
の3つがナイフ攻撃に追加された。
『マスター、ナイフ攻撃は強力ですね。この辺りの魔物クラスは瞬殺レベルですね』
いや、僕にはその実感がない。
なにせ、ナイフを振ってるだけだから。
ナイフから勝手に何かが出て
勝手に敵が霧散していく。
もっとも、ルシールの攻撃はそれ以上に
無慈悲なんだけど。
ナイフの攻撃パターンはわかった。
じゃあ、包丁は?
シュパン!
灰色狼が襲ってきたので、包丁で応戦してみた。
灰色狼がキレイに解体されていた。
頭、毛皮、肉、内蔵、骨。
包丁を一閃した瞬間、
これらパーツに別れて地面に鎮座した。
『えと。なんというか。仕組みがわかりませんね。この包丁の攻撃って』
さすがのルシールも驚いている。
これこそ、チートすぎるだろ。
その後も角ウサギの集団が襲ってきたので、
包丁を一閃したら、解体の範囲攻撃となった。
見事にシンクロした解体攻撃が行われた。
ちなみに、灰色狼も角うさぎも魔獣である。
味はどうなんだろう。
丁寧に解体したけど。
マジックバッグに入れてあとで料理してみよう。
『灰色狼は食材としてはどうですかね。角うさぎは皆さん喜んで食されるようですが』
そんなわけでズンズンと進んでいると、
「キャー!」
おお、これは女性の悲鳴。
かなり若そうだ。
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