第5話 異世界転移した
ここは?
本当に異世界に転移したのかな?
普通の草原なんだけど。
女神様からまずは食生活を改善させてくれ、
などと頼まれたんだけど、
テーマが大きすぎる。
だから、とりあえずお試し異世界ということで。
あれからネットで注文したものが届いて、
それから再び女神様がやってきて
再びモールで騒動をおこして……
ようやくやってきました、異世界。
『マスター、はじめまして』
え?
『あ、ここです。私です』
キョロキョロしても誰もいない。
いや、小鳥が1羽。
しゃべっているの、君?
『で、ございます。はじめまして。女神クリスティーナ様の眷属、ルシールでございます。お見知りおきを』
小鳥っていうか、小鳥すぎる。
雀の半分もないぞ。
それに、丸っこい体にちっこい目。
白い羽毛。
日本のシマエナガによく似ている。
『ああ、できる限り目立たない姿を、ということでシマエナガを参考にしました。それと、私、可愛いもの大好きで』
確かに、色々小さいんだけど、
逆に目立ってるよ。
それに、この感じ。
念話で話しているな。
女神様は妾の眷属だから大丈夫、みたいなことを
何度も言ってたけど、大丈夫なの?
『マスター、このサイズでも大抵のものには遅れをとりません。それにいざとなれば本来の姿に』
本来の姿?
『はい。本来はもっと大きいのです』
そうなんだ。
鷲とかああいう鳥になるのかな。
『得意は火魔法です。威力には自信があります。おまかせください』
ほお、魔法の花形、火魔法。
いいじゃないか。
などと挨拶をかわしていると、
僕の脳内にアラートが。
『ああ、マスター。少しお待ちください。不浄なるものが湧いたようです』
危険な気配がしているほうに目線を送ると、
黒い物体が地面から湧き上がる途中だった。
『ブラックウルフです』
というが早いか、小鳥は
ブワッ!
とその小さな口からありえないような
勢いのある巨大な火を吹いた。
『ガッ!……』
ブラックウルフは瞬時に消滅した。
おお、凄いね。
『ありがとうございます』
あっという間に消滅するんだね。
『あれは魔物。魔石を核として生まれる存在です。形は獣ですが、獣とは中身がまるで異なるものです』
はあ、そうなんだ。
『獣は火魔法で燃やしても、相当な高温でない限りなんらかの痕跡を残しますが、魔物はあのように魔石を残して霧散します』
そういわれて地面を見ると、小さく光る石が。
『その青い石が魔石ですね。どうぞ、お取りください。いろいろ使い勝手いいです』
異世界の初魔石というところかな?
魔石はファンタジー小説では有名だよね。
透明な青色の石で直径が5cmぐらい?の
不思議な光を放つ石だ。
さて、この大草原。
さして起伏が無く、遠い向こう側には
森が見えている。
その向こう側には山が覗いている方向もある。
360度、似たような風景だ。
太陽は一つ。当たり前か?
頭上というわけではないが、空高く輝いている。
『そちらが南ですね』
ルシールが太陽をさして言う。
ということは、北半球ということか。
ただ、かなり寒い。
結構着込んでいるんだけど。
ホッカイロを使用する。
風も非常に強くて、これが寒さを強く感じさせる。
日本では3月下旬。
こちらは日本より寒く感じる。
もっとも、草原のど真ん中だから、
それを差し引く必要はありそうだ。
◇
さて、ルシール、まず何をすれば?
『まずは目的の確認をしましょうか』
なるほど。
僕の聞いたのはこんなこと。
この世界の食生活の改善。特に甘味。
地球の産物に頼りすぎないように。
最終的には現地生産。
肩肘張らずに。
『はい。私も女神様からそのように伺っております』
良かった。
じゃあ、次は?
『そうですね、まずはステータスオープンでしょうか』
おお、異世界にきたらこれか。
ステータスオープン。
【ステータス】
氏 名 ケン・アイザック(相崎賢)
種 族 異世界人
性 別 男
年 齢 15歳
職 業 賢者
スキル 多言語 魔法 次元渡り 各種耐性
各種感知
その他 女神の加護
出た。ステータス。
相崎賢だからケン・アイザックということか。
日本語の世界ではないんだろうな。
これも当たり前か。
種族は異世界人。
で、年齢、15歳?
えらく若返っているんだが。
小さな鏡を持ってきてるはず。
取り出して見てみる。
本当だ。
物凄く若返っている。
昔の僕だ。
まあ、本当にフツメンだよな。
異世界に来たからと言って、
イケメンになるわけじゃない。
職業は賢者。
確かに。
実感はないけど。
スキルは多言語。
あれか、どのような言語でも問題ないってやつか。
まあ、必須だな。
魔法。
漠然としているんだけど。
あとで検討しよう。
それから次元渡り。
じっと眺めていると、別窓が浮かび上がった。
『次元をわたるスキル。1週間に一度使用可能』
なるほど。
女神様の言う通り、頻繁に使えるスキルではない。
『次元渡りの効果として、身体強化。また、所持品の中には効果がパワーアップする場合がある』
ふむふむ。
これも女神様が言ってたな。
ルシール、ちょっと所持品を試してみるね。
『はい、マスター』
僕はナイフを取り出し腰に装着した。
サバイバルナイフ。
元は軍用ナイフという全長約30cm、
刃渡り16cmの黒光りするナイフだ。
鞘(さや)から取り出して、何気に振ってみる。
「!」
今、刃から何か出たぞ?
風?エネルギー?
当たりを見渡し、低木の生えているところへ。
木に向かってナイフを振る。
『シュパッ』
おお、10cmほどの幹が真っ二つに。
『マスター、それは風刃とよばれるものですね。風魔法の一種です』
風魔法?
『はい。そのナイフは魔道具の一種です』
魔道具。
誰でも使えるのかな?
『そうですね。魔力のある人ならば』
魔道具とはそういうものか。
魔石は使える?
『それはまた別なタイプの魔道具です』
なるほど。
魔道具に直接魔力を注ぐタイプと、
魔石をはめて魔力を注ぐタイプの2種類か。
ということは、僕は魔力が備わっているのか。
『はい、マスター。かなり強力な魔力が』
意識して魔力を注いだわけじゃないけど。
『魔力のある人ならば、使用時に自然と無属性の魔力が注がれます』
じゃあさ、魔力があるってことは僕も魔法を使えるってことでしょ?どうやって?
『マスター、手を突き出して魔法、と念じてみてください。窓が開きますから、選択してください』
ほお。
手を突き出して魔法。
火魔法 ファイア
風魔法 ウィンド
土魔法 サンド
水魔法 ウォータ
お、出た。
じゃあ、ファイア。
すると、突き出した手から火のかたまりが。
僕の初魔法だ!
「アチチ!」
『マスター、火魔法はそのままにしておくと自分に跳ね返ってきます。方向をしめしてやれば、熱くありません』
それを早く言えよ。
ファイア。
向きは前方へ。
おお、火が少し離れたところで燃えているぞ。
うむうむ、満足なのじゃ。
ああ、女神様の口調が移ってしまった。
でも、わかるなあ、この口調。
なんだか、偉くなったような気分だ。
魔法はこれだけ?
『とりあえずは、4属性魔法の初級中の初級魔法だけですかね。使用を重ねれば、自然と使える魔法は増えていきます』
ああ、なるほど。
『でも、最初から4属性使えるなんて規格外ではあります。普通は、1属性の魔法しか使えません』
あと、女神様の加護。
『異世界生活において祝福がもたらされます』
なんのこっちゃ。
各種耐性は
『魔法攻撃耐性、物理攻撃耐性、精神攻撃耐性とかですね。これも経験に従い強化されていきます』
各種感知。
ああ、さきほどアラートがなったやつか。
『ですね。危険感知とか魔力感知、罠感知とか多岐に及びます。これも経験を積むことですね』
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