第7話 お腹が減った!


 周りを見渡すと、一番初めに来たところとは別の場所に出たようだ。

 先ほどの場所に出たところで、地図が分からない。結局、別の街にたどり着いただろう。



 ぐぅ〜っとお腹が鳴る。お腹を押さえて、空腹を抑えようとした。




「早く街を探さないと……死ぬ! いや、死んでるんだったぁ」



 とりあえずと歩く。すると、ふわっといい香りがしてきた。お腹の減りでしょぼんとした気分が、一気に上がる。顔をあげて、その香りのする方へ身体が引っ張られる。



「んん〜!? これは……パンの焼ける香り!」



 香ばしいパンの焼ける香りを、胸いっぱいに吸い込んだ。可愛らしい真っ白な塗り壁でできた家にたどり着く。


 可愛らしいベルの音を立てて、その扉を開いた。



「いらっしゃ〜い……!?」



 げっそりとした私の顔を見て、店主が驚く。ショートヘアの柔らかな雰囲気の女性だ。


 中からでできて、可愛らしいうさぎ型のパンを渡してきた。



「大丈夫? とりあえず、食べて!」

 


「おいくらです?」



 ふるふると首を振って、私の手にうさぎパンを握らせた。私が手にしたのを確認して、そのまま何も言わずに中へ入って行く。



 せっかく頂いたので、うさぎパンを食べてみる。ふわっふわの柔らかいパンに、小麦の香りが鼻を抜ける。


 中からいちごジャムが、トロリと溢れてきた。



 小麦の優しい香りに、甘いいちごジャムの相性がバツグンだ。



「うまぁ〜」



「それは、良かった!」



 少しお腹が満たされ、美味しそうに輝く陳列されたパンをぐるっと見てみる。

 

 塩パン、クロワッサン、胡桃パン……と、先ほど食べたパンもそうだったが、今まで食べてたものと変わりはない。



「すみません……私、ここへきて初めての買い物なんです」



 先ほど渡された、小さな包みを開いてみせた。青色が、高価であることは教えたられた。しかし、ここの物価もわからない。



 海外に行ってお金がわからないように、私には天国のお金の価値がわからない。



 店主は、指でおはじきをなぞって数を数える。



「それだけあれば、一日過ごせるよ! 好きなのを選んでね!」

 

 

 ニコニコ笑顔で、両手をひらひらとさせる。その表情に嘘はなさそうだ。

 私は好きなものを、トレーに乗せていく。あんぱんと照り焼きチキンのパンをチョイスした。




「じゃあ、黄色をひとつ貰うね!」



 私の包みからそう言って、黄色のおはじきをひとつ取り出した。物価がわからないが、店主がそう言うのならそうなのだろう。

 ……少し、安い気もするが。



「ありがとうございますっ!」


 

 減ったお腹を満たせるし、今度はお家探しをしなくてはならない。私は、店主に手を振って店を出る。



(きっと、今みたいないい人が……徳を積んだ生活を送れるんだろうなぁ)


 

 自分も彼女のように、ここで過ごそう。天国は、いい場所そうで一安心をした。


 


 




 

 

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