第6話 冒頭の一文へ。


 そして、1話の冒頭に戻るわけだ。



「明日も、死体が降ってくるでしょう。それでは、良い天国生活をっ!」



(いやいや、どういうこと?)


 この文章を読み上げるよう、神様に指示を受けた。そして、今の私の声は天国に響いている。



 簡単な説明によると……どうやら、死ぬとまずはこの天国を魂が通過するそうだ。

 天国の住人は、魂のことを死体というそう。それもそのはず、魂という名の人が降ってくるのだ。



 どういうシステムなのやら、地上で死に上から降ってくる……という。



 そして、死ぬ人の数の多さによってこの『天国の天気予報士』のいうセリフが変わるそうだ。

 その天国の天気予報士は、先ほど徳を積み輪廻転生をしていったとか。



 天国ってもっと、楽しめそうなのだが。ここでも、働かざる者食うべからず。と言ったところだろう。




「は、働きたくない……」



 私は、愚痴をこぼす。それもそのはず。私の死因は、仕事の疲れを発散するアルコールを買いにいくために死んだのだから。



 ぴょこっと顔を出して、神様は笑った。



「えぇ、ここに来るとみなさんそう仰います。しかし、働いてる経験ですかね? みなさん、普通に働くのですよ」



 ニコニコ笑顔で言うものだから、恐ろしい。言い返したくとも、輪廻転生後どうなるかわからないので黙っておく。




「じゃあ、お仕事をしたらお金をお支払いします」



 小さな巾着に入った、お金を渡された。巾着を開いてみると、おはじきのようなカラフルなガラスが入っている。




「青色、黄色、赤色の3色です。綺麗でしょ?」



「綺麗ですけど。色は、それぞれどう違うのでしょう?」



 神様は、指を3つ立てる。そして、簡単に説明をされた。



「ここの通貨は、そのおはじき。青色が一番高価、その次に黄色、赤色です」



 天国なのに、お金が必要でそのために働く。生きていた頃となんら変わらない生活が、また始まろうとしている。

 あの楽しそうにしていた人々も、こうして働いているのだろう。




「わかりました」



「今まで通り、食べたり寝たり……そうしないと、生きていけませんからね!」



 そう念を押され、奥の扉を開かれた。そして、手で外に出るように促された。

 私は、返事をするしかない。


 追い出されるように外へ出て、振り返る。



「あっ、紗夜さん! 今後は、放送室があるのでそちらでお仕事をしてください! よい、天国生活をお送りください」



 神様が、私に笑顔で手を振って引き戸を音を立てて閉めた。私の返事なんて待たずに。



 放送室が、どこにあるかもわからない。また、この天国を彷徨いながら探すしかなさそうだ。



「ん〜、とりあえず……お腹減ったかなぁ」



 空を見上げると、晴々とした青空が広がっている。熱いぐらいの大きな太陽の陽を、手で遮ってみる。

 それでも、眩しい。



 ため息をついて、先ほどのような街らしき場所を探すことにする。


 

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