第3話 天国行きの切符。


 私は『天国はこちら』と書かれた看板通りに、足を進めていく。矢じるしが描かれているのでそれ通りに歩く。



 周りは、何もなくて真っ暗な中を進んでいく。少し不安感を覚えつつも、歩みを止めない。



 ぶわぁっと大きな風が吹いた。目をグッととじて、風から身を守ろうとした。瞳を開けると目の前には、綺麗な青い空が現れる。私が歩いてる先は、崖になっていて先には進めなさそうだ。



 キョロキョロとしていると、近くに小さな小屋があるのに気がついた。

 看板も消えたので、その小屋の家主に聞こうと思った。



 ――コンコンッ


「はーい」



 中から優しそうな女性の声が聞こえてきた。小屋の扉を開いて出てきた彼女は、2つのお団子結びをした真っ白な肌の持ち主だった。


 

「あら、天国行き?」


 その女性は、白い手を出して紙を渡すように促してくる。私は、ぐしゃぐしゃの紙をさっと手渡した。



「んっ? あらら……あなた、かわいそうに」



 この紙には、死に方については何も書いてなかったはず。それなのにこの女性には、なぜだかお見通しだった。



 そして、ビリビリと破り空に向かって撒いた。その紙たちは、小さな金の光となった。金の光たちはキラキラと輝きながら空を飛んでいき、大きな雲の中に吸い込まれていく。

 私は、その光を見つめる。



「あ、私はね! 知ってると思うけど……イザナミね!」



「あぁ……え!? イザナミノミコト? ですか……」



「ふふふ、1日に1000人くびり殺しましょう。って話かしら?」



「あ、えぇ……生と死ができたのですよね」



「まぁ、そうね。……あ、ほら! 天使の階段ができたわ。行ってらっしゃい、天国へ」


 先ほど金の光が吸い込まれた大きな雲から、光の柱がこちらに降り注ぐ。その光が階段の形を成していく。



 私は、その光の階段に吸い込まれるように足が動いていった。手を伸ばすと、太陽の光のようにとても暖かい。



 私の足が、その階段を踏む。裸足の足から、温もりが伝わってくる。光なのに、しっかりとした造りなようで普通の階段を登るように上がっていく。


 



 雲の上まで登り、最後の一段に足を乗せる。目の前の真っ白で大きな雲がぱっくりと口を開く。

 その口の入り口に、『天国に到着』と書かれた看板が見えた。



(ここが、天国……)


 

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