第3話 変わる日常

目覚ましの音と共に目が覚める。もう朝だ。窓を開けると11月の冷気が飛び込んできた。冷たい空気を吸い込むと目が覚めてきた。同時に昨日の事も夢なのではないかと思ってしまう。しかし確かに現実だった。LINEの友達の欄には

「江成 諒」の名前がある。確かに昨日偽のスキャンダルを作るという約束をしたのだ。もうすぐでこの日常が一変する。そう考えるとこの日常を大切に過ごさなくてはいけないと里花はふと考えた。今日は7時から「IRIS」のメンバー達とダンスレッスンだ。諒とのスキャンダルが発覚したらすぐに沢山の人達が里花を見る。その時にその人達をファンにする為にはパフォーマンスに更なる磨きをかけなくては。そう覚悟を決めると里花は朝食を食べ、外に出た。ダンスレッスンは事務所の一室で行う。家からは15分ほどなので里花はいつも運動がてら歩いて行く事にしている。朝早いためあまり人通りは少なかったが道行く人たちはコートはジャケットなど冬の装備をしている。事務所に着きダンスレッスンの部屋にいくとメンバーの1人花凛がもう着いていた。1年前に入ってきたメンバーでぱっちりとした丸い目の可愛い女の子。まだ19な事もあり男性からの人気ある子だった。既に練習を始めていて少し汗ばんでいる。真面目な子でいつも練習などは30分前には来ていた。

「おはよう。今日も早くからご苦労様。」

里花が挨拶をすると花凛は愛想よく答えてくれた。

「おはようございます。今日も一緒に頑張りましょうね。」

「おはようございまーす。」

と同時にもう1人のメンバー 佐伯 千穂もやってきた。この子も1年前に入ってきた子で少しマイペースな所もあるがライブなどでは急にスイッチが入る、男性にも女性にも人気の子だった。「IRIS」の人気はほぼこの2人の人気で、しかも里花と違い若いこともあり里花は少し劣等感を持っており距離を作っていた。しかし最近は2人が良く接してくれる事もあり少しづつ話すようにもなっている。

「おはよう。もう2分遅刻だよ。」

「ごめん、道でお婆ちゃん助けてた。」

「嘘つかないでよ。どうせ寝坊でしょ。」

「ばれた。」

「も〜」

そんな2人の会話を聞きつつ里花は今日も百合香は遅刻かと少しがっかりする。最近百合香は作曲をしてインターネットにそれをアップしている。ある程度人気もあるしそれは良いのだが時間がかかるらしく夜遅くに寝て練習に寝坊する事が最近多かった。百合香が来た頃には練習が始まっており終わると百合香はすぐ帰ってしまうので、最近里花は百合香と話せておらず少し距離ができてしまっていた。

「はーい。じゃあレッスン始めます。」

レッスンの先生が来てレッスンがスタートする。里花はいつも以上に力を入れた。途中で百合香が来たが里花は気が付かなかった。休憩中も練習していたため百合香と話せず気づいたら練習が終わるまで目すら見ていなかった。レッスンが終わりいつも通り帰ろうとすると、

なんと

「ねぇ、里花ちょっといい?」

と百合香から話しかけられた。百合香は神妙な面持ちで言った。

「私IRISを辞めようと思うんだ。」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る