第2話 計画の始まり

「あの、私の彼氏になりませんか?」

そう口にした瞬間しまったと思った。私は何を言ったのだろう。恥ずかしさと居た堪れなさで顔が熱い。すると諒は驚いた事にこう言った。

「いいよ」

びっくり以外の感想が出てこなかった。

「僕にも彼女が必要なんだ。」

そう笑顔で言う彼を里花は驚いた顔で見つめ

た。

21時 カフェ「Cherry」

場所を変えて話そうという事になり里花は紅茶を諒はカフェラテを頼んだ。明るい所に入ったため諒の顔がよく見える。やはり人気なだけあって端正な顔だ。女子校出身のため男性経験のない里花は不覚にもドギマギしてしまっていた。

「IRISのサトカちゃんだよね。どうして僕を彼氏にしたいだなんて?」

当然の疑問だ。自分の名前を知っていた事を嬉しく思いつつ疑問に答えた。

「私、ファンの数がとても少ないんです。もし人気俳優の貴方と付き合えば、大勢の人から注目されます。そしたら何人かはファンができると思って。」

「確かに今日のライブを見た感じ少なかったよねサトカちゃんのファン。」

自覚はしていたがいざ人から言われると情けない。

「とにかく私には人に見てもらうチャンスが必要なんです。」

興奮したせいか上手く舌が回らなかった。

「確かにファンを獲得するには人に見てもらえるチャンスは必要だよね。」

「はい。だから江成さんと付き合えばそのチャンスを得られると思って。」

考えれば諒にはこの提案になるメリットは何もない。さっき彼女が必要だと言っていたが何故必要なのだろう。

「江成さんはどうして彼女が必要なんですか?」

そう里花が聞くと諒は少し顔を歪めた。

「僕ね、実は俳優の仕事やりたくないんだ。」

驚きの連続だ。あんなにテレビや雑誌に出ているのに?

「もし彼女を作ればスキャンダルになってファンが減る。そしたら引退しやすくなるでしょ。」

そう淡々と語る諒を見ながら里花は人気者には人気者なりの悩みがあるんだなと思う。まるで知らなかった。

「でも、サトカちゃんの話を聞いている感じただ付き合うだけじゃ多分非難だけで終わっちゃうね。」

確かに今考えればそうだ。諒のファンは女性が多いし敵意を抱かれるだけで終わってしまうかもしれない。

「だからね。僕にとってサトカちゃんは遊びにの女の子ってことにするのはどうかな?」

「遊び?」

「そう。それで少し付き合った後僕はサトカちゃんをこっぴどく捨てる。それでもサトカちゃんが懸命に活動する姿を見たらきっと同情でファンになってくれる人が沢山できるよ。」

確かにそちらの方が好感は持てる。

「でも、そしたら諒さんは沢山の批判を浴びてしまうのでは?」

「別にいいよ。俳優を辞めれればそれで。その過程でサトカちゃんのファンが増えるのならそっちの方が良いじゃん。」

本当に彼は俳優の仕事が好きではないのだろう。批判を浴びてまで辞めたいのだから。

「じゃあ何回かデートして週刊誌とかに取り上げられる。みたいな感じですかね。」

「うん、その後に僕が他の女の子と付き合っている事が発覚。サトカちゃんはそれでもアイドルを続け僕は引退っていう感じかな。」

「本当に江成さんはそれで良いんですか?」

「うん。LINE教えてまた連絡するよ。」

本当にあっさりしている。そんなに俳優を辞めたい理由があるのだろうか?そんなことを考えながら帰路に着いた。

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