写真の女
古橋レオン
写真の女
「ねぇ、これ、誰?」
そう言って妻は不意に一枚の写真を突きつけてきた。
それを見て俺は思わず息を呑んだ。
そこには街を並んで歩く俺と真っ赤なドレス姿の女がはっきりと写っていた。
吹き出した冷や汗が背中を伝い、音にならない叫びが口から漏れ出る。
「...な、何だこれは...」
「それはこっちの台詞よ!こんな平然と浮気するような人だったなんて!」
凄まじい剣幕で叫ぶと、妻はそのまま床に泣き崩れてしまった。
「ま、待ってくれ、それは誤解だ」
困惑しながらも、俺は慌てて妻に状況を説明しようとしたが、もう遅かった。
「もういいわ、私出ていくわ。でもその前に...」
そこまで言うと、妻は充血しきった両目で俺を睨みつけた。
「この女が誰かだけ、教えて」
一番、尋ねて欲しくなかった。
妻に「この女」が誰かなど、恐ろしくて伝えられない。
だがだからといって口ごもれば、少々短気な妻は...
「そんな私にも言えないような関係な訳?本当に、あなたって人は!」
「わかった、言うよ!」
そう叫ぶと、俺は覚悟を決めた。
真実を告白する覚悟を。
妻に別れを告げる覚悟を。
そして全身恐怖に震えながら言葉を絞り出した。
「...これは俺の姉貴だよ、五年前に、俺が間違って殺しちまった...」
写真の女 古橋レオン @ACE008-N
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