第24話 仲間が増えました

「簡単なプログラムなら、もう作ってみたわよ。すごく楽しかった。作ったコードを見てくれる?」


もうこんなプログラムが書けるのか……すごいな。

ひょっとして、優子は……こちら側の人間か?

両親は、俺が標準になっているから、優子のことを普通だと思っているかもしれないな。


優子は絶対に俺側の人間だよ……この家に俺の仲間が増えました……やったね。

仲間ができてうれしいな。


……2008年1月……


今年は秋葉原ビルの新居で、正月を迎えている。

昨年はいろいろあったな、ビルも完成したし妹もできた。

ビルの屋上で、ビルの谷間から登る初日の出を、家族で楽しむ。


幸せな人生を歩んでいると皆が思っている。

そのせいか、正月を心から楽しむ余裕がある。

優子もリラックスした表情だ。


早朝、家族全員で着物に着替え、神社にお参りに行く。

俺は神様にお世話になっているし、報告もあるからから、時間の長いお祈りになる。

横を見ると、家族皆が時間を掛けてお祈りしている。


これまでそれぞれ、いろいろあったからな……


お参りから帰ってきた。

今年は優子がいるので、母さんは、いつにも増して料理を張り切っている。

優子もうれしそうに手伝っている。


父さんは、昼前なのに既にほろ酔い状態になっている。

毎年こんな幸せな正月が送れるといいな。


小さな女の子の世話をしたかった母さんとしては、もう楽しくてしかたがないようだ。

あれから頻繁に優子と2人で出かけ、女の子用の洋服とか小物を買い込んで帰って来る。

母娘でそういう買い物をするのは楽しいのだろうな。


本当の母娘のようだ。

優子との会話も本当に楽しそうだ。


母さんが優子から、叔父夫婦の家でのことを聞いている。

なんと優子は小学校に、行かせてもらってなかったのだ。

村岡の意地悪ババア……小学校にも行かせないとは、酷すぎるだろ!


不登校の俺が、偉そうに言う資格はないけど、自分の意志で学校に行ってないのと、行かせてもらってないのは、全然違うのだ。


母さんのスイッチが再びバチンと入る。

母さんが、優子の両親が亡くなった後からの経緯を聞き始めた。


暫くして、平山弁護士を直ぐ呼ぼう……となる。

母さん、またまた怒っているぞ! 

もちろん、話を横で聞いていた俺も父さんも怒っている。


さすがに正月に呼ぶには気が引けるので、1月5日まで待って連絡することにする。


至急と聞いて、平山弁護士が直ぐにやって来る。

「他の用事を後回しにして来た」とか言っていたが、嫌な顔はしていない。

俺の家族は、平山弁護士の上得意さんだ。


優子から聞いた話を、母さんから平山弁護士にしている。


「2006年11月、優子のお母さんが、帰宅するお父さんを駅まで車で迎えに行ったが、駅からの帰りに交通事故に巻き込まれて、両親とも死亡してしまい、優子にとっての親族は、両親の親たち4人と、お父さんの弟である叔父夫婦になったそうです」


「叔父の亮太は気が弱くみっぽい性格の男、妻の明美は気が強く意地が悪い女。夫婦で同じスーパーに勤務しています。亮太は明美が怖いらしく、何でも明美の言いなりだそうです」


「交通事故の夜、病院から優子の両親が亡くなったことを知らされ、叔父夫婦と両親の親たちが駆けつけたのはいいが、優子を誰が引き取るという話を両親が亡くなった病室で始めたそうです」


「両親の親たちは、高齢であることと、生活が苦しいことを理由に、最初から引き取りを拒否したそうです。叔父夫婦も生活が苦しいことを理由に、引き取りを拒否するものの、最終的に気が弱い叔父が説得され、結局優子を引き取ることに決まったそうです」


優子がいる前で、皆で引き取りを嫌がるとか……酷い話をしたものだ。


「両親の火葬が終わり、優子は親戚たちと共に、遺骨を持って帰宅、両親の親たち4人は遺骨を拝んで、そそくさと帰ったそうです」


この4人は高齢とはいえ、酷すぎるよな……親戚に恵まれていないな。


「自宅に、優子と叔父弟夫婦だけになると、明美あけみの態度が豹変、優子を引き取るならお金が必要と、勝手に家の中を探し回り、両親の通帳と印鑑を、自分のバッグに入れてしまったそうです」


優子の両親の死亡届が出される前に、預金を下ろしてしまおうという魂胆が丸見えだ。

それは泥棒だぞ。


「両親の通帳と印鑑を取り上げておきながら、優子をそのまま自宅に、3日間置き去りにしたそうです。これからどうしたらいいのか不安になっていたら、イライラした明美が突然自宅にやって来て、無理やり叔父の家に連れて行かれたどうです。その後の優子に対する扱いは先日ご覧になった通り。以上が、優子から聞いた話です」


両親の貯金をネコババしたから、形だけでも優子を養育した証拠を作りたかったのだろうけど、それも終わったら、優子に自分で出て行けと仕向けていたとは酷すぎる。


平山弁護士は、メモを取りながら母さんの話に集中している。

叔父夫婦がネコババしたお金を、どう取り返すかいろいろ作戦を考えているのだろう。

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