第25話 優子のお金を取り返せ
「叔父夫婦を、なんとか痛い目に遭わせられないのですか?」と、母さんが平山弁護士に迫る。
痛い目とか……母さん、随分怒っているな!
「優子ちゃんは、どうしたいですか?」と、平山弁護士が優子に確認している。
冷静だ……
「盗んだ両親の預金は、全部返してほしいです。叔父夫婦は、罰を受けてほしいです」
「お金を取り返した後も、相馬の家族でいますか?」
「もちろんです。私の今のお母さんは陽子さんです」
母さんが、涙目になっている。
そりゃ、うれしいよね。
母さんは、完全に自分の娘だと思っているから。
「分かりました。明日、優子ちゃんの自宅に行きましょう。お母さんも一緒でいいですか?」
「もちろんです」
「両親の預貯金は、もちろん優子ちゃんのものです。優子ちゃんを引き取って、叔父夫婦の籍に入れて完全に自分の子供にしたというなら話は別ですが、あの様な扱いでは、自分の子供のように世話をしたとは、とても言えないでしょう」
「叔父夫婦がやったことは窃盗になります。両親の口座から引き出したお金が、叔父夫婦の銀行口座に入っていることを証明すれば、動かぬ証拠を突きつける事ができますね」
「それと、交通事故で亡くなった両親に過失がないのであれば、交通事故の保険料を請求できるはずです。それと、優子ちゃんが両親の自宅に住まないのであれば、知り合いの不動産屋に自宅を売却させることもできます」
「他人の口座を、調べることなんかできるのですか?」と、疑問を平山さんに投げかけてみる。
「そこは、いろいろ伝手があるので大丈夫だよ。詳細は企業秘密だけどね。弁護士の仕事は単純じゃないのだよ。法律だけ語っていても、仕事にはならないのだよ」
さすが頼りになる弁護士だ。
「叔父夫婦とは示談という形にする方がいいでしょうね。つまり刑務所にぶち込まれたくなければ、慰謝料をプラスして奪った預金を即刻全額返金しろ、お金がなければ借りてでも払え……とまあ、言葉では言いませんけど、そんな具合になっていきますね」
「金利の高いどこかから借りてくれば、返済するのはかなり大変なことだと思います。それが彼らの受ける罰になるでしょう。それに親戚が刑務所というのは、優子ちゃんにとっても、止めておいた方がいいと思う」
父さん! 優秀な同級生を持って良かったね。
……2008年3月……
平山弁護士が取られたお金を全額取り返してくれた。
叔父夫婦が払った慰謝料から、報酬分をもらっておくとのことだ。
優子ちゃんの銀行預金口座を作り、取られた預金の1500万円、自動車保険の死亡慰謝料として両親2人分の5500万、自宅の売却額の3000万で、合計1億円が入金されることになる。
「その1億円は、この家では一切使う必要はないからね」と、父さんが優子に優しく伝えている。
彼女は、申し訳なさそうにしているが、前世と違い、相馬家はお金に、まったく困っていないのだよ。
村岡のババアはネコババしたお金で、車やバッグ、アクセサリ、時計など、合計で1000万円以上使っていたみたいだ。
まったくどうしようもないネコババ・ババアだ。
1000万円もネコババしておいて「家から出ていけ」とか、どの口が言えるのか。
「夫婦そろって刑務所に入りますか?」という脅し文句に、叔父夫婦は慌ててどこからかお金を用意したそうだ。
「複数の消費者金融から借りてきたのかもしれないですね……」と、平山弁護士がさらりと言っている。
消費者金融から高金利で1000万円も借りたとなれば、借金返済に追われ、生活はかなり苦しいものになるだろう。
お金に追い回される苦しさは、俺も前世で体験済みだ。
借金返済に励みながら、しっかり反省してほしい。
それでも、夫婦で頑張ればなんとか返済できるし、刑務所に入るよりずっとマシだと思うよ。
これで……村岡のババアをギャフンと言わせることができたな。
家族全員がスッキリした気持ちになったのは、表情を見れば分かる。
ネコババ・ババア退治も終わり……
家族で食事をしながら「そういえば優子も4月から小学校だな」という話になる。
「小学校にいけば、友だちがいっぱいできて楽しいよ」とか「ランドセルも買おうね」という、両親のうれしそうな会話が続いている。
そりゃ……両親もうれしいよね、なんせ俺の時は、そういうイベントを楽しめなかったからね。
俺は……両親に迷惑かけているな。
「お兄ちゃんは、どうして小学校に行かないの?」と、優子が俺に聞く、両親も俺も無言になっている。
答えにくいな……
しかし、しかたないので前に両親に説明したことを、優子に説明する。
その話を聞いて「私も同じ理由で、小学校には行きたくないです」と、優子が申し訳なさそうに言う。
優子は俺側の人間だからな、そう言うと思っていたけどね。
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