第18話 小学校を探せ
「銀行預金に父さんの退職金がそのまま入っているから、そこから1000万円を出そう。だが300万円以上の損がでたら即刻止めるのだぞ! これは約束だぞ」
3割損したら止めるというのは、株式投資の初心者が良く言うセリフ……とにかく許可してくれて、ありがとう父さん。
「任せてくれて、ありがとうございます。ところで、父さんは証券口座をもっているの?」
「持っているよ! だいぶ前に通信会社の株を1回買っただけだ。その時に損をしたから、それ以後は1回も株式投資をしていないよ」
「後で、アカウントとログインパスワード、取引パスワードの3つを教えて下さい。それと証券口座に1000万円を入金しておいて下さい。お願いします」
「2006年の間に、できるだけお金を作るので、父さんは10F建てのビルを設計しておいて下さい」
次の日、父さんが証券口座に1000万円を入金してくれた。
パソコン画面から信用取引もできるように申請しておく。
これで準備OKだ。
実は、来年1月にラ……ショックがあるのだ。
これを利用させてもらおう。
さっそく、ラ……の株を信用取引で2500万円分空売りしておく。
……2006年1月……
前世の通り、ラ……ショックが起こり株価は大暴落する。
少しドキドキした〜!
父さんのお金は絶対失敗できないのだ!
本来は、絶対失敗できないお金で、株を買ったらダメなのだけどね……株の本なら、どれにも書いてあるよ、余裕資金でやりなさいと。
1月末近くになって、株を買い戻して精算する。
投資資金を、約1億円に増やすことに成功する。
……2006年2月……
元々人気がなかったが、少子化の影響で経営が一段と苦しくなった私立の小中一貫校を昨年の内に探しておいた。
入学試験はあるものの、受ければ全員合格みたいだし、口コミを調べても良い評価は出てこなかった。
世間の評価は悪くても、不登校志望の俺にとっては光り輝いている。
お金になりそうな入学者が、どうしてもほしい学校なら交渉の余地があるはずなのだ。
2月中旬に学校見学会が予定されている。
急いで申込みをして、さっそく母さんに見学に行ってもらうことにした。
少し疲れた表情で、見学会から帰ってきた母さんが、見学会のことを話し始める。
「経営が苦しいのか修繕費用が不足しているみたいね、昔は豪華な作りだったかもしれないけど、校舎も教室もかなり古くなっていたわ。キャンパスの豪華さに憧れるようなタイプの保護者だとスルーされると思うわね」
「もちろん授業参観もしたわよ。だけど、公立の授業とあまり変わらないと思うのよね。公立より高い授業料を払う理由が全く見当たらないのよ。高い授業料を払う理由は、教育の質だという保護者は選ばないわね」
「そんなことを考えていたら、校長を兼務している理事長さんに声を掛けられたのよ。とにかく、すごく丁寧で腰の低い人だったわよ」
「匠の言っていた交渉は、このタイミングだとピンときたの。さっそく、子供が学校に行きたくないと言うので困っています……と言ってみたのよ」
「そしたらその腰の低い校長が、揉み手をしながら、この学校はそういう親御さんもたくさん来られていますよ……というの」
「今から話すことは、寄付金をお願いできる親御さんだけにしかお伝えしていないのですが、お聞きになられますか……というのよ。どうしようかと迷ったのだけど、中味のないない話なら無視して帰ればいいと思い、先を促したわ」
「学校で配布する課題を自宅で学習して、保護者の方のコメント記入し返送してもらえば、特に学校に登校しなくても出席扱いにできます……と言うのよ」
「いかかですか? この学校は学生の個性を大事にする学校です、保護者の様々な要望にお答えできます……と、何が何でも寄付金をお願いしたいみたいなのよ。校長というより営業の人と話している気になったわね」
「その後も、匠に何とか入学してもらおうと、学校の良いところを話し始めてね。見学した範囲では、良いところなんて1つもなかったのだけど、見かたを変えれば違って見えるという説明だったわね」
「なる程、そういう子供が来る学校なのだなと思ったので、希望する寄付金の金額を確認して、もう入学手続きを済ませてきたわよ。入学試験は免除だって……当たり前の気もするけどね」
俺には理想の学校、ありがとう母さん、グッドジョブ!
お金もあるし問題なしだよ。
しかし世の中、いろんなニーズに対応したビジネスがあるものだと感心する。
母さんは、その学校は俺が卒業するまで、地震などで校舎が壊れないか心配らしい。
そんなに古い校舎だったのかな?
しかし登校しない訳だから、どんな校舎だろうと関係ない。
とにかく俺は、その学校のお陰で堂々と不登校ができる。
学校の経営難に感謝!
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