第10話 懸案事項いろいろ

お祖父ちゃんが病気で亡くなった。

父さんが後を継いでくれたので、安心して気が抜けたみたいだ。

前世のように、お祖父ちゃんの会社を父さんが引き継いで社長になる。


ところで、会社が倒産した時、借金はどれくらいあったのかな?

秋葉原の自社ビルは、間違いなく銀行の担保に入っていたと思う。

秋葉原の30坪の土地に、いったい銀行は幾ら貸したのだろう?


倒産時に、銀行と消費者金融の合計で、負債が1億以上あったかもしれないな。


将来は、秋葉原の土地に自分の会社を作りたいから、あの土地を借金の形に取り上げられないでほしい。

前世で、借金総額を聞いておけば良かった。


……2004年12月……


株式投資資金が約1億円にまで増える。

やった〜、これで悲惨な未来は何とか回避できる。 

しかし倒産時に借金がいくらあったのかが分からないし、もう少し増しておいた方が安全かな。


しかし、昨年までのように、お金、稼げ、増やせと焦らなくても良くなったことは確かだ。

5歳児の俺、良く頑張った、君は偉い! 

今後も株式投資は続けるが、自分の技術レベルを高める方にもっと注力しよう。


……2005年4月……


ソフトの会社のサ……を、1億円で買えるだけ買う。

金額が大きくなったので、前のように成り行き一発で買う訳にいかなくなった。

株価がぶっ飛んでしまわないように、3日ぐらいかけて慎重に買っていく。


1億円分の株式を買っても、ノーリスク投資だから気楽だ。

場を乱さないように売り買いすることに注意するだけだ。


今となっては、始めての株式投資で、ネット株のデ……の株を40万円で目一杯買った時が懐かしいな、あの時は本当にドキドキした。


それにしても父さんの会社は、相変わらず上手くいってないようだ。

考えようによっては、2008年のリーマン・ショックまで、倒産しなかったのは、父さんが頑張ったお陰とも言える。


……2005年8月……


買った株が値上がりしている。

このままいけば、年末には投資資金が6.4億円になるだろう。

売るときも、場を乱さないようにしなくてはならない。


6.4億円あれば、たとえ父さんの会社が、どんな酷い状態で倒産しても問題なしだ。

これで悲惨な未来は回避できたということで良いだろう。


父さんの会社が倒産した際の負債総額は、最大でも1億を超えることはないだろう。

あの秋葉原の狭い土地が1億の価値があるとは絶対思えない。

銀行が秋葉原のボロビルの資産価値以上に、お金を貸すはずがないからね。


安全圏まで逃げ切った……バンザーイ!

転生した意味があった、転生して良かった。 

お金を稼げ、増やせに追われる生活もこれで終わりだ。


そうなると、次に解決しないといけないのは、俺が小学校に行きたくない、6年間全部不登校にしたい問題だ。

近所の同年代の子供たちは、当然のように来年の4月から、近所の小学校に入学する。

今頃は、ランドセルでも買ってもらって大喜びしているはずだ。


行きたくない……やっぱり……行きたくない……


こうなったら入学式だけ登校し、6年間は体調不良で不登校にするしかないか。 

しかし、そういうのは日本で可能なのかな?

学校に行く前から、それでいいでしょうか……とは、さすがに聞けない。


頭が良すぎて学校に行きたくない子供は、日本にも少なからずいると思うのだが、そういう子供は、一体どうしているのかな?

何か上手い方法を考えないといけないな。


それと、もう1つの懸案事項……


自分の将来を考えないといけない。

オール不登校の先に、安定したサラリーマンの道はない。

起業して、自分の会社の儲けで死ぬまで食べていかないといけないのだ。


起業なんかしないで、6歳から死ぬまで、5.4億円を食いつぶしながら、ずっと引き籠もるという選択もあるが、それはさすがに選択したくない。

幸せな人生とは思えない。


そうなると自分の会社を起業する以外の選択肢はないのだな。


父さんの会社の倒産対策に、6.4億円から1億円使ったとしても5.4億円が残るが、この万年不景気の日本で起業するなら、もう少し資金があった方が安心だ。

父さんの会社が倒産しなくても、自分の会社が倒産したら何にもならないからね。


であれば株式投資でもう少し資金を増やさないとダメだ。


資金を増やすなら、来年の2006年は、ラ……ショックがある。

信用売りができるなら、1ヶ月で手堅く4倍ぐらいにできるのに残念だ。


代わりにゲーム会社のニ……を、6.4億で買えるだけ買っておけば、2007年まで保有すれば7倍ぐらいになる。

それくらいあれば起業して、ビジネスを2回くらい大失敗しても大丈夫だろう。


……2005年11月……


証券会社の口座の残高が6.4億円になる。

これで、倒産対策の目処はついた。


準備はできた。

「会社を畳みましょう」と、父さんを説得しよう。

もしも説得が聞き入れられなくても、会社が倒産した時に、お金ならあるよと言えば済む。

しかし、それは最後の手段にしたい。

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