第9話 設備工事会社に入社
……2003年9月……
父さんが、お祖父ちゃんの設備工事会社の営業部長になる。
社員12人ぐらいの会社だから、肩書なんかあまり関係ないのだけど、父さんは名刺の部長という肩書に喜んでいるみたいだ。
最近は、お祖父ちゃんと一緒に営業に回っている。
「営業という仕事は、知らないことがいっぱいで、毎日が新鮮で楽しいよ」と、父さんは喜んでいる。
それじゃダメだ……
父さんが勤務していた大きな会社と、今の小さな会社は違う。
仕事が受注できなければ、小さい会社は直ぐに経営に影響が出る。
数ヶ月も受注がなければ倒産だ。
毎日が新鮮で楽しいだとか、大きな会社気分は止めた方がいい。
そういえば、社員が良い人ばかりで、転職して本当に良かったと言っている……
父さんが良い人と思っている社員たち、本当はどんな人間なのか俺は知っている。
騙されているのだよ!
……2003年12月……
さすがに利確するまでは、ドキドキだった。
投資資金40万円が480万円に増えた。
とにかく、やったぜ、始めての成功!
よくやった俺!
だけど、会社の倒産まで約6年しか残っていない。
480万円では、まったく足りない。
急げ、稼げ、金増やせ!
母さんは、俺が株取引をしていることを心配に思っているようだ。
「匠! 株式投資はいいところで止めておきなさいよ。世の中は株で損した人ばかりなのよ」
普通なら母さんの言うことは、まったく正しい、正論だ。
株式投資で、短期に荒稼ぎできる人なんか、ほとんど存在しない。
「あまり負けないうちに止めておきなさいよ」と、今日も母さんから言われた。
だけど、40万円の株式投資リスクなんて、6年後にやってくる倒産、破産に比べれば、
……2004年1月……
リチウム電池の会社の……研究所を480万円で買えるだけ買う。
投資資金も少ないので、ポンと成り行き注文だ。
もう昨年のように「ひょっとしたら、記憶した値動きと違う値動きにならないだろうか」と、ドキドキするようなことはない。
株式投資が、ノーリスク・ハイリターンで稼げることが分かると、最近では早くお金が増えてくれ、投資効率はどうだとか思うようになってくる。
未来を変えるために、資産が1億円に増えてくれ、早く俺を安心させてくれ!
信用取引ができるなら、3倍まで買えるのに本当に残念だ!
とにかく最速で増やしていこう。
……2004年7月……
リチウム電池の会社に投資した資金480万円が1150万円に増える。
でも1150万円では、まだ全然足らない。
この頃、日本経済は本当に低迷している。
父さんが、ビールを飲みながら「仕事がまったく受注できない。でも頑張るぞ……家族のために……社員のために〜」と、母さんに話している。
「私もパートの仕事頑張るからね」と、母さんが父さんを励ましている。
「実は、40万円は1150万円に増えています。だから少し安心していいよ!」と、もう少しで言いそうになる、しかし今は黙っておいた方がいい。
1150万円程度を、あの設備工事会社に注ぎ込んでも何の足しにもならないから。
社員の給料に消えるだけだ。
しかも、あの碌でもない奴らの給料に……
父さん! 不景気な業界で頑張っても意味がないと思うよ……早く会社を畳もうよ。
……2004年9月……
音楽の会社のオ……を、1150万円で買えるだけ買う。
買ったら持っておく、売り時がきたら売る。
ただ、それだけだ。
したがって1日の殆どの時間は、インターネットを利用した勉強に使っている。
設備工事会社の倒産に備えて、お金を稼がないといけないけど、自分の会社を作るために、俺の知識や技術力も上げておかないといけない。
会社の売り物は、自分の知識と技術しかないからね。
英語はもう十分なレベルになってきた。
技術力と英語力を向上させるため、英文で書かれた技術系の学術論文を理解できるまで精読している。
CNNのニュースなどは、問題なく聞き取れるようになってきた。
スピーキング能力については、ネイティブと対話したことがないから実力の程は分からない。
多少の不安はあるが、大丈夫な気がする。
数学の知識も向上して、学術論文に使われる理論式もほとんど理解できるようになってきている。
今は知識の幅を広げるために、いろいろなジャンルの技術系学術論文を読んでいる。
来年あたりは、その中から自分の得意分野にする分野を絞り込む必要がある。
将来は、その絞り込んだ分野でビジネスをしていくことになる。
ギフトでもらった頭脳は本当に優秀だ。
学術論文をどれだけ読んでも疲れないし、読んで理解した論文はキッチリと脳に整理されて記憶される。
知識量が増えるにつれて、記憶された知識をベースにした、新たなアイデアや理論がどんどん浮かんでくる。
前世の頭脳が50ccエンジンなら、今の頭脳は5000ccのエンジンかな、坂道もスイスイ登るし、運転していても全然疲れないというイメージだ。
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