第7話 株式投資しかない2
「証券会社の手続きは、僕がやるから心配要らないよ。証券会社からの書類が家に届くと思うけど、父さんには、母さんが積立貯蓄を始めたとでも言っておいて下さい。それと僕名義の銀行口座も作って下さい。銀行用の印鑑も買ってほしいです。よろしくお願いします」
「分かったわ。だけど一つだけ約束してほしいわ。40万円がなくなったら株式投資は終わりよ。いいわね、絶対よ、約束よ!」
匠が、株式投資をやりたいと言い出すとは思わなかったわ、少し心配だけど、匠なら社会勉強と割り切ってやらせてみるのもいいかもしれない。
匠は普通の子供じゃないし、経験に勝る勉強はないと思う。
それから1週間後、母さんが銀行印を作ってくれて、都市銀行に俺の口座も作ってくれて、パソコンを操作し易いようにと、幼児用の玩具みたいなテーブルも買ってくれた。
幼稚園の件も、父さんを説得してくれた。
後は、お金を増やせばいいのだ!
まず母さんの証券口座開設申請をする。
必要な書類をやり取りして、母さんの証券口座をネットで開設したら、次に子供用の口座も開設する。
後は、証券会社と必要な書類をやり取りすれば開設できる。
俺の口座は、数週間もすればネットで株の取引が可能になるだろう。
しかし子供の口座では、信用取引はできないみたいだ。
信用取引を使えないと現物取引だけになるから、40万円からお金を増やしていくのはかなり時間がかかりそうだ。
母さんの口座で株取引をやってもいいのだけど、後のことを考えると、俺の口座で株の現物取引をする方がいい。
株式投資は頭が良くても勝てない、株価は頭が良い人の理論通りに動いてくれないからだ。
欲と恐怖、政治、戦争……を、数式化するなんてできない。
普通の人で、年に6%も資産を増やすことができれば上出来なのだ。
ところで前世では、何か金儲けのヒントはないかと、新聞や経済誌を必死で読んでいた。
金儲けを考えている間はだけは、幸せな気持ちになれたからね。
経済誌には『昔、この株を買っていたら今どうなっていたか』というような特集記事が、時々掲載される。
そこは何度も、何度も読んだ。
読むと自分が儲かった気がして、楽しくなったからだ。
読者をワクワクさせてはくれるが、その記事が株式投資に役立つことはない。
しかし俺のように、過去に転生した人間には大いに役に立つお宝記事となる。
未来の株の値動きが分かれば、株取引で100%負けることはないからだ。
もちろん、前世で死んでしまう2013年までの期間限定となるけどね。
天才の頭脳にしてもらっているから、前世で読んだ記事の内容やチャート、相場の天井と底の株価を直ぐに思い出すことができる、これが実に便利だ。
……2003年3月……
まだ株は買わない、それは、そうだよ。
まずは、前世の記憶した株価の動きと、証券会社が提供するチャートを見比べて、前世の記憶が合っているかを、検証する必要がある。
株価の動きが前世と違っていたら、お金を増やすどころか、40万円なんか直ぐに半分になってしまう。
検証した結果、記憶していた日経平均の値動きも、経済誌に取り上げられていた銘柄の値動きも、昨年の値動きは記憶と同じ動きをしていたし、今年も今のところ日経平均の値動きは、記憶した値動きと同じだ。
つまり前世の記憶に基づいてトレードすれば、100%勝てることを確認することができたのだ。
4月になったら、まるっきり株価の値動きが違うという可能性がないわけではないが、株式投資でしか、お金を増やす方法がない、勝負するしかない。
試しに、前世の記憶に基づいたトレードを少額で短期に何回かやってみる。
トレードの練習だ、とにかく失敗できないからね。
準備は万端だ。
2003年4月……
4月がやってくる。
前世の記憶で、2003年に急上昇していたネット株のデ……の株を、投資資金40万円で目一杯購入する。
今更、前世の記憶と違う値動きをしないでくれよ!
これしかお金を増やす方法がないのだから。
ドキドキする、とにかく失敗しないでくれよ。
上がってくれ頼む。
株式投資でお金を増やせなかったら、悲惨な人生一直線、何のために転生したか分からない。
さすがに心配だから、数日間ぐらいは証券会社が提供するチャートの動きをずっと見ているから、目がショボショボしている。
値動きは記憶と同じだが、ひょっとしたら……とか、ついつい心配になってしまう。
しかし、このまま決済日まで毎日株価を眺めていてもしかたないと思い、10月近くになるまでは証券会社の取引画面は開かないことに決める。
株価は、見ないと決めた以上、絶対見ない。
前世の記憶通りに株価が動けば、40万円が15倍の600万ぐらいになるはずだ。
もちろん税金を引かれるから、手取りはそれより少なくなるけどね。
もちろん600万円では、全然足らない。
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