第14話
うわあ。
やっば、京香がきたよ。ほぼ裸の生徒会長と二人っきりでいるところに、京香がやってきた。そんで、俺たちをめっちゃ見てる。よくこの場所がわかったよな。
ああっと、これはマズいぞ。絶対勘違いされてるって。きっと生徒会長に対して不埒な所業をいたしているんだと思われるな。
「いや、京香、これは違うぞ。俺はべつに生徒会長といかがわしいことなんてしてないって。ほ、ホントだよ。ただ俺は、なんだ、そのう、だからボナパルトがさあ」
ボナパルトって誰だよ。自分で言ってて、わけわからん。なんか世界史の教科書がとっさに頭に浮かんださ。
「なにキョドってんだよ、恭介。餡子のニオイを嗅いでたんだろう」
「えっ」
ふつうだよ。
ごく普通の反応だ。怒ったり怪しんだり疑ったりしてない。まったくの平常心で、その平ら具合が、あきれるほど平常な京香だよ。
「うっわ、臭っ。この制服、相変わらずヒドいニオイだってさ」
京香が餡子のセーラー服を拾って、臭いを嗅いで、オエーってやってるわ。
「まあ、この臭いの調合はわたしがしたんだけどさ、はは」と京香。
「ええーっと、そのう、どういうこと」
説明が必要だぞ。ぜひとも説明がほしい。
「餡子がへんたいに襲われないように、激臭作戦を考えたのはわたしだってこと。だってさあ、こんなに可愛くてオッパイが大きかったら襲われちゃうでしょう。な、餡子」
「文谷さんにはお世話になっています。戦術の天才で軍師なんですよ」と生徒会長。
「だからさ、ほんとうの餡子は不潔じゃないんだよ。もし本来の自分を知ってもらいたかったら、制服脱いでニオイを嗅いでもらえって言ってるんだ」
それ、女子には有効だけど、男子には明らかに勘違いされるぞ。襲われても文句が言えないレベルだって。軍師として、どうなんだレベルだ。
「でもなあ、臭すぎて迷惑になるから、昼飯時には教室を出て行かなきゃならないってアドバンテージがあるんだよ」
いや、京香、アドバンテージの使い方が間違ってるぞ。むしろ逆だからな。おまえ、ほんとに成績優秀者なのか。じつはアホなんじゃないのか。
「気にしてませんよ。私の昼食は、教室で食べるには目立っちゃいますし」
「そういえば、今日はなに食ってんだよ」
京香が大なべの中身を、さも意地汚く覗いているよ。
「きょうはおでんです。文谷さんもどうですか。もちろん、お兄さんも」
「食うよ食うよ。やっぱさあ、パンとくさい棒だけじゃ、腹の中がスカスカして物足りないもんな。ほら、恭介も遠慮するなよ。せっかく餡子がくれるっていうんだからさあ」
おでんを食べられるのはラッキーだけど、たしかに教室で食べるのは斬新すぎる弁当だ。
「いま、温めますので」
しかも、電磁調理器で大なべを温めてるよ。ここって、校舎の非常階段のちょうど陰になってる部分で、見えないとはいえ、こんなんやってていいんか。
「この調理器は調理実習室から借りてきました。火を使わないので、校則違反にはなりません。電気は延長コードでばっちりです」
親指を突き出して、キメ顔しなくていいよ、生徒会長。
「あのう、立花さん。とりあえず服着たほうがいいよ。そのかっこうじゃあ」
ブラとパンツだけで、巨乳のホームレス生徒会長がおでんを温めている絵面がアヴァンギャルドすぎて、俺の頭がおかしくなりそうなんだ。
「ああ、でも、その服を着てしまったら、悪臭でおでんが台無しになってしますよ」
「そうだよ、恭介。多少裸でも、今日は暑いからさあ、問題ないっしょ」
「いや、あるっしょ」
アホだろう、京香。そういう温度的な問題じゃないぞ。
「それなら、あんたも脱げばいいんだよ」
「いやいやいや」
おでんを食べるために、なして裸になる必要があるねん。
「じゃあ、わたしも脱ぐわ」
いやいやいやいや、
だから、どうして京香まで服を脱ぐんだってさ。
「よっこいしょ」
わああああ、
ホントに脱ぎやがった。生徒会長と同じく、ブラとパンツだけになりやがった。しかも、すんごくスタイル抜群だ。
昨日のキャミソールでなんとなく知ってたけれど、立花さんとはまた違ったナイスバディーだ。
「はい、おでんが温まりましたよ」
「うっほう、うまそう」
ブラとパンツだけの激カワ女子たちが、校舎の隅にて嬉々としておでんを食おうとしてる。これさあ、企画ものAVだろう。
「ほら、恭介も脱げよ。あんたがパンツ一枚にならないと、おでんが食べられないだろう」
なんでそうなるのかさっぱり意味不明だが、ええーい、こうなれば俺も男子だ。こんな喜ばしい状況が嫌いなわけはないだろう。
それっ、パンツ一枚になったぞ。どうだ、女子たちよ。
って、おでん食ってるし。二人してハフハフ言いながら、おでんを美味そうに食ってるじゃんか。このクソ暑い中、おでんに夢中だよ。
「ほら、パンツ一枚で突っ立ってないで、恭介も食えよ。へんたいなのか」
京香に言われたくないわ。誰のせいで裸になってるんだよ。
「うめえ、このおでん、すっげえ美味い、おっひー」
京香が大声出して喜んでるよ。文谷家にとって、おでんはごちそうだからな。牛筋やウインナー、タコ串まであるし。なにげに具材が豪華だ。
「これはね、銭湯で売れ残ったのだけど、賞味期限的にはまったく問題がないんだよ。昨日の夜にもらって、調理実習室の冷蔵庫に入れといたから保管もばっちりだし」
銭湯って、おでんも売ってたんだな。いったい、どのタイミングで食べるのか謎だけども。しかも、学校の調理実習室に保管って、それは夜中に忍び込んだことになるよな。生徒会長のくせして、やってることが校則違反過ぎるだろう。つか、犯罪者のレベル。
「このおでん、めたくそ美味い」
ほんと、激ウマだ。大根に味がしみしみだよ。いいカツオ出汁使ってるなあ。
「たくさん食べてね」
うんうん、たくさん食べるよ。大なべに山盛りだから、三日分くらいのカロリーを摂取しよう。しかも、下着姿の女子を見ながらな。
「にしても、たくさんありすぎるなあ。私たちだけで食べきれないよ。ねえ餡子、熱海も呼んでいいかな」
「うん、みんなで食べたほうが美味しいし」
「ちょっくら、呼び出してみるか」京香がポチポチやりはじめたぞ。
ああーっ、なんだよ。
「京香、スマホもってんのか」
京香がケイタイを持ってるってどういうことだ。貧乏人には許されないアイテムだぞ。それ、課金ガチャ地獄だからな。
「あったりまえじゃん。これだけは最優先だよ。パンツとブラがなくても、これは必要だってさ。なんのために新聞配達がんばってるとおもってんの」
いやいや、パンツとブラの方が大事だろう。しかも、新聞配達はそのためかよ。感心して損した気分だ。
それよか、そのパンツとブラでウンコ座りしながらSNSしてる京香の姿が、絶妙にエロいぞ。
い、いけない。ついつい見入ってしまった。ブラとパンツだけでウンコ座りしている激カワ女子が、これほどまでに破壊力があるとは思わなかった。危うく、俺の一部が反応してしまうだろうよ。
そうだ、こっちを向けばいいんだ。京香を見なければすむだけの話しじゃん。
「うっ」
って、こっちには生徒会長が、同じくウンコ座りしながらおでん食ってた。巨乳の谷間がなんとも言えず、エロすぎる。
もうなんだよ、これは。俺って、めっちゃ幸せ者じゃんか。
「ねえねえ、おでんあるってマジ」
「そうそう、おでんおでん。るんるん」
さっそく熱海が駆けつけてきたぞ。学級委員長まで一緒だ。たのむから、おでんの鍋に毒キノコは入れるなよ。
「うわっ、なんでみんな裸?、てか裸族?、動画?、生配信?」
いや、これには事情があるんだよ。けして、いかがわしいことをしていたんじゃないぞ。
「まあ、餡子がいるなら裸だよね」
「そうそう。裸が基本ね」
生徒会長と昼飯食う時には、制服脱ぐのがデフォなのかよ。まあ、女同士なら納得か。
「私も脱ぐ。暑いしさあ」
「そうそう、私も」
ああああああー。
熱海と委員長がセーラー服を脱ぎ脱ぎして、ブラとパンツだけになったおう。
熱海はスレンダーだけど、尻がぷるっぷるでエロい。委員長は意外や意外、巨乳だぞ。生徒会長ほどではないが、隠れ乳デカだあ。生徒会長→学級委員長って、乳のデカさが役職順だよ。
なんだよ、この状況は。
ほぼ裸の女子に囲まれて、学校でおでんを食う俺って、なんなんすかねえ。
盆暮れ正月、ハロウインに感謝祭にコンクラーベが、この時に凝縮されたみたいだってさ。いまの俺って、一生分の運を使い果たしてるんじゃないか。
「あは、このおでん、うんまいや」
「そうそう、うまうま」
新たに参加した二人のほぼ裸女子も、同じくウンコ座りしておでんを食ってるさ。
だからね、君たち。その姿勢は性風俗的に問題があるとおもうんだよ。男子にとってはね。
「恭介っち、箸がすすんでないよ。せっかく餡子がもってきてくれたんだから、たくさん食べたほうがいいよ」
「文谷君、これは不潔なものでないから、お腹いっぱい食べても大丈夫だよ」
生徒会長が心配そうな顔して俺を見つめてるけど、巨乳が膝に押しつぶされているウンコ座りは、マジでさあ、ヤバいって。
もうさあ、どうしてそんなにパンツがちっさいんだよ。みんなのパンツがちっさすぎるって。通報するぞ。
「そうだよ、恭介。家に帰ったって晩飯は期待できないんだから、いまのうちに食いだめしとけよな」
食い溜めよりも、エロ溜めだよ。どんなヘブンなんだ、ここは。
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