第5話

「恭介君、そのう、ご両親さんはどこにおこうか」

「えっ」

「だってほら、やっぱり遺骨は粗末にしてはいけないじゃないの。お墓とはあるの」 

 そういえば、墓はあるんだった。

 前に父さんが墓を買ったからって、連れていってくれたことがあった。ここからはちょっと遠いけど、佐々木家の墓はあるんだよ。

「お墓はあります。でも、ちょっと遠いです」

「じゃあ、週末にでもいって納骨しましょう。それまでは、ご両親さんには申し訳ないけど、この窮屈な家で我慢してもらうね」

「狭いながらも、いい我が家だよ」

 京香が、サムズアップで自慢する。

「さすがに居間は失礼にあたっちゃうね。私たちの部屋でくつろいでもらいましょう」

「わたし、テーブルだしてくる」

「な~んまんだ~ぶ~」

 お母さん、いい人だなあ。京香もちょっとキツとこあるけど、気が利くなあ。

「ごめんなさい。うちにはお線香がないの」

「いいです。父も母もあんまり信心深くはなかったし」

「それじゃあ、わたしたちは寝るけど、恭介は男だから居間だよ」

「わかってるよ。それと寝るときは父と母の遺骨はそばに置いときたいんですけど」

 さすがに、この人たちが寝ている枕元に遺骨をおけないからな。

「そうね。納骨するまで、寝るときは居間にもってきておきましょう」

「ありがとうございます」

「おやすみなさい、恭介君」

「また明日な、恭介」

「おや~すみな~」

「今日はどうもありがとう。おやすみなさい」

 くっ。

 眠れん。

 さすがにいろいろあり過ぎて、眠れるわけない。

 隣に、可愛い女子高生と美幼女と美熟女が寝てるので、なおさら眠れない。

 ああ、なんだかなあ。

 父さん母さん、死んだんだな。あんまり実感ないや。いまにも帰ってきて、勉強しろだの歯を磨けだのって、うるさく言われそうだ。はは、死んじまったら小言もなしだな。

 なんか泣けてきた。ちくしょう、涙が止まらない。可愛い女子が隣で寝てても、涙が止まらないよ、こんちくしょう。

「ぐひゃ」

 な、なんだ。

 なにかが俺の顔を踏んづけたぞ。

「ちっこ、したいの~」

 なんだ、亜理紗か。トイレに行きたいのか。

「トイレは向こうだよ」

「おべんじょ、こわいの~」

 一人でいけないのかよ。仕方がないなあ、一緒にいってやるか。

「ちっこしたか」

「ん~、ちた~」

 ふう、幼女のシッコが無事に終わったよ。

 奥の部屋からトイレに行くには、居間を通らないとならないから、亜理紗が毎晩オシッコをすると、毎度毎度顔を踏まれるのか。一年続くと、顔の形がなくなってしまうのではないか。

 まあ、そんなことを心配したってしょうがないから、寝るしかないか。それっ。

 くーぴーくーぴー。

「ぐひゃげ」

 なんか、強烈に重たいものが俺の顔をふんづけているんだけど。

「どっわ」

 なんか俺の体に乗っかってきた。寸前のところを両手で押さえているけど、すんごい柔らかいぞ。なんだこれ、暗くて見えんが、たぶんバラ肉チャーシューか。

「オシッコ」

 うわあ。

 京香じゃないか。寝ぼけて俺の顔を踏みつけたうえに、すっ転んで倒れたんだな。

 とすると、このトロ豚チャーシューのようなのは。

 うおおお。

 お、オッパイじゃないか。俺がつかんでいるのは京香のオッパイだ。

 モロにつかんじゃってるぞ。ど、どうしたらいいんだ。とりあえず、宅配便にでも頼むか。おっぱいを、どこかに一時退避させればいいんじゃね。

 いやいや、わけわからんだろう。

「オシッコしたい」

 こいつ、まだ寝ぼけているようだから、とにかくトイレに連れていこうか。

ほらほら、鬼さんこちら。その辺で洩らしちゃあ、だめだぞう。

「ああ、すっきりした」

 すっきりした顔してるな。もう寝ろよ。

「あれ、なんで恭介がトイレの前にいるんだよ」

「はあ?京香がトイレいきたいって言ったんだよ」

「ああー、さてはあんた、わたしがオシッコするところを、のぞき見しようとしたんだな。このへんたい」

「そんな趣味なんてないぞ。ヘンタイ呼ばわりはやめろよな」

「どうしたの二人とも。トイレの前で」

 マズい。今度はお母さんまで来ちゃったよ。

「恭介がさあ、わたしのトイレを覗くんだよ」

「違うって、誤解だって」

「京香、減るもんじゃないんだし、ちょっとぐらい見せてあげなさい」

 お母さん、それは明確に間違ってるよ。寝ぼけているんだと思うけど、絶対に間違ってるって。ファイナルアンサーとしても不正解だよ。

「わかったよ。だけどちょっとだけだぞ、恭介」

 納得するのかっ。

 この親にて、この子ありだ。

「う~ん~ち~」

 おいおい、また亜理紗がきたぞ。今度は大きいほうをしたいようだ。

「亜理紗がするからまた今度な、恭介」

「お、おう」

 ふう。

 なんとか人生初の覗きは回避された。あぶなく、ヤバい男になるところだった。この家は危険だぞ。

「亜理紗のは、ダメだからな」

 するかっ。

「恭介君、恭介君」

「なんですか」

「次、私だから、なんだったら覗いてもいいわよ」

「いや、いらないです。もう寝ますんで、ではまた明日」

 寝た。いつの間にか、ぐっすりと寝てしまった。

 

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