第6話 京太郎とバーサーカーの戦い

ちゃんが変換された戦士は左腰に短剣を装着し、右手に黒光りする筒状の洋弓らしきものを持っていた。


京太郎は黒い鎧のバーサーカーと対峙し、今日子と恭美は二体のターミネーターに立ち向かった。


一体のターミネーターにちゃんが洋弓を放った。


凄い轟音と共に筒状の洋弓から放たれた矢は超合金をものともせず、ターミネーターの頭部を射抜いていた。


ターミネーターは中枢部の基盤を射抜かれ、動きがぎくしゃくし出した。


そこに二の矢、三の矢が撃ち込まれ完全に動きが止まってしまった。


残る一体のターミネーターからは微妙な匂いが漂ってきている。


これは、今日子が放った匂い玉の匂いだ。


「このターミネーターが第一号のボンボンヤーよ」


そう言って、今日子は大股を開き、腰を落として頭上に忍刀を掲げ、その先端に左手を添えている。


これは忍法の突きの構えである。


忍刀は普通の日本刀と異なり、反りがなく、しかも小太刀である。


つまり、斬るよりも突きに特化した刀である。


今日子は「チェェェェェェ!」と気合を発して、刀にエネルギーを充填した。


たちまち、刀は金粉をまき散らしたかのように黄金色に輝きだした。


恭美も股を開き、腰を落として、刀を頭上に構えて同じようにエネルギー充填の気合を発していた。


今日子がターミネーターの左に回り、繰り出してくる拳と腕に忍刀を突き刺した。


するとエネルギー充填の威力か、忍刀が超合金を貫いていた。


「チェェェェェェ!」の気合と共に幾度となく腕を貫いているとターミネーターの左腕の配線の一部が切れた。


恭美も気合と共に右腕を突き刺していた。


ターミネーターの左腕が自由に動かない。


焦ったターミネーターは、慌てて、逃げ出し、小さくなって巨大な樹木の後ろの陰に身を潜めた。


しかし、今日子の嗅覚はごまかせない。


「ここよね」と今日子と恭美が目を凝らして見ると、ターミネーター、否、ボンボンヤーは枯れ葉そっくりの蛾のように、否、それ以上に樹皮に完全擬態して隠れていた。


「見つけたわ、これね」


「突き刺してぶっ壊してやろうか」


二人の会話を聞いてボンボンヤーが元の姿に戻って「それだけは勘弁してください。ロボットにも命があるのです」とわけの分からないことを言い出した。


「はぁ? 戦いに敗けたのだからいさぎよく壊れなさい」と今日子が言った。


「許してください。わたくし、これからはお二人の家来になります。遠慮なく、こき使ってやってくださりませ。お願いします」


「家来になるですって。それって、信用できるの?」


「できます、できます。左腕が動かなくなったロボットなんて、役立たずなので、帰還しても破棄処分されるだけです。ぜひとも、家来にしてくださりませ」


こうして、ボンボンヤー一号は、桃太郎のイヌ、サル、キジのように、今日子と恭美の家来になった。


黒い鎧のバーサーカーと対峙した京太郎は秘剣天狗丸を駆使してピョンピョン跳ねていた。


バーサーカーのギザギザ剣は驚くほど素早いし、斧も驚くほど早く振り下ろされるし、しかも、重いとくる。


忍刀のような小太刀ではまともに戦えない。


そこにターミネータ―を倒した今日子が駆けつけた。


今日子の第三の眼が黒い鎧を通してバーサーカーの本体を霊視する。


今日子が大声で叫んだ。


「こいつの正体は昆虫よ! 楕円形のやや垂れ下がった大きな目が見えるわ。口も口吻こうふんよ。汁を吸うのに適した口先をしているわ」


(昆虫? 爬虫類じゃないのか? どちらにせよ生き物なのだな)


そうと分かれば話は早い。


京太郎は左手を突き出し、その手のひらから霊力を照射した。


ズーン! 目に見えないエネルギーがバーサーカーの肉体を貫く。

バーサーカーがわずかによろめいた。


恭美も駆けつけて、四本指を揃えてシャー! と霊力を照射した。

バーサーカーがさらによろめき始めた。


京太郎は刀にエネルギーを充填し、薩摩示現流のように大上段に構えて踏み込み、「キェェェーイ」という猿叫えんきょうを挙げて打ち下ろした。


肉を斬らして骨を断つ式の特攻戦術だ。


バーサーカーの鎧が真っ二つに切り裂かれ、中から茶色いモノが現れた。


それは、確かに昆虫だった。

楕円形の大きな目を持ち、口先が尖っている。


「ウオオオオオ」バーサーカーが最後の力を振り絞るようにギザギザの刃を振り下ろしてきたが、もはや、最初のような勢いがない。


京太郎は振り下ろしてきた腕を下段の構えから、上に跳ね上げてバーサーカーの腕を斬り飛ばしていた。


そこに、洋弓から放たれた矢がバーサーカーの肉体を射抜いた。


これで、もう終わりだろう。


京太郎はバーサーカーの首を鎧ごと斬り飛ばした。


すかさず、きゅんが飛んできた。


物も言わず、切り口に腕をつっこんで心臓をえぐり出し、引き裂いた。


しかし、バーサーカーはバケモノではないので、心臓の中にはなにもなかった。


(あっ、こいつはバケモノじゃなかったわ)と気づいたきゅんはぐしゃぐしゃになった心臓を投げ捨てた。


血まみれになったバーサーカーの心臓が無造作に転がってゆく。


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