第4話 うずまきクネクネ&ボンボンヤー&ターミネーター

うずまきクネクネは恐竜を見て、少し驚いた顔をしたが、(なんだ生き物か)と分かるとあたりをキョロキョロと見渡した。


(絶対に恐竜だけではない。これを召喚した奴らがいるはずだ)


その隙を狙ってきゅんが恐竜の背に飛び乗った。


その瞬間、クネクネの首が蛇のように、文字通りクネクネと伸びて恐竜に噛みついた。


「ガォォォォォ」驚いた恐竜は叫んで尻尾をクネクネにぶつけたが、この程度の肉体的衝撃にたじろぐわけもなく、さらに恐竜の顔を締め付けて窒息死させようとしていた。


きゅんは恐竜の頭に移動して、頭をなでながら呪文を唱えた。


すると、恐竜が変身した。


背びれが伸び、青白く光り出した。


それを見て今日子が叫んだ。


「見て! 恐竜がゴジラに変身したわよ」


「キャー! ゴジラになった! ゴジラよゴジラ」と恭美も大騒ぎしている。


変身を感じ取ったクネクネの耳がうさぎのそれのように大きくなって長くなり、二つの耳の間に渦巻きが出現した。


ゴジラが「ウォォォォォ」と吠えるとともに、その口から青白い熱射線が放出された。


渦巻きから放たれた衝撃波が熱射線を迎撃する。


「あっ、熱射線が弾き返された」


今日子が残念そうに言うと、恭美も「熱射線は連続では撃てないのよね。危ないわ」と言っていた。


(まったく)と京太郎はあきれ顔で呟いていた。


「どうしてこんなにゴジラに詳しいのだ」


ゴジラのエネルギーが充填されると再び背びれが青白く光り出した。


それを見たクネクネがゴジラの顔に噛みついた。


ゴジラの顔がわずかに右に動き、発射された熱射線は教会に向けて放たれた。


BAAAAANという衝撃音と共に教会は木っ端みじんとなり、煙を残して消滅してしまった。


これでは、ゴジラに勝ち目はないと踏んだ京太郎は天狗丸を使って大ジャンプをしたが、クネクネの渦巻き衝撃波を食らって吹き飛ばされてしまった。


それを見たちゃんが魔法の杖を渦巻きめがけて投げつけた。


杖は渦巻きに命中し、GoooooNという大音響を残して杖も渦巻きも消し飛んでしまった。


「いまね」

「いまよ!」


恭美がジャンプし、そのお尻を今日子が蹴上げていた。


恭美は大きく飛び上がってクネクネの首を斬り落とすのに成功していた。


しかし、油断はできない。すぐに再生してしまうからだ。


クネクネは一時退避をするためか巨大な翼を羽ばたき始めた。


「逃げるわよ」今日子が叫び、その叫びに呼応したかのように、京太郎が両の掌を向けて、エネルギー弾を発射した。


ズーン! という低周波音を残してエネルギーが放射され、クネクネの片翼が消し飛んだ。


クネクネはきりきり舞いをするように落下したが、すぐに片翼を修復させて羽ばたいていた。


そして、ゴジラの顔に爪を立て、そのまま飛び去ろうとしていたとき、長剣を振りかざしたちゃんがゴジラの背を駆けて飛び込んできた。


ちゃんはクネクネの顔を斜めに切り裂いた。


その斬り口を狙ってゴジラが吠えた!


満を持してその斬り口に熱射線を放出した。


クネクネの顔が消し飛んだ。


それでも、顔が無くなっても首はクネクネ動いている。


しかも、頭部の負傷などどこ吹く風とばかりに羽ばたき始めている。


「逃がしちゃダメよ」恭美が叫んでシャー! とエネルギー弾を片翼に撃ちこみ、京太郎もズーン! とエネルギーを残った片翼に照射した。


両翼にダメージを受けた、顔が斜めに斬り裂かれたクネクネの首をめがけてちゃんが飛んだ。


まさに、総力戦だ。


クネクネ唯一の飛び道具である渦巻きが破壊されているので、クネクネの手段としては逃げる他ないのだが、寄ってたかって斬りきざまれ、撃ち抜かれ、最後にはちゃんの長剣によって首が刎ねられた。


きゅんは素早くゴジラの頭部から飛び降り、クネクネの胸部を切り裂いていた。


そして、遂に、クネクネの心臓を取り出した。


「ふわぁ~。ようやく心臓を手に入れたわ」


心臓にはイチゴが三つ入っていた。


「これでお兄ちゃんと同じ数のイチゴが食べられる」


きゅんは大喜びしていたが、そうは問屋がおろさない。


京太郎が割り込んできたからだ。


京太郎は言った。


「この戦いには僕たちも大いに働いた。だから、三つのイチゴの内、一つは僕が貰う」


京太郎はきらめくイチゴを手に取って、「これは、とちおとめかあまおうか、どれだけ甘いのか楽しみだ」と言いながら、口に放り込んで、思わずむせんで、絶叫していた。


「こ、これは、苦いじゃないかぁぁぁぁぁ」


きゅんが言った。「これはイチゴと言っても、果物じゃないのよ。果物みたいだけど、これはアイテムだから、食べておいしいモノじゃないわ」


「ところで」とちゃんが言った。


「あの小さな宇宙人は何処へ行ったのでしょうか」


(そういえば)


今日子も恭美もあたりを見回していると、「誰かおさがしですか」という声が聞こえてきた。


みると、あの小さかったタキシード男がいつの間にか2メートルほどになって、しれっと京太郎の横に並んでいた。


(はっ、いつの間に?)


タキシードが言った。


「わたくしはボンボン星から来たボンボンヤーというものでございます。わたくしの趣味はちょめちょめです。つまり、わたくしはボンボンと地球のハーフを作るためにここにまいりましたのでございます」


今日子と恭美は思わず顔を見合わせた。


「あのキモイ、タキシード野郎とのこんけつ~ですってぇ~。おぉ、いやっ!」


二人は思わず前を押さえた。


京太郎は胡散臭そうにボンボンヤーを見ていた。


(こいつ、今まで、何処に隠れていたのか?)


こいつが身を小さくできるのは分かっている。

しかし、身を小さくして隠れているのはリスクが大きい。


特に、今のような過激な戦いの中では、いつ踏みつぶされるか、いつ何かが飛んできて致命的な傷を負わされるかわかったものではない。


だから、身を小さくして姿を隠すことはないはずだ。


では、どのようにして、何処に隠れていたのだろうか? 


それが謎だと京太郎は考えていた。


京太郎はこの考えを今日子と恭美に伝えた。


二人は、「たしかに~」と言った。


「突然現れたものねー」


「でしょう。とにかく、奴がどのようにして隠れていたのかを知らないと危なくて仕方がない」


「じゃ、リスクを排除するために、やっちゃう?」と恭美が指で首を斬る真似をした。


京太郎は、ボンボンヤーについてちゃんときゅんと語り合った。


「僕たちがうずまきクネクネと戦っていた間、あの宇宙人はどこに身を隠していたと思いますか?」


二人は「分からない」と首を振った。


「わたしには、おおよその見当がついてますけどね」と京太郎は言った。


「で、あの宇宙人の正体についてどう思います?」


「あれは生命体ではなく、ターミネーターよ」


「ターミネーター?」


「そう、人工体、ロボット。ボンボンヤーが変身するとターミネーターになるのよ。だって、生体反応があまり感じられないもの。それにあいつは噓つきよ」


「嘘つき?」


「そうよ。ターミネーターが人間と交配して子孫を増やすことなどありえないでしょう。あいつの狙いは女性ではなくて、男の精液よ。つまり、狙いは、お兄ちゃんと京太郎さんのバナナなのよ」


えっ? ちゃんと京太郎は思わず股間を押さえていた。


きゅんは薄く笑いながら言った。


「そのうち、いちもつをしゃぶらせろーって、迫ってくるかもしれないわよ」


「過去に宇宙人と戦ったことはある?」


「あるわ、ターミネーターともね」


「ほほう、興味深いですね。ターミネーターには魔法は効かないでしょう」


「そう、全く効かないわ。だから、それ用の生命体を召喚したの」


「ターミネーター用の生物を召喚した?」


「そうよ。スライムという融合系の生物よ。それで動けなくしてから、始末してやったわ」


「ところで、京太郎さんはボンボンヤーが姿を隠したからくりが分かっているとか」とちゃんが訊いた。


「多分ね。あいつは伸縮自在のロボットらしいけど、同時にカメレオンのように体の色も変えられる。そこで体を小さくして樹木などと同化して、その裏や隙間に隠れていたと考えられます」


「なるほど、あり得ることですね」とちゃんが感心した。


「で、それを見つけ出せる方法は?」


「もちろんあります」


「ある? すごい、京太郎さんって、頭がいいのですね」


ふふふと思わず鼻が伸びるのを感じつつ、京太郎は言った。


「僕たちは隠れるのを得意とする忍者ですからね、そんなの朝飯前ですよ。ちゃんのバナナが襲われる前に片づけてやりますよ」


京太郎は今日子と恭美に言った。


「どうやらボンボンヤーはターミネータ―に変身するみたいですよ」


「人工皮膚をまとった伸縮自在の超合金製のロボットってわけ。道理で、親しみの湧かないやつだなと思ってたわ。そうか、宇宙人のロボットか、初対面ね」


「僕の想像だけど、どうやら、あいつは周囲の物体に同化して身を隠しているようなんですよね。そこで考えついたのだけど、今日子ちゃんは鼻が異常に敏感でしょ、といえば、分かるよね」。


「分かったわ、超微かな匂い玉ね」


「そうそうそう。さすが忍者、話が早い」


「で、ターミネーターの倒し方はどうするの」


恭美はターミネーターに自分のエネルギーが通用するのかと考えていた。


(あれって霊力だからロボットには効かないんじゃない? となれば、斬るか? それだって超合金が相手だとムツかもしれないし)


「ロボットの倒し方はどうするの? 霊力も刀も効かないかもしれないわよ」


「ああ、それも対策済みだ。今回はボンボンヤーを探し出すことだけが、僕たちの役目で、後は、全てちゃんときゅんに丸投げだ。だけど心配点が一つある。それは、多分、ロポットはイチゴを持っていないだろうということだ。果たして、イチゴなしの相手に彼らが全力を出してくれるかどうか」


「たしかに~。あの二人は人間離れしていてかなりドライですからねー。口では村の住人を助けたいなんて言っているけど、どうなんだか」


「でも、そこも既に手を打っているから無問題だ。それより宇宙人のロボットと戦う面白みの方が大きい」







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異空間魔界村のバケモノたち @aaapun

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