第3話 うずまきクネクネは蛇と鴉、そこに宇宙人が紛れ込む

「いやいや、待て」とちゃんを手で制して京太郎は言った。


「飛び道具を持たないバケモノなどどれだけでてきても相手にならん。それより、次は君たちに任せたい。どれだけの力があるのか、どのような技を使えるのか見てみたい。ちゃん君の得意技はなにかね」


「僕の得意技はいろいろありますが、昆虫大好き人間ですから、第一に昆虫移動と第二に衝撃波ですかね」


「きゅんちゃんはどういう技を使うの?」


「私のは大技よ。怪物召喚。でも、ときどき宇宙人が一緒にやってくるから厄介なの」


「怪物召喚?」恭美の眼が輝いた。


「私、そういうの大好き! 宇宙人にも興味あるわ。そんな技が使えるなんて凄すぎよ」


「でも、マジで予想もつかない怪物が出てくるのよ。ヨウトームンムンなど、一口で食べられちゃうようなのとか。そのような時はひたすら逃げて、呪術で魔法を消すのよ」


「まさに興味津々ね」今日子の眼もらんらんと輝いている。


(ふたりとも、そんなに宇宙系の怪獣大好き人間だったの? それでプレデターをゴジラみたいと言っていたのか。とんでもない忍者たちだ)


京太郎は呆れたように二人を見ていたが、実は、京太郎も宇宙人大好き人間なのだ。


「ところで、うずまきクネクネはどこにいるのですか? 一応、見てみたい。奇妙なものはすべて見てみたい」


「うずまきクネクネの棲み処は教会よ。墓のある教会。そこに行けば会えるわ」


五人は村はずれの教会に辿り着いた。


「屋根に巨大な十字架が立っているのね、ということは、ここはキリスト教の教会ね。このゲームのような世界にも宗教は存在しているのかしら」


今日子の問いかけにちゃんが応じた。


「この世界には宗教のようなガラクタは存在しませんよ。誰がイージーな作り話を信じるというのですか? ここの住人は、いけすに飼われている魚のように、食われることから逃げるのに必死ですから、実のない、架空の話など信じているヒマはありません」


「そうよね。分かるわ。宗教を信じているのはヒマ人だけよね。現実に生きていると絵空事などに時間を奪われたくないものね。ところで、教会の前に人がいるけど。あれは餌なのかしら」


「いいえ」ときゅんが言った。


「彼はここの神父よ。教会と墓場の管理をしている人なの」


「こんにちは」と恭美は神父に挨拶をした。


「だれじゃ、おまえたちは、ここは人間のくるところではない。さっさと消え失せろ」


京太郎が笑みを浮かべながら言った。


「なかなか、言葉使いが乱暴ですね。いい傾向です。バケモノの召使いが上品なものの言い方をされていると調子が狂いますからね。ところでバケモノはどこにいるのですか」


「ここにはバケモノなどおらぬわ。ここには、空に鴉、地に蛇しかおらぬわ」


「鴉と蛇が共存しているのですか?」と今日子が不思議そうな顔をして訊いた。


「いやいや、奴らは互いに食い合っておる。鴉は空から舞い降りて蛇を捕食し、蛇は樹木を這って、鴉の卵や雛を食い荒らしておる。蛇の中には空を滑空できるものもおるぞ」


「空を飛ぶ蛇ですか?」


「そうじゃ、体を広げて、ムササビのように滑空しよる。しかも、クネクネと体をよじらせて飛行を操っており、飛んでいる鴉におそいかかって食料にしちょる。クヘヘ、面白いじゃろう」


今日子が第三の眼を開いて、教会の奥を霊視してみると、何か巨大な生き物が見える。


(なにかしら?)


その生き物は顔が蛇で鴉のような翼を持っていた。


(まぁ、よくある風情のバケモノね、ありきたりだわ)


今日子が「でも、教会に誰かがいるわ。巨大な奴、蛇のような顔をした……」と言いかけると、神父は慌てて、「だれもおらん! いい加減なことをぬかすな」と血相を変えて怒鳴ってきた。


「はっ? この大嘘つき神父め」と今日子の怒りが爆発し、十八番のバックスピンキックが神父の側頭部に炸裂した。


神父は一発でぶっ飛んで気絶した。


その騒ぎを聞きつけたのか、あのバケモノが教会の扉を開けてでてきた。


霊視した通り、蛇のような顔をして黒い羽根を持っている。


しかし、その背丈は3メートルほどと巨大で、しかも、がっちりした肉体を持っており、どこもクネクネしていないし、渦巻きもついていない。


それでもバケモノであることに変わりはない。


京太郎がきゅんに言った。


「さぁ、バケモノが出てきましたよ。急いで怪物を召喚してください」


その言葉に背を押されるかのよううにきゅんが杖を使って地面に魔方陣を描き、その真ん中に立って聞いたこともない言語で呪文を唱え始めた。


すると、晴れ渡った天空がにわかに曇りだし、雷鳴がとどろきだしたかと思うとすさまじい稲光と共に、怪物が天から降りてきた。


それは、太古の恐竜だった。


「キャー! ゴジラよ、ゴジラ」と今日子と恭美は大喜びだったが、京太郎はつまらなそうな顔で呟いていた。


(恐竜って、また、ありきたりじゃん)


しかし、三人は恐竜の足元に白いタキシードを着て蝶ネクタイを装着した、笑顔が満載の背の丈10センチほどの小さな男が立っているのを見落としていた。


ちゃんときゅんはそれを見逃さなかった。


二人は渋い顔をしてハモるように言った。


「また、宇宙人が紛れ込んでいる! しかも、見たことのない新顔だ」

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