ぼっちになった女騎士

「エミーはこれからどうしますの?」

「はい、ギルド事務所で入れてくれるパーティを探します」

「では、その間このお屋敷に居ても良いですよ」

「良いのですか?でも・・・」

エミーは両親と2歳年上の姉、2歳年下の弟と祖父母と暮らしていた。

「騎士学校を出てから、パーティを渡り歩いたのです。

 いちばん居心地が良くて、メンバーの仲も良かったんですけど、

 あんな事になってしまって・・・」

パーティメンバーをすべて失い、自らもダンジョン主に囚われる苦痛を味わった。


「これから、どうするのですか?」

「すこし考えようと思ってます。

 また同じような目には合いたくないですけど、かと言って何もしないのも・・・」

「エミーさまはおいくつでしたっけ?」

「17歳です」

「では帝国騎士団を受験されてはいかがです?」

「わたしの様な平民階級では受験できないのではありませんか?

 だから私は騎士学校出てからはパーティに所属する道を選んだのです」

この国の騎士学校は誰でも受験は出来るけれど、

卒業後、貴族階級は騎士団に加入出来ても、平民階級では騎士団に加入できるのは

ほぼゼロに近いのだが、騎士団には平民階級出身者がいない訳ではなく、

年2回行われる加入試験に合格すれば、誰でも騎士団に加入できるのだ。

「騎士団の中には平民出身の隊長もいますし。20歳まで受験資格は有りますから」

「そうなのですか?そうならやってみたいです!」

「そうなさい!あなたの剣すじなら十分騎士団でもやれるはずですよ」


エミー・ガルニエはその後、騎士団一般試験を受験し見事合格したという。


マルグリットが淹れた紅茶を飲みながら

「エミーさんが騎士団入団したそうですよ」

「そうですか、あの方なら出来ると思いました」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「エミー・ガルニエは第17騎士分隊に配属だ!心して励め!」

「はっ!」


第17騎士分隊は数ある女子だけの分隊の中では最近新設された分隊で、

20名の若い女子だけで構成されている分隊である。


ある日

隊長からエミーに命令が下った。

【郊外の森に魔物が出没し、迷い込んだ子供が攫われたとのことだ

 エミー、数名のメンバーを編成し、その子供の捜索を命令する】

との命令書を隊長から渡された。


(あの森にいる魔物って何だろう?最近あまり聞かないけどなぁ)

「マチルダ、マルガレーテ、カノン、マリア、ステファニー!来てくれる?」

5人の騎士が集まった。

「隊長からの命令が下ったわ。トーンボリの森に迷い込んだ子供の捜索よ」

「はい!エミーが隊長代わりだね?」

「まぁそういうことになるかな」

「じゃあみんなエミーのために頑張ろう!」「おー!」

「出発は明日の朝、準備はしっかりとね」


そして捜索の朝。

「みな、準備は大丈夫か?今回は我が部隊の初陣でもあるから、

 しっかり頼むぞ!」隊長のヘレナからの訓示を受け留守にするメンバーからの

見送りを受け、エミーを先頭にトーンボリの森へ向けて出発。


帝都の城壁を出ると、

やがて前方にこんもりとした森が見えてくる。これがトーンボリの森だ。


森の中の一本道を進むと・・・


ゴブリンと思しき、薄汚れて醜い連中が前方に姿を現した。

「何をしに来た!」

「子供たちを返してもらおう」

「だめだ、あの子供は俺たちの奴隷だ!」

「なに!」一斉に剣を抜くメンバーは「散開!」エミーの号令と共に左右に展開。


「突撃!」

うぉぉぉぉ!!!!!とゴブリンの群れに突進していく騎士たち


あちらこちらで激闘が繰り広げられる。


ぎゃっ!

ぐわぁ!

グサッ!


ゴブリンどもを一蹴した騎士たちは、

さらに前進しゴブリンの巣と思われる洞窟に入っていくと・・・


一回り大きなゴブリンと出くわした。

「よくも俺の子分たちをやってくれたな」


「かかれ!」一斉に襲い掛かる騎士だが、

そのゴブリンはそれまでの連中よりも数倍強かった。


ドサッ!

バサッ!吹き飛ばされる騎士たち


「くそ!みんな大丈夫か!」

「大丈夫!まだやれるよ!頑張ろう!」

「よし、みんな足を狙え!」


「ステファニー、カノンふたりは弓を使って援護してくれ!」

「解った!」この二人は剣だけでなく弓の技術にもたけていて

後衛にまわって前方の騎士を援護することも多いのだ。


ヒュンヒュン・・・グサッ!

うっ!


ズバッ・・・バサッ!とほかの騎士は巨大なゴブリンの足を攻撃し、


ついに

ドサッ!

ズドォォォォォォォォンン!!!!!!



土埃ととともに巨大な姿が崩れ落ちた。

「いまだ!」

全員で崩れ落ちた巨大なゴブリンに止めを刺そうと、一気に攻めかかる。


ぎゃぁぁぁぁぁ!


「やった!ゴブリンを全部片づけたぞ!こどもたちは何処だ?みんな探してくれ!」


洞窟の暗闇の中を捜索する騎士たち

やがて「こっちから声がするよ!みんな来て!」とマチルダの声がする方へ向かうと


木で作られた檻の中に子供が数人いるのが見え、

檻を破壊して子供たちを救出することに成功した。


「みんなは子供たちを保護してくれ。私は後方を見守る。

 マチルダ、キミは前方を頼む!」「了解」


洞窟を出ると、もう夕方。


「さぁ着いたよ!みんな、寂しかったね。でもよく頑張ったぞ!」

騎士たちに連れられて帰って来た子供たちは全部で6人。

それぞれ迎えに来ていた親兄弟に連れられて帰っていった。


隊舎に戻ると「みな、よくやってくれた!礼を言うぞ!」

ヘレナ隊長からの訓示の後、解散となり宿舎へ戻っていくメンバー。


「エミー、マチルダちょっときてくれ」ヘレナ隊長から指示を受ける二人

騎士全員が不思議そうな顔で、二人を見守っている。





 


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