メイド、覚醒す

女騎士は石の壁に鎖でつながれたまま。

フェリシアお嬢さまもアイペヌンの触手に捉えられている。


「あなたはどうされますか?」

ダンジョン主アイペヌンが、ニヤニヤしながらマルグリットに近づいてくる。


(この男を斃さねば・・・さてどうするか)

幸い、男の触手はフェリシアを捉えたままだ。

男はその触手を伸ばしつつ、マルグリットにじりじりと近づいてくる。

(この触手を切り落とすか)


触手に捕まれたままのフェリシアだが・・・

その手を男へ向けてクリムゾンフレアを発動させていた。


地表に現れた魔法陣から発生した巨大な炎が男を包む


ぎゃわぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ・・・・あ・・あ・あ・・・あ・・あ・


バタッ・・・

ダンジョン主アイペヌンは斃れた。


うううう・・・・・・・・うう・・き・・・さ・・・・・・ま・・・・

俺は・・・アイペヌン・・・まだ・・死・・・・・な・・・・・ん・・・・!


「止めを刺して差し上げますわ」

触手から解放されたフェリシアがその大剣を男の背中に突き刺す。


ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ~~~~~~~


「うん、死んだようね。ではあの石は何処に・・・」

「お嬢さま、あそこに光るものが」

「ああ、あれね。マルグリット。では参りましょう」

「お待ちください。お嬢さま、騎士さまをお助けせねば」

「ん?あ、そうでしたね」



マルグリットが大鉈で鎖を破壊しようやく解放された女騎士。

「お助けいただきありがとうございました」

「いえ、どういたしまして。でもなぜあなたはあそこに?」


ここのダンジョンは、よそから入れないようになっているのだが。


「はい、私たちのパーティも別のダンジョンを攻略していたのです、

 ホラーリンクスと言う、でもその途中で仲間は次々に斃れ、残ったのは私だけ」

「最下層まで来た時に、あの男が現れて・・・でも結局私、敗北してしまって・・・

 ここへ移動魔法で連れ込まれたところに、お二人が来たというわけです」

「なーるほど、とにかくここにいることは危険です。すぐに出ましょう!」


魔石を使って、ダンジョンの外へ出た一行。

「お嬢さま、お着替えを」

「マルグリット、あなたもよ」

「こちらの騎士さまは如何されますか?」

「このままお帰り頂くのはどうかと思われます」

「あなたはどちらから来られました?」

「はい帝都ローンルリカです」


「マルグリット、こちらの騎士さまに合う衣装はありませんか?

 体型はあなたとほぼ同じようですから」

「はい、ございます。ではこちらへ」

衣裳部屋へフェリシア、マルグリット、女騎士が入っていく。

「まだお名前を伺っていませんでしたが」

「はい、エミー・ガルニエと申します。A級パーティ:レッドプラトゥーンに

 所属していますが・・・」

「みなさん戦死されたのですか?」

「はい・・・残ったのは私だけです」

悲しげな表情のエミー

「これからどうするのですか?」

「どうしましょうか?」

フェリシアとマルグリットは考える。エミーは騎士だし、ギルド所属であるし。

「とりあえず帝都へ戻りましょうか」

「そうですね、それが良いかと」

「迎えの馬車が来るのはいつでした?マルグリット」

「4日後です」

「ではそれまで、屋敷でお休みください」

「ありがとうございます」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

屋敷の地下闘技場


やっ!

はい!


うっ!


エミーはフェリシアお嬢さまと剣術の稽古をしている。

マルグリットの予備の青い鎧を身に着けたエミーは堂々とした剣をふるう。

対してフェリシアは赤い鎧で、その剣をさばいている。


「ふぅ・・・なかなか素晴らしい剣すじですわねエミーさま」

「いえいえ、お嬢さまも変わりませぬよ」

「では休みましょう」

「はい」


着替えて屋敷の応接間で休憩する二人。

エミーは群青色のドレス、フェリシアは深紅のドレス。

「よくお似合いですわねエミーさま」

「お嬢さまは、赤がお好きなのですか?鎧とマントも同じ赤色でしたが?」

「子供の頃からこの色のドレスやワンピースを着ることが多かったのです」

そばでメイド服のマルグリットが給仕をしながら話をしている。

「お嬢さまは子供の頃から、この色がお好きと聞いていますよ。公爵さまから」

「お父さまったら」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


数日後

「では参りましょう」

屋敷の玄関に執事、メイド、料理人、庭師たちがそろって馬車を見送る。

「行ってらっしゃいませ、お嬢さま」


「いつもこんな見送りなのですか?」

盛大な見送りに面食らった感じのエミー


馬車のなかでは、すっかり打ち解けた3人が話をしながらくつろいでいる。




やがて帝都の盛大な街並みが見えてきた。



















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