お嬢さまとメイド、その実態は

「フェリシアお嬢さま、きょうはこちらでお召替えを」

「解りました。あなたも着替えをよろしくてね」

「かしこまりました」


二人は屋敷の地下室へ。

フェリシアは赤い鎧に深紅のマントを纏い大剣を持った騎士に、

マルグリットはメイド服風の黒い鎧に大きな槌と盾を持つ重騎士にその姿を変えた。



「さぁマルグリット!覚悟はいい?」

「お嬢さまをお守りいたします」

「では、まいりましょう」


地下室の階段を降りると、また複数のドアがある。

「今日は第4ダンジョンに入りますわよ」

「承知いたしました」



暗い石造りの通路には、ところどころランプが取り付けられている。

そこだけが、ポッと明るくなっているのだが・・・


奥の方からは

魔物と思しき声が聞こえてくる。


うぉぉぉぉ~~~

ぐぉぉぉぉーーー


マルグリットが前衛としてフェリシアが後衛となり暗い通路を進んでいく。


ぎゃわぁぁぁぁぁぁ


おおきなグレイハウンドウルフが目の前に現れた!


ぐるるるるるるるるるるるる・・・・・

がるるるるるるるるるるるるるるる


「ここはわたくしが」

「任せますわよ」


突進してくるグレイハウンドウルフ

ドッドドドドドドドド!!!!!


「お嬢さま!そちらの岩へお隠れ下さい!」


ウルフの真ん前に立ちはだかるマルグリット


ヤッ!

上空へ飛びあがり、ウルフの突進を交わす。

反転してくるウルフの頭上に飛び乗ると、その大きな鉈を振り上げ・・・


グザッ!!

ぎゃわぁぁぁぁぁぁ!!!!!


頭を鉈でかち割られたウルフは、あまりの痛撃にのたうち回り。


ふたたび舞い上がったマルグリットは大鉈でウルフを真っ二つに!


うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁっぁぁぁ!!!!!!!

ドサッ!!



「マルグリット!今日もお見事よ。ただちょっとお時間かかり過ぎよ」

「申し訳ございません、お嬢さま」

「では次に参りましょう」




一つ目の魔物を葬り去ると

二つ目、三つ目、四つ目、つぎつぎと魔物を駆除していく二人。


「今日はここで終わりよ」

「承知しました、お嬢さま」

最後の部屋には帰るための魔石テレポートストーンがある。

魔物を斃して魔石を確保せねば、帰れないことになっているのだ。


石造りの薄暗い通路を進むと

「お嬢さま、最後の魔物がいる場所が近づいてきました」

「解ったわマルグリット。では私が行きますからあなたは援護頼みます」

「承知しました、お嬢さま」


「では」


「お嬢さま、中から何か声がします」

「なにごとですか?」

「女性のうめく声が」


フェリシアとマルグリットが耳を澄ますと・・・


ううううう・・・・

「?」


最後の部屋のドアを開けるとそこには。


鉄の鎖で壁に括りつけられた、女騎士がいた。

鎧はほぼほぼ壊され、鞭で打たれたのであろうミミズばれがあちこちに、

顔も体も血と汗で汚れ切っている。


「くっ・・・・殺せ!」

その前には小柄な男がいた。

「死に急ぐことはありませんよ。これから私ともっと楽しいことをしましょう」

と言うと、その男の手が触手のように変化し、女騎士の身体を這いまわる。


うわぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・やめろぉぉぉぉぉぉ

のたうち回る女騎士だが鎖が彼女の自由を奪っている。



「お嬢さま、いかがいたしましょう」

「あの騎士さまを助けましょう」

「承知しました」


小さな男へ向かって突進するフェリシア。

だが、

男が気配に気づいて振り向くや否や、その触手がフェリシアの身体を瞬時に捉え、

フェリシアの自由を奪ったのだった。

「やめろ!何をする!」

「あなたはどなたですかな?せっかく楽しんでいたのに邪魔ですね」

「お前は誰だ!」

「わたしですか?このダンジョンの主アイペヌンと申します」

「その騎士さまを解放しなさい」

「いやぁそれは出来ません。わたしのおもちゃですからねぇ」


女騎士さまは今だに、鎖でつながれたままだ。

「殺せ!はやく!殺せ!」

「何をおっしゃる騎士さま。まだまだあなたには死んでもらっては困るのです」

ダンジョンの主アイペヌンは、女騎士と拘束されたフェリシアお嬢さまを

どうやっていたぶろうかと、虎視眈々と眺めているのであった。



アイペヌンに立ち向かえるのはマルグリットだけ。

どうするんだマルグリット!





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