第23話  魔力循環と制御、そして歩法


さてさて。


先日、狩りデビューのお話しをしましたが



いくら護衛がいても最低限の用意は必要です。



そして僕の目標の




『魔導錬金術師』



それになる為には魔力を自在に操らなければ


ならないのです。



いくら僕が新しい、おそらく強くなる




“天魔族“ だったとしてもです。



転生後、お家をぜんぶ見回り少し落ち着いたころから勉強と一緒に修行も始まりました。




『ニコ様、まずは魔力をより感知しましょう。“女神コイン“を感知出来ていますし魔力もある程度、感じられていると思いますが』


『より詳細に。より繊細に。隅々まで感知する事に集中してみてください』



ロブにそう言われて僕は体内に意識を向ける


瞑想のように。



座禅組みたかったのに足が短くて凹んだ。



祭壇部屋のソファで目を瞑り、集中。



まずは女神コイン。ふむ、何やら深く探ると魔力と何かの力を感じる。


これが“神力“ なのかな?



そこから胸を中心に広げる様に感知していく



転生者らしく臓器を意識して魔力と血管、神経、果ては細胞まで意識する。


すると今まではふんわりとしていた魔力をより強く感じる。


そして魔力と神力が表面で絡み合っていた。


魔力の流れにそっと寄り添うように


やさしく


おだやかに


しかし、ちからづよく



ああ、僕は女神様からこんなにも…




そう意識したらより深いところに



悲しそうで哀しそう。



だけど、嬉しそうで楽しそう。



何とも説明が難しい“それ“を見つける。



やんちゃで、理性的で、悲しくて、嬉しくて


哀しくて、楽しくて、


そしてやさしくて、くやしくて、


あたたかくて、さむざむしい。



ああ、きみたちも見つけたのがわかるよ。


 

そうだね、今は、これからは、


楽しいと嬉しいが混ざるんだよ。



そう意識していくと“それ“が脈動する。



そしてゆっくりと、ゆっくりと、回りだす。



いや。“巡り“だす。



黄金色の“それ“に絡み合う。



白と黒が巡り合う。すると巡り、巡り、



ひとつになってゆく。



するとあの場で感じた少しあわてんぼうの



気配がちかづく。ちりちり、ごめんて。



巡り混ざる“それ“にやさしい“それ“が



入り込む。



そして回り、周り、廻りだす。




やがて“は紡ぎだす。





巡り、廻りて、新たな環が出来る。



環が巡り、道ができ、円となった。









それにちいさな煇の欠片が灯る





そして“ぼく“ は“ぼく“ を感知した。











魂の炉が動き出した







すると





全身を巡り、絡み合う、2つも変化する






2つは巡り、1つに混ざり、僕に成る。





“神力と魔力“ ひとつになりて










“天魔と成る“













轟っと、力の奔流が溢れて出した。





そしてその力を胸から回す、廻して周し、



巡らせる。力は僕を巡りだす。




抑えす、抗わず、環を巡る。




胸に鎮座する魂を起点に円を描くように




巡らせる。


流れて出ていくのは僕だ。

巡りてもどってくるのは僕だ。



環と神力を魔力で紡ぎそれが僕に成る。




その暖かくも逞しい力が僕の力だ!



そう“認識“ した瞬間、力は魔力は



僕の意識とひとつになり穏やかな波を打った




すぅーっと、目を開く。




ロブが、跪き震えている。


怖い、嬉しい、心配、そんな様子で。




だから僕は僕なのでこういうよね。




『どう?感知出来たと思うけど?』



ロブはややあって、


『お体は何ともありませんか?』


ん?


『何もないよ〜』


そしてコハクとユオが嬉しそうに飛びつく。


『ふたりともっと仲良しになったねぇ』


そんな僕らをみながら



ようやく


いつもの雰囲気のロブになる。


『いやはや、感知するだけでなく循環までされるとはなんとも』


『途中で信じられない程の魔力と何かの力が溢れ出して焦りました』


そう汗だくなロブを見やると


うしろにミレイもいた。

『心配しましたよ、ニコ様』


 

うん、いつもの2人だ。



そして

『それだけ感知と循環が出来たので制御しながら出来るようにもう一度おさらいをしましょうか。先程の様子なら大丈夫でしょう』



ふう。なるほど。巡らせて循環。


循環を意のままにして制御。




そして僕は魔力を巡らせる。














『あっれ〜?うまく出来ない!』











何故かうまく出来なかった。







な、なぜだ!感じたぞ僕は!


魔力が天魔の魔力となったぞ!



あ、天魔のままだわ。じゃなんで?




え?もしかして初回サービス⁈


天魔の魔力に成るのは助けたけど魔力の扱いはここからが本番?



あ、ありそう!




はたっと祭壇を見やる。






いつもと変わらないのに『そうなの!』





そんな声が聴こえそうな感じだった。








そっかー、チートしてても鍛えないとね!


そして今日はここまで!



お昼ご飯の時に


『ニコ様だけでなく、コハクとユオも同じ状態でしたからね』


そう言われて、僕らは揃ってふふん!


『ソウルメイトだからねっ!』


ちょっと自慢げに胸をはった。



そして、ミレイが


『はいはい、本当ソウルメイトは通じ合ってますね。3人ともお口を拭きますわよ!』



トマトソースでべちゃべちゃだった。




僕がトマトソースくらいに赤くなったのは言わずもがな。



気分を変えてさっき感じた初回特典の話をしてみた。ここ数日でロブもミレイも感じていたみたいだ。




あの過保護な女神様なら有り得るな。と。




結局次の日からも通常の訓練となった。



ただ感知の精度は抜群に上がったので



循環をする前に僕とコハクとユオは




魔力に全身を浸す練習をし出した。



僕の理解は魂で理解出来るふたりも一緒に



そしてついに、


『ニコ様!そ、それを私にも教えて下さい』


ロブが、我慢できずに言っちゃった。



くふふ、いいねぇ、みんなで修行。



ねえ、コハク、ユオ。楽しいねぇ。



くふふ、くふ。




その後ロブとミレイも加わっての修行が始まった。


『いいですか、ニコ様魔力を循環させるには感知した魔力を流し出すのです。この最初の感覚は人それぞれだと言われますがやはり最初は“流し出す“これが力を暴走させずに動かしやすいのです』



ミレイは

『循環をし出した時にどうしても初めは“押し出す“意識になってしまい無理に押すのでどこかで詰まったり、霧散したりしますの。なのでもどかしいでしょうが私も“流し出す“この方法で少しずつしていくのがよろしいかと』


うーむ。うむ。


言ってる事はわかる。



今の僕は水道の蛇口を締め切って無かった時くらいのチョロチョロしか流せない。




これを焦って強引にしたらダメなんだな。



も、もどかしい。



なんだこれは?めっちゃ押したくなる。



チラリと2人を見ると首を振る。



焦るな。と。




ああーっ!お、押したい、押したいぃー!





ぐぐっーー!しゅーーん。


あっ。



『はーい。ニコ様。押しちゃいましたねー。あれ程我慢って言いましたわよね!』


プンスコ!あ!ほら、コハクとユオもだよ?



『コハクもユオも我慢出来ませんでしたね。まあ皆通る道です。ふふふ。ただ無理に霧散させてしまうと余計に疲れるのですよ。どうです?ちょっとぐたっとしてませんか?』



あー。ほんとだぁ。


ミレイがお水をくれる。


『少し休憩しましょうね』


そしてロブも


『んんっ、休憩するだけでは時間が勿体無いですな。せっかくなので今の時間に先日の魔力の浸透したかの様なアレを教えて頂いても?』



おい!ウキウキ隠せてないぞ2人とも!



でも僕も教えてもらってるしねぇ。


ふふん、いいでしょう!

ニコ先生は厳しいですぞ。


『えとねぇ、まずは2人に“理解“してもらう事が大事なんだよねぇ。わっかるかなー。2人に?』


にやりと煽る。


『ふふ、これでも錬金術師として魔力の扱いには少々自信がありますぞ。それこそニコ様に指導出来るくらいには』

『まっ!まあまあ。私も今はメイドですが時にごにょごにょ、げふん、エルフとして魔力の扱いには自負がございますわ』



ふふふ、のってきた。のってきた。


いいかい?君たち、こらから習うのは魔力じゃないんだよ?


科学ひいては細胞学なのだよ。



くふふ、覚悟したまえ!



〜〜説明中〜〜



ふうー。



難しかったかな〜?』




2人の頭から湯気が見える。気がする。


ブツブツと。

そ、そんなはずはありませんはわ、わたしがスライムのちっさいやつの集合体だなんて。


き、キングスライムじゃないんですから。ブツブツブツブツ。



キングスライム居るのかー。


ロブも。

ふ、分裂?なぜ分裂するのだ、質量は?いやしかしいくら身体強化の目で見ても血管すらみえん、くそ、なぜ私にはみえない。ブツブツブツブツ


外から血管や細胞見えたらこわいよ?しかも裸眼で。





そして、休憩が終わると今度は僕の番だった


『ニコ様〜、ゆーっくりですわ?あらあらムズムズされますー?あ、ほら、もーっとゆっくりですわぁ』



くっ!ミレイめっ!時々駄メイドなの僕は知ってるぞ!くっ



『ほほほ、ニコ様。出来る漢になるには焦らされても焦らない事です。焦ってがっつくのは美徳では御座いませんぞ。あ、ほらそこ。先に行ってしまってはわらわれますぞー』



ロブ!2歳児になんの話だ!あ、ちがう?同じ?くっ、集中力が…精神を削りにきたか!



などなど、なんだかんだと仲良くやっていた




魔力循環を習い出して一月ほど経った頃


ゆっくりと循環が始まった。



チョロチョロ〜からチョボチョボ〜くらい



僕に取っては大きな変化だ!


だがそれでも押したい!

やっぱり押したくなる!


ぐっと堪えて汗が滲む、コハクとユオはまだみたいだ。


ぐ〜〜〜〜る〜〜〜ぐ〜〜〜る〜〜〜。



維持だ!この量と速度を!



5分、10分、15ふん…辛抱だ…



『いいですぞー!ニコ様!その調子!』

ロブの声がデカい、気が散る!

『きゃー!ニコ様そのまま!そのまま!』

ミレイ、声がデカい!気が散る!



そして当面の目標の30分を超えた頃。

ロブが


『素晴らしい!そのまま、そのまま、話をお聞きください。魔力量、循環速度共にとても少ないですし、遅いです』


くっ、ディスか!ディスなのか?


『しかしながら完璧な魔力循環です!』


パチパチパチ〜


『あとはこれが正解と理解して焦らず流せる量を増やすのです。しかし私は錬金術師、そしてニコ様も錬金術師志望。』


『しかも“魔導“錬金術師を目指すとなればここで伝えなければなりません。通常は皆このまま量を増やして循環を鍛えるのですが私はそれが遠回りだと思っています!』


そうなの?循環の維持しながら聞くなんて

並列思考持ってないと無理じゃない?


『制御です』


『今一定の循環の力をニコ様の支配下に置くのです。簡単に言うと意識せずとも思い描いた魔力量を維持するのです。どんな事があってもです。』


そうして僕にそっと近づいてきて


『ニコ様!維持です!意地でも維持です!』


え?なんなの?


『私が何かするかもと不安そうですが何もしません。不安ながら今ニコ様は“制御“されています。が、如何に難しいかを伝えます』


ごくり、何するの?

痛いのやめてよ?


『ニコ様、ただその場で立ってみて下さい』


えー?何する気さ?腹パンとかやめてよ!


渋々と、僕は立つ。




そして驚いた。呆気にとられた。



霧散した。循環が。



ただ立っただけで。



『おわかりになりましたね?』

『制御とは無意識で行えて制御だと私は思っております。なので巡らせる量が少ない今から制御を身につければ“魔導“に近づくかと私は考えます。』


厳しい顔で言ったあと。


いつもの優しい笑顔になりすっと抱っこ。


『お疲れでしょう。今日は素晴らしかったです。ニコ様の成長を見られる事が私とても楽しかったです』



バチコーン



決めのウインクまで。くふふふ



確かに楽しいねぇ。くふ。



その日はとても充実した疲労感で寝た。







しばらくするとやはり2人は女神様に選ばれるだけはあるのか。


全てを理解してないまでも体の構造を理解し始めて魔力が浸透しだした。



『お、おおっ!これはすごい!こんな魔力に包まれている感覚は初めてだ!』

『ああ〜、浸るとはこう言うことですのね!今までどれほどのロスをしていたのか!表面を撫でていただけですわ!』



す、すげーな!


科学や体の中の構造を出来るだけは教えたけど、早過ぎない?


あっ!循環!

スッゲー。なんか魔力がミチミチってなってるじゃん!


あ、かわった!何なの!すげー。


なんかふぉぉぉーってなってない!



え?髪の毛逆立って変身しないよね?



あ、でもその恍惚の表情やめれ!


うっとりしないの!



などなど僕は地道に修行にあけくれるのです。



そして



2人に武器を渡した時にはこの循環が出来ていました。

だからでしょうね。木を薙ぎ倒す、周りに冷気を撒き散らす。


ぷくくく!浮かれて“制御“出来てませんよ?



くふふ、くふっ。



僕は口に手を当ててくふふぐふっ



そんな様子を見られていたのでしょうね。



歩行の練習から“歩法“の練習になりました。



頭に本は載せません。


例え載せてもお角さまあるからね。



ただ理解が難しい。



え?なんかゆっくりに見えるのにめっちゃ速くない?


あれ?速いのにゆっくり?



あ、ニンマリして!



ああ、2人同時にされると脳が混乱しそうなんですけどなんで?



し、神眼!


あ?え?やっぱりゆっくりなんだ。


鑑定結果は?

ええ?そういう技ですってなによ!

絶対説明省いてるでしょ!



「「ふふふふふふふふふふふ」」


あー!ぼ、僕の周りを、逆回りでーあー



僕は地面に四つん這いになり



『ほ、歩法おそるべし』





そう呟いた。




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