第22話  あたーらしーいー


早いもので転生から2ヶ月が経ちました。




今日も今日とて楽しんでいる僕です。



この2ヶ月で色々と変化がありました。


まず食事。


美味しい魔物肉が増えました。


なんか強い魔物は“魔素“ を含んでいて美味しいのです。


魔素は世界に漂っている魔力の元です。魔物はこれらを他の魔物から摂取して強くなるそうです。


何故、食卓に魔物肉が増えたかと言えば


“石“と“剣“です。



ロブとミレイが楽しそうです。


『ニコ様〜ただいまです!わたし今日は鳥を仕留めて来ました!スナイプモノクルとブラッドロックのおかげですぅ!見てください〜!』


そう言って“鯱“くらいの大きさの鳥が出てきた。


収納から。

(アイテムボックスだのマジックリングだのもう纏めて収納って言ってる)


凄いな。首と胴体に一発ずつ。首はプラーンなってる。


『ブラッドロックを賜ってから狩りがとっても楽しいですわ。食事も美味しくなりますしね。うふふふ。』


石を艶々の笑顔で拭いている。


『ふわぁ、おっきいねぇ。なんて名前なの』


ロブが教えてくれる。


『ガルガー鳥と言って鋭い爪と魔力弾を放ってくるのですがミレイさんの投擲でほぼ一撃でしたよ。しかも今回はホーミングの軌道演算も素晴らしかった』



ほーう、そうなんだ。石とモノクルを使いこなしてきたのか。


『へぇ凄いね、モノクルの演算は本人の知力と魔力そこから経験が加わったって事なのかな?もう木は薙ぎ倒してない?くふふ』


『も、もうっ!ニコ様ったらまだ言いますの⁈ あれは初めの頃だけですわ!ホーミングを理解してなかったからですわ。もう!』


『ふっくく。よかったですねミレイさん“薙ぎのミレイ”って呼ばれなくて。ふふふ』


『まっ!ロブさんまで!そんな事いうなら私も黙ってませんわよ!“撒き散らしのロブ“でしたっけ?何ですかアレ!こっちまで寒かったですわ!』


くふふ


『まあまあ、やっぱり武器が伝説級でも能力をしっかり使うには訓練と経験が必要だとわかったから今は薙ぎ倒してないし、撒き散らしてないんでしょ?ぷくくくっ。僕は2人の失敗を見てとっても勉強になってまーす』


『きゅいきゅー!』

『にゃにゃーん!』


『2人もだって!』


『おやおや、してやられましたね。』

『もーニコ様はいじわるっ!』


失敗した事をこうして揶揄えるくらいの距離になってます。


『じゃあこれから鳥、捌くんでしょ?僕たちも見学してていいよね?』


そんなこんなで美味しく頂きました。


『明日のお休みは2人は何するのー?』

僕はそんな風に軽く聞くと。


『私は明日は刺繍でもしてまったりですわ』

『ふむ。鉛筆の素材をもう少し研究したいですね。あとは読書ですね』


休日の予定を聞く。

前までは無かったのだ。転生から半月くらい経って気づいたのだ。


2人が休んで無いと。


なので週に2日のお休みを制定したのだ。ただ連休は納得してくれなかったので水曜日と日曜日の2日になったのだ。



街でお泊りも有りですよって言ったら


『街のお風呂なんてありえませんわ!』


一喝だったね〜。


まあそれから大変だった。休日の必要性をあれこれ説いてご飯は?お風呂は?トイレいけます?


となった。トイレはハマらない為のなんかカパって載せるやつがお家の備品室にあったのを発見してOK。


ご飯は休日前に作り置きしてもらいインベントリへ。あったかいままだからね。


問題はお風呂でした。やっぱり一人では無理なのでお風呂だけは手伝ってもらってます。


もしどちらかが街まで行って遅くなる時は1人はお家に残るようにしてくれてる。



食器も洗えないけど食べ終わったのはキッチンのシンクに入れるまではしてる。というかさせてと頼んだ。


まあみんな休日もお家にいるんだけど

“お休み“って作ると心にゆとりが生まれる事に気づいてくれたのです。


あとは多分休日を楽しむ2人を嬉しそうに覗いていたのがバレてたみたいで、ある日


『ニコ様〜。近くで刺繍観ますか?』

うふふふ

と声をかけられてしまったのだ。


『う、うん。お休みの邪魔じゃない?』

『あら、お休みなのですからお話をしましょう。刺繍も観てると面白いですよ?』



そんな風にお仕事じゃない所へ僕が遊びに行くという行為が2人にも刺さったみたいです。


そしていま。


『じゃあお休み明けの明後日いよいよ初めての追加やってみるね』


『いよいよですか。だいぶこの環境に慣れましたが初めての事となると楽しみですね』


ロブも楽しんでる。


『それでもここで生活していなかったらあんな事言われてもとても信じられなかっと思いますわ』


ミレイはお嬢様言葉を解禁している。

くふふ。


『でもまずは!みんなお休みを楽しもうね』


僕のお休みはだいたい朝の魔力循環の訓練をコハクとユオと一緒にした後は


祭壇ルームで遊んだり、前庭で駆け回っ走ったり、裏庭の一角の砂場で遊んだり、絵を描いてコハクとユオに足スタンプしてもらったり。きゃっきゃっうふふなのだ。



そんなこんなで、休み明け。


午前中の日課を終わらせてから


ロブ達に『じゃあこの後マスタールームで

追加するね。』と、言って



執務室へ移って、とある壁の前に手を当てて女神コインを感知する。



すると足元に直径2m位の魔法陣が現れる。


『転移』


次の瞬間マスタールームに僕はいる。



ここはまああれです。



神域で見たお家用PCみたいなやつです。


モニターはホログラム?ステータスボードみたいなやつです。



たまごを縦に半分に切ったみたいな椅子に座るとふわり。机の位置について。


両手を机に置くと魔力循環が始まりホログラムボードが立ち上がる。手にはサイバーグローブみたいなのが装着されている。


ふたつのモニターには現在のお家の立体と平面の見取り図が映し出される。もうひとつのモニターにはメニュー画面が表示されている


メニュー画面から

【追加・拡張メニュー】を選択し右手で手元にあるボードの上を指で操作してクリック同時に左手は立体図を一階、二階、屋根裏、地下と階層ごとに分ける。


むっふー。


並列思考と高速演算があればこういうのは


ちょちょいのちょーいなのだ。


で、追加メニューから選択。


【解体部屋・中・基礎セット】500p

【素材生ごみ粉砕機】    700p

【拡張接続用通路】     200p

——————————————————

【合計OSP】        1400p

【使用可能性OSP】     1500p

——————————————————

【保有OSP】        100p


一気にポイントが無くなるが


今は他に増やす必要も無いし入居ボーナスで

僕が「1000p」ロブとミレイで「300p」

あったのでこの2ヶ月で貯まった分を合わせて

購入なのだ。


さてさてこれを皆んなで相談した場所へと


スイ〜と、ドラッグしてペイっ。


で、設置確認OK。


じゃ、実行!ぽちっと。


すると両手を置いてるボードから魔法陣が現れて追加した分の立体図のホログラムが


魔法陣に吸い込まれてゆっくり回転する。


ばあぁーーと光りながらゆっくり回転し、

光が一瞬強くなった後に惰性で回る様に更に

ゆっくり回転して止まる。


魔法陣陣の色が赤から青に変わるとまた少し光りながら立体図ホログラムが出てきた。


おお〜作業はハイテクなのにこういうのは

ファンタジーだな。


そして目の前のモニターに追加完了の文字が現れた。


マスタールームのシステムを終了し椅子を降りて床に描いてある魔法陣に乗り『転移』



執務室で2人に『終わっよ。見に行こう』と。


スタコラと一階のキッチンへ。


リビングと繋がる方とは逆側に扉が新しく設置されているので開けると渡り廊下が追加されいる。その先には新しい離れの部屋が建っている。


これが解体部屋だ。


『わ〜なんかドキドキしますわ』

『外観はとても解体場には見えませんな』


『ふわぁ、はやく!はやくいこっ!』


ドアノブに手を掛け開けるとだだっ広い倉庫みたいになっていて大きめの作業台と中くらいのが2つあり


天井には移動式のゴツいフックの付いた滑車

部屋の両側の上の方は窓が並び左右の隅に換気扇が2つずつの合計4つ。


反対側の扉は横スライドで一面がほぼ開く仕様。大きな素材もこれでバッチリ。搬入口と作業台の間の壁側にちょっと大きめの横長の箱と縦長の箱。


日本的感覚ならコンビニのアイスコーナーの箱と一般家庭の冷蔵庫だ。

これが【素材生ごみ粉砕機】だ。解体部屋よりポイントが高くてびっくり。


『はぁ〜これでほんとに粉砕できますの』

ミレイはやや疑っている。

『うん、中に要らない内臓とか骨もバッチリらしいよ。上の扉を横にスライドさせて!』


ガラガラーと開けて中身を覗く。

『空っぽですな。しかし全ての面に魔法陣が刻まれてますな。これが高い理由ですか!』


ロブもちょっと興奮気味。左側の壁の下の方には丸い開閉しそうな口が付いててそこから隣りの冷蔵庫みたいな方へ移動するのだろう。

『でね、粉砕の後にこっちの縦長の箱に入って肥料に使えるものと土に巻いて捨てるものと自動で分けてこの下の方に麻袋に詰めてくれるんだよ。ここまでしてくれるから高いんだよ。』


『しかも聞くと起動時に流した少量の魔力で動くとか。そうなるとこれだけの魔法陣を起動させるには足りないはず。ああ、だから魔力回路と魔素吸収の回路が付いて、いや、これはそれにしても…』


くふふふ、錬金術師の血が騒ぐねぇ。

ミレイはなんとなーくな感じだけどね。


『たぶん女神様特製だから僕らが知らない回路や魔法が発動するのかもカタログの説明では中身が見えない様に扉を閉めないと起動出来ない仕様になってるから』


『ま、まあこれで内臓の臭いや血の後処理が楽になるなら助かるには助かりますわ』


『そうだね〜しかもこの部屋も“消臭“の魔道具が四隅にあるから作業中に完全に消えないまでも臭いが籠る事もないよ』 


『ほほ、そうですな。外だとそんなに必要性がない“消臭“もここでは大活躍ですな』


うむ。“消臭“の魔道具はもちろん“消臭“の魔術から開発されているのだが実は“浄化クリーンの魔術の中の一部を取り出して完成したらしい。


研究で何日もお風呂に入らず部屋の中が地獄みたいになるので毎回誰かが浄化を掛けるのだが魔力が勿体無いって話になって細分化出来るのでは?ってなって開発にされたそうだ。

 

何が原動力になるかなんて意外とそんな事なのかもしれないね。くふっ。


『そうそう〜肥料が出来るならちっちゃい畑とかも楽しいかもね。人数少ないから趣味程度でやるのも楽しそうだよね』


『そうですな。薬草は無理でも香草なんかは香り付けで料理にも使えますし。ちょっと楽しそうですな』


ロブは最近ミレイに習って簡単な料理をする様になったのだ。

僕が前に言った料理に使う道具を“何が不便かを知るには自分でやってみるとわかりそう“とやり出してちょっとハマっているのだ。


くふふ、いいね。楽しい。


『まあ、香草いいですわね!そんなたくさん作らなければお世話が大変になることも無さそうですわね』


ミレイもまあまあ乗り気だ。


『まあまあ〜ゆっくりねぇ〜』


解体部屋にはもう一つ扉が付いててそっちも確認する。


こちらは地下の貯蔵庫に繋がる通路だ。

荷物を載せた台車が使える様に3回のつづら折りのスロープになっている。


これなら先日のデカい鳥の肉も台車で運べて楽になるよね。


という事でさっそく前のデカい鳥の使わない骨と毟った羽と生活の生ごみを持ってきて粉砕機にペイっ。


『じゃあせっかくだからミレイが起動させてみてよ〜』


『え?私が1番でよろしいのですか?』

ちょっとびっくりしてる。


『うん!だってこれからさミレーが1番使うでしょ!だからやってみて!』



わくわくだ。


扉を閉めて起動用のパネルに魔力を流すと


ガチゃっと扉がロックしてキィーン。


「ガリッガリっゴリっガッガッ、グチャ」


お、おーう。


今回は箱の角に少しくらいだったので割とすぐに終わった。


ピー、ガチャっ。って音がした。

よく見ると取っ手の所に開閉の文字があった


皆んなで中を覗いたら、

なんという事でしょう!


入れる前と何ら変わらない綺麗さ。


驚きで顔を見合わせていると隣りから


ひゅーん、ざざーっ、と聴こえ、そちらを見ると下から麻袋が2つ。


『肥料』

『ゴミ』


単純でとてもわかりやすい表記だった。


この一連の作業を見てミレイも納得顔だった



何故こんなにミレイを気にしているかと言うと前に僕がリビングでお家カタログをペラペラ〜と

眺めていた時にこの本すごいんだよ〜と自慢したのが原因だ。


見た目はちょっと厚めの魔導書みたいな黒くてカッコいいやつだ。

魔力を流して見たい項目を言うと設備一覧と必要ポイント、設置条件などが出てくる。


そうポイントだけでもダメなのだ。周辺施設や水を使うならその排水システムとか色々いるらしい。

でも眺めているのは楽しいのだ。

面白いのがお家でもそうなのだが、まるっきり前世と同じ様にはなっていなくて一部が使われてこの世界にマッチするようになっているのだ。


丸々、科学の世界にしたらアルステルスじゃなくなるからね〜。


やっぱり女神様はちいさいけど凄いな〜。


あ、チクチク。褒めたのに〜。



と、まあそれはいい。ミレイも何気に聞いただけなのだ。


『お風呂の設備もありますの?』


『お風呂ね〜。ほいっ』


一瞬光って本を開くとまあ色々なお風呂があってね。


『ちょ、ちょっと、見せなさい!』


まさかの命令だった。


ばっと奪われた。

しばし、ペラペラしながら


『ふあぁ〜何ですこれ、あわわ、こっちも素敵ですわ〜。え?美肌?あ、かわいい〜』


などなどおひとりさまの世界に旅立っていた


『ね、ね!ニコさま!今ポイントどのくらいあるんですの?』


キラッキラの目をしていた。この時は


『えっとね、今1400をちょっと超えたくらいだね〜』


ぷっくー。だった。


え?なんで?


『はぁ、あ!でも2000貯まればこっちはいけますわ!うふふふ』とか言い出したので


『お風呂はしばらくしないよ〜今でも結構広いから要らないよ〜』



そんな事言ったものだからミレイは拗ねた。


めっちゃスネた。


お風呂の素晴らしさと乙女心がわかってないとか僕の為にも必要だと

取って付けた様な事も言い出しマシンガンだった。僕があわあわしてる所へロブが通りかかった。


『ロブぅ〜たすけてぇ〜』

僕はロブの元へと走り、はしっと足に抱きついた。


『ミレーが〜お風呂魔人になった〜』


ロブはきょとんだった。



それから理由を聞いてロブは呆れた様に息を吐き僕にそっと耳打ち。


『今からちょっとお仕置きしますのでニコ様は祭壇部屋で遊んでてください』


そう言われ部屋を扉を出たときに


『ジャンケンマスターを忘れちまったかい?ミレイさんよぉ〜』


と聴こえ僕はそっと扉を閉めて、てくてく。


後ろからは

あは、あはははーひぃーひっっひ、や、めてぇ〜あははは〜



悲鳴なのか、笑いなのか、とにかく僕は

てくてくして祭壇部屋で。








ふうーーー。





コハクとキャッチボールしてユオをずいーっと猫吸いして


バタバタ追いかけっこして積み木して、とにかく遊んだ。


しばらく経ってロブがきて

『話はつけてきました。ジャンケンポン』


そう言って僕らはジャンケンをした。


未だスキルは生えてない。



と、そんな事があってのミレイさんだった。


『僕もねぇ、もう少ししたら狩りデビューしてもいいんだよね?そうしたら、ちいさい獲物の解体も覚えられるからこの部屋あってよかったでしょー』


『も、もう私は別に気にしていませんわ。ほんとあの方ジャンケンマスターが現れると次の日は腹筋が痛くなるのでやめてもらいたいですわ!』


真っ赤なお顔で文句を言うミレイだった。




ふふ、君は気づいて無いだろうが



初代様になるんだよ。くふふ。




ロブと僕はこっそり、くふふしてた。




はぁー。狩りデビュー待ち遠しいなー。




そんな風におもいながら新しい部屋が増えた日だった。



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