第20話  封印されし深淵に眠る者


癒し部屋。



あ、祭壇部屋を出たあとにミレイは家事の為別れた。




今はロブとお家探索だ。





立派な応接室

調度品もギラギラしてなくてグッドです。



客間ゲストルーム

20畳ほどの大きいソファセット、ベッド、トイレ、バスルーム(猫足バスタブ)、従者用

簡易ベッドetc…一人暮らし出来るね。

それが5部屋。


VIPルーム

んーなんかテレビで見た豪華な部屋

(僕の部屋より豪華)


スモークルーム

BARカウンター、後ろにお酒各種とグラス。

シックな1人掛けソファが数点。ローテーブルに3人掛けソファ。

木箱に入った葉巻がたくさん。



テラスルーム

砲弾型の窓ガラスにサッシが入って陽の光が降り注ぐ。綺麗に整備された中庭。

白基調の丸テーブルに椅子。なんかいい感じの額に入った絵画。

お花の入った花瓶。紅茶出すためのカウンターみたいなのにティーセット。


遊戯室

ダーツ、トランプ用座卓。チェス(みたいな)

謎の棒に人工芝生?の一角。






え?誰がお家に来るの?


ここ、魔鏡。魔の森のなかだよ。


ねえなんなの。


あ、ロブはもう、すんってしてる。

絶対最初思ったでしょ? 要らないって。


え?いつか使うかも?


それ使わない人が言うセリフだからね!



ふうー。




『女神様、方向性間違ったのかな〜』


『いえ、今はニコ様も降臨されたすぐなので必要ありませんがいずれどなたかをご招待されれば、これらの部屋は使用人としてはとても有難いのです』



ほーん。そうなんだ。

まあ僕はまだちいさいしな。



しかしこの後僕は大興奮となる。


嬉しメーターのレッドゾーンだ。



お家の隅、廊下で繋がった半離れ部屋。




“工房“だった。



『ふあああっ!ふぁっ!ふぉぉ〜』



擬音しか出なかった。



中はいくつかの部屋に分かれている。



“鍛冶場“

“裁縫室“

“薬学•医学室“

“木工加工室“

“石工室“



そしてメインルーム


“錬金術工房“


ど真ん中が錬金術工房でその周りに先程の部屋が回廊の様になっている。


錬金術工房の中はマンガや小説で見たような

ビーカーやらフラスコやら

素材が陳列してる棚。壁には魔法陣。

錬金炉っぽいのから魔女の鍋みたいな物。



僕はここで壊れた。嬉しメーター?

とっくに吹っ飛んでます。


コハクとユオとあっちこっちいってふぁー


その場でぴょんぴょんなんて当たり前。


2歳児の影響なのかな?床に寝転がってバタバタくるくる!精霊獣たちはとりあえず楽しそうな僕と一緒にくるくる。


ぜーはー、ぜーはー、はぁー。



すると横からロブがすっとお水をくれた。



できる執事だ。


んくっんくっんっく、ぷはー。



『はぁー!あ、ありがとっ!ち、ちょっとだけはしゃいじゃった。ご、ごめんね』



大嘘つきである。



めちゃくちゃはしゃいだ。



『いえ、お好きだとは思っておりましたが“相当“お好き。だと認識致しました。ふふふ、これは錬金術のお勉強の時には私も気合いを入れねばなりませんな。ふふ』



茹でだこだった。異世界にあるかな?


もう一度お水をもらい落ち着いて部屋を見る


いくつかある扉を開いたらもうひとつ錬金ルームがあった。メインよりは小さいけどまあまあ広い。


『ねえ、ロブはここに来てから錬金術してないんでしょ?』


『はい、しっかりとしたのはしていないですが錬成陣と簡易釜は有りますので部屋でちょっとした物を錬成したりしてます』


そっか。何気に2人の部屋も広いし部屋数あるんだよな。


『じゃあさじゃあさ!ここ!ここロブの練成ルームにしよ!教えてもらう時も自分の錬成室あると道具とかすぐ見れるし!ね!』


ちょっとビックリしてるロブ。


『そ、その、この様な立派な錬成部屋など宜しいのでしょうか?メインより小さくとも普通の錬金術師の工房からしたら相当立派なのですが』


かなり遠慮してるがそれは無駄なのだよ。


くふふ



『はーい、大丈夫です〜。家主の僕がいいと言ってま〜す〜!それにロブは錬金術の僕のお師匠さんになるからね!錬成部屋あった方が便利でしょ?一緒に研究も出来るよ?』


瞑目しながらふるふると首を振り、ふう。と


そして一礼。


『ありがとうございます。』


僕はニンマリ。ロブも笑顔だ。



そして2人で錬金術の話。



コハクとユオは飽きたみたいなので


“快適小型動物系用•ふかふかクッション“で


すやすや。




どのくらいたったかな〜。


僕がまだ魔力操作を習得してないから錬金術の勉強というよりこんなのが出来る。とか


こんなポーションありますよ。


え?じゃあ固形のこんなのはないの?


ほう、その発想はありませんでしたな。とか



ふわー、やっぱりドラゴンの素材はすごい



意外とスライムはバカに出来ませんよ



などなど



たーっくさんお話。楽しいねぇ〜













怒られるまでは。



目の前に美人な鬼がいた。


ロブまで正座だ。僕?当然正座だ。


くぅ、コハクとユオは向かう側か。



お家探索するっていってましたよね?



全て見ました?え?一階まだ全部見てない?




来客用?遊戯室?使わない場所ばかり?




で、離れ?工房みて?




で?ずっとお話し?ロブさん管財の仕事は?




え?あとでやる?



はぁー?男にしかわからない?差別ですか?



なにがちがうんです?え?




………











「「ふうーーー」」



ミレイが出て行ってからお互いシンクロした



『こわかったねー』

『いやはや、いつの時代も女性には敵いませんね、私こんなに怒られたの久しぶりです』




あははは




2人して笑った。






リビングに戻ると『夕食ですよ!』



もうそんな時間か。

ミレイがプンプンなのも納得だ。うむ。




『夕食は一段と美味ですな』

『うんとってもおいしいねぇ。』


使ってみた。おべっか。



『ま、まあ。そんなにです?自信作ですの。味の決めてはこちらに隠し味で…』




チョロかった。




でも美味しいのはほんと。




『もう今日は許しますけどこれからずっと夢中になってなんてダメですからね!どこにも2人が居ないので探しまわるところでしたわ』



このお家広いのによくわかったな。



『これも“女神コイン“のおかげですわ』



ん?なに?


『女神コインのおかげって?』


『なんかわかりますの!』


うん。僕がわからん。


『な、なにが?』

『意識してない時はわからないんですが本気でどこにニコ様がいるかって思ったらなんとなく存在が感じられましたの。それであちらに向かったのです!』




ええ?そんな機能ついてるの?



女神コインすげーな。



『ほう?そんな事が?私も試してみないいけませんな。あとこれがお屋敷限定なのか外でも有効なのかはそのうち調べないとですな』


『まあ!確かにそうですね。外でも有効であれば万が一逸れてもすぐに探せますわ』




あ〜、有効そうだな〜。


女神様過保護だからな〜。




僕にも出来るのかな?むむっ!むん!



近くてわかんないな。うん。



ま、いっか。


    


錬金術工房でロブと話したせいか前世の知識にある似たようなな物もあればない物も有り色々だった。



食べ物もそうかな?



『ねえミレー。こっちの世界の甘味。デザートって結構あるの?』


『そうですね。国や地域によって様々ですが一昔前200年くらい前はまだお砂糖の値段が高くて少なかったと聞きますわ。』


ロブも

『ああ、割と新しい歴史のやつですね。砂糖を巡って大きな諍いになった“お砂糖事変“私の錬金術の師匠のそのまた師匠が巻き込まれてよく語ってくれてたそうです』



お砂糖事変?



なにその和やかそうな事変?




『時の錬金術師たちがお砂糖の抽出方法を発見、研究して真っ白なお砂糖が出来あがり更に錬金術だけでなく魔道具を使って抽出出来る様になったのです』


『お料理の先生も言ってましたわ。画期的な技術なのにその時砂糖を牛耳っていた商人組合がその技術を阻止しようと暗躍、対する錬金術師と新しい組合またデザート好きの貴族の一部が手助けに入りとまあまあ大きな騒動になったらしいです』


まあお砂糖はお菓子だけじゃなく料理にも使うもんな。



それからなんやかんやで錬金術チームが勝利したらしい。



その時の中心の国には





“お砂糖の七英傑“ の銅像があるらしい。





うむ。なにも言うまい。


『それでニコ様。異世界のデザート教えてくれますの?』


うーん。これが困った事にデザートは知っていても作り方とか知らないんだよなー。


こんなやつでなんかこんな材料だった気がするんだけどーくらいの知識しかない。



『んーとね、ミレーは料理するから解ると思うんだけどデザートは難しいよね。僕はこんなのあったよーくらいしかわかんないの。何となく覚えてる材料はあるけど多分他の材料もいるし1番大事な分量がわかんないんだよね』




“デザートは錬金術だ“





前世の有名なパティシエの格言…






まあCMのキャッチコピーだったけど。






『ほう!デザートは錬金術ですとな?これは本格的に私も研究すべきか。ふーむ』




あ、キャッチコピーなの!




あ〜なんかメラメラしてるぅ〜。


『で、でね!僕ね“プリン“っていうデザートが好きだったんだけどあるかなー?って』



『プリン』


『それはどういったデザートですの』


『えーとたまごを使ってんー?何だろ材料?卵と…牛乳!ミルクね!とあとはお砂糖だったと思うの。で、器に入ってて、あ!カラメルもあったか…』



その後、紙に出来上がりの絵を描いて注釈的にたぶんこんなの入ってだと思うと言う迷惑極まりない説明を続ける。



何とか完成形は伝えられた。


はぁ〜つかれた。プルプル具合の説明むずかった〜



まさか最後に祭壇部屋のクッションで伝わるとは何が役に立つかわからんもんだ。




『これは腕がなりますわ!ニコ様の大好物このミレイが完成させますわ!いくつか試作しますので味の判別はお願いしますわ!』


あ、ありがとう。


ミレイにも火を灯してしまった。



知識ないのにあんまり知識チートの人たちみたいに料理教えない方がいいな。



異世界モノの主人公たちは皆んな“いつか異世界で知識チートするぞ“って料理の勉強してたのかな?



うむ。プリン出来たら食べたい。





プリン談義のあと



『ニコ様そろそろお風呂の時間ですわ!』


あ、そうね。お腹膨れるとねむねむなるから




『ミレイさん今日は私がニコ様ご案内します。まだ片付け終わってないでしょう?』



『あら?ではロブさんお願いします』



そういってお風呂へ。もちろん僕は抱っこだ



ジャンケンスキルの事を話したからか



すんなり聞けた


『ロブってさぁ、抱っこスキル持ってる?』




はい?って顔されたよ。



『いえ。その様なスキルは持っていません。そのそうなスキルがあるのも聞い…はっ』



『そうそう!種ありそうね!でも抱っこスキルは誰か開花してそうだよね〜。でもスキル持ってないロブがこんなに抱っこが上手なんだったらスキル保有者どんな抱っこなんだろ?くふふふ』


『ふむ、もしかしたら抱っこされると漏れなく“ばぶ〜“と言ってしまうスキルかもしれませんよ』


な、なんだと!


子供はいい。大人になってそんな事になってみろ。精神力が一撃で削られるぞ。


お、恐ろしいスキルだ。



『ふふふはっはっはっ。冗談ですよニコ様』



なんと!真面目を絵に描いてそうなロブが


『いえ私もニコ様の話を聞いてから随分想像力が豊かになったようです。侮れませんな楽しい事を考えるというのは』



バチコーン


決まったねウインク。



でもそう!楽しいのだ!


『むう〜なかなかやるなー。僕はね抱っこされても揺れないだと思うんだ!例えばね今みたいに僕を抱っこしてる時に賊に襲われて逃げないと行けなくて街の中を屋根をびゅんびゅんするんだけど僕はすやすやーってなるとか!有りそうじゃない?』



『確かに現実的ですなー』



そんなあるのか無いのかわからないスキルを



語りながら僕は服をぽいぽい脱がされてる。







次第にこんなスキルある?とか


こんな事できるスキルかっこよくない?とか



次第に“厨二さん“が起きていた。



やはり男同士だと疼きだすねぇ。




ロブは錬金術師だけあって博識だ。





こんなスキル〜とか触媒が〜とか




わくわくする事ばっかり言ってくる



もう!僕を惑わせる悪い人だな。



そんな僕に衝撃が走った。



雷で打たれたみたいに




まさかそんな…



そして僕はロブに駆け寄り




『ロブ!ロブ!座って!はやく!』




困惑するロブ。しかしそれどころではない。




上着を脱いだロブが屈む




僕は息を呑む





なんでだ!なんでロブなんだ!






心のいや、魂の声が叫ぶ









“それ“にそっと手を添える









ロブは少し困惑いや焦っているのかも








それはそうだろう









まさかロブが“深淵“に連なる者だなんて









僕は顔を顰め唇を噛む









しかし言わなければならない










そして聞かなければならない











『君は封印されし深淵に眠る者なのか?』













きょとーん。だった。






『ニコ様?なんですかそれ?』


『いいんだ!隠さなくていい!これは…』











『この謎の紋章は深淵の者の証なんだろ!』








そう言って僕は見る。




ロブに刻まれている。左の胸にある紋章。




闇を深淵を封じているに違いない!




真円の中に天秤、四方から天秤に伸びる鎖





くっ、その封印の鎖はいつまでもつんだ!






ロブは僕の問いかけに僕に見透かされていると諦めたのだろう。




重い口を開いた




『ニコ様…』










『お洒落タトゥーです』










な、なんだと?タトゥー?




いや、そんな筈はない!




『隠さなくてもいい』






『いえ、本当に。若気の至りです』





『え?闇の者が出て…』

『こないです!』



『深淵に…』

『誰も眠ってないです』



『封印が解け…』

『そもそも封印されてません』









ふうーーー。










『かっこいいタトゥーだね!』




なんだよ、封印かと思ったのに。

“厨二さん“大興奮だったぞ!



『何のマークなの?』



無駄にかっこいい紋章あ、タトゥー。




『昔組んでいた探索者シーカーのチームのマークです』




むむむっ!


し、シーカーだと!



探索者と書いてシーカーだと!






この世界は冒険者ではなく探索者シーカーだったのか!









ま、どっちでもいいけど。




『へぇー!それって依頼を受けて達成したらお金が貰えて、依頼をたくさんこなしてランクが上がってA級とかになったりするやつ?』


『ほ、本当に詳しいですね。まさにそれです』


探索者、ロマンだなー。


探索者シーカーのチームを組むとタトゥーを入れる決まりとかあるの?』


『無いです…』


あれ?なんか俯いちゃった。


ま、あれか仲間内で盛り上がるやつ


うむ。若気の至り。しかし気持ちはわかる


厨二さんもうんうん言ってる


『そっか、でも仲間内で盛り上がるってあるよね?かっこいいし!』



あれ?何か泣きそうになってる?なんで?



『わ、私しか刻みませんでした』



   





『そっか〜。お風呂で背中流してあげるね』






ペイペイ脱いで身体を洗う。



まあ洗ってもらってるけど。



そしてロブの背中を洗ってあげる。


『ロブの背中はおっきいねぇ〜』

『天秤ってセンスいいよね〜』

『鎖が絡みつくってのも有りだね〜』

『あ、お角さまの洗い方おしえて〜』







湯船に浸かりながら僕らはまたひとつ



仲良くなった。




お風呂上がりに僕が右手で一度胸を叩いて


前に腕を伸ばし



『ジャッジメントちぇーん!』



そう叫んでるのをミレイが不思議そうに見ていた。





人には歴史があるものだ。






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