第15話 金庫室は何をする場所なのか

リラックスジュースを飲んでから



僕は船を漕ぎ出した。




2歳児、おねむなのだ。



ロブに連れてられてお昼寝なのだ。




コハクとユオも一緒にすぴーだった。




目が覚めたて時間見ると1時間半程寝ていたみたいだ。



なぜか起床と共に部屋にやってきたミレイ。




メイドってすごいんだな。



おしっこがしたくなり部屋の近くのトイレへ連れて行ってもらった。



トイレは日本のそれだった。



そして2歳児。正面にはミレイがいる。



便座に座っている僕を支えながら見ている。




うむ。2歳児の精神フルで発揮なので気にならない。



トイレから出てリビングで2人に聞いてみた。




アルステルスではここのトイレみたいなのかと?








全然ちがった。





やはりラノベで見る世界観に近いみたいだ。




だから2人共このお家に来てはじめは色々びっくりしたらしい。




そしてもう今までのトイレには戻れないと嘆いていた。



ミレイに至ってはお風呂を大絶賛だった。





そんなたわいもない話をしていて思い出した。お供え祭壇は覚えていた。



その前に聞いておかないといけない事があったのだ。


『生活費ってどうしてるの?』



2人共少し言いにくいそうに


『貯金が有りますのでそちらを…』



『だめーーっ!』


ふんすふんす



『だめなの!お金は主人の僕が払うの!今まで使った分もちゃんと渡すの!』



そう言って僕は自分の執務室へと向かった。



ロブに抱っこされながら。



品のいいアンティークっぽい執務机に壁にはちょっとした本棚。



応接用のソファとローテーブル。



奥にお茶出し用の給湯室。



執務机の後ろにある扉、そこに金庫があるはずだ。神域で聞いたもんね。



10才までの8年分あるらしいからきっと大金だ



トコトコと扉に向かうが鍵がかかっている。



困った。



鍵なんてもらっていない。




しかも鍵穴らしきものも無い。



ドアノブの横の壁に色紙サイズの板がある。



壁よりもやや薄い色の板?だ。



ロブに抱っこしてもらいそれを見るが



なんの変哲も無い板に見える。



こんな時こそ神眼だな。


『神眼』


—————————————

♦︎セキュリティロックシステム


家主ニコ•レーガンの認証後『女神コイン』によって登録された人物は開閉出来る様になる


登録方法▼

家主ニコ•レーガンがタッチパネルに手を置く

セキュリティシステムが稼働

『システムアクセス』をコール認証を行う


登録者の追加▼

家主ニコ•レーガンが登録後タッチパネルに手を置きながら『システムアクセス』をコール

認証。


家主ニコ•レーガンが

『追加リンク』をコール。

タッチパネル下より出てくる追加用パネルに

ニコ•レーガンと新規登録者が同時に手を置く

『リンクアクセス』をコール

尚、新規追加者条件は『女神コイン』所持者のみ有効。


開閉方法▼

登録済みの人物がタッチパネルに手を置いて

『アンロック』をコール。扉は自動でロック


注意事項▼

同時入室は最大3名まで。1人がアンロックし扉を開けていても入り口にセキュリティウォール(不透過)が有り入室出来ない。

入室には必ずタッチパネルで『アンロック』

コールが必要

—————————



ふむ。ハイテクだった。



今の鑑定結果を2人に伝えて



まずは僕の登録だ。タッチパネルに…



これタッチパネルって名称なのか…



まあいい。手を置いてコールする。



『ひしゅてぇむぅあくせぇす』

(システムアクセス)


滑舌が悪いのを忘れていた。




しかし体から何かが引き出されパネルに



吸い込まれた。すごい、聞き取れたのか!



するとパネル上部にダウンロードバーが出現



それと同時に手の甲にちいさな魔法陣



魔法陣は明滅しながらゆっくりと回転する



まさかの



ハイテクとファンタジーのランデブー。



30秒程でダウンロードバーが100%になり



魔法陣が手に吸い込まれた。



『認証•登録完了。ニコ•レーガン認証』


『続けて追加リンクを行えます』


『実行する場合は追加リンクをコール』


『解錠する場合はアンロックをコール』



システム化されたワードが再生されているのだろう。


地球だったらハイテクだなーだけどここだと



どうなんだろう?



答えは2人を見れば分かった。



めっちゃキョロキョロしてた。くふふ



しかし僕は聞き逃さない!



機械的な音声システムにしてあるのだろうけど



女神ユメリカ様の声だよこれ!




まあ女神様が作ったって言ってたもんな。




ここでもやりすぎていた。女神様。



『ちゅいかりんきゅ』

(追加リンク)


すると

『タッチパネルから離れてください』



ロブに一歩下がってもらう。抱っこ中なので



タッチパネルの下の部分から横向きの



少し大き目なタッチパネルがウィーンと

出てきた。音はしてないが。



『ニコ•レーガンと新規追加者はパネルの上に手を置いてください。準備が出来たらニコ•レーガンがリンクアクセスをコールしてください』



まずはロブ。ちょっと動揺している。



2人手を置き


『りんきゅあくせぇしゅ』

(リンクアクセス)



先程と同じ様にダウンロードバーが

開閉タッチパネルに表れる。



違ったのは僕らの手の甲に表れる魔法陣の色



僕は虹色でロブは金。


うむ。女神コインの色ね。


あと開閉用のパネルにも魔法陣が表れて

ゆっくり回転している。


そして女神様の声のシステム音声



『マスターニコ•レーガン認証』

『新規登録者情報をリーディング』

『新規登録者の女神コインを確認』

『女神コインより条件クリア』

『新規登録者スタート』


先程よりやや長めだったが1分程だった。



『新規登録者ロブ•ハーミット認証』


『このまま…』


同じ様にミレイも追加した。



そして金庫室の中入ってみたらバカでかい


金庫があった。



金庫の開閉も登録も同じだったのでさっさと登録して開けてみた。(自動で開く)




中には綺麗に並べてある黒い装丁の本?が

10冊程あった。


下には棚が有りたくさんの硬貨袋(皮製)が

鎮座していた。


気になったのは本。取り出しでみると表紙に


『1年目 推奨利用計画&実働収支計算表』


そう書いてあった。


ロブとミレイがパラパラと目を通す。


時折りなるほど、とか


ああ、それも入りますね!とか。


あと

『こ、これは私達への給金と経費が分けてあります。ニコ様に確認頂きたいのですが私達の給金が多すぎます』


そんな事を言っていた。


そこで僕も計画表に目を通す。これは物価がわかってとても良いな。


注釈でこの辺りの国や街の一般庶民。商人。

上流階級の一般的な給金の参考なども添付してあった。


それをパラパラ〜と見ていく僕



それを何故か息を飲みながら見ている2人



パラパラと5分程見てから


『うん問題なしなの!』



『い、いやしかし、私も、ミレイもこれ程の給金はもらった事のない額です!』


そう言う2人に僕はとつとつと説明する。



魔の森、この魔鏡での生活。家の事だけでなく家庭教師や武術指導をしてもらう事や街に行くにも着いて来てもらうことなど



2人は僕にとっての役割がとても多いのだ。


•執事、メイドとして家の管理、僕のお世話

•料理人であり庭師であり代官でもある

•武芸、魔法、魔術、学問の教師

•お出かけ事の従者兼護衛

•世俗の移り変わりの調査


それはをさっき目を通した計画表の添付資料と照らし合わせながら説明していく。


2歳児なので時間をかけて喋りながらだけど


そうして2時間ほどたってやっと納得してくれた。


『しかしニコ様はあんな短時間で資料を読み込み添付資料だけであそこまで理解されるのですね。大変驚きました。』


ミレイも

『資料に無いところは口頭で説明しましたがあっと言う間に理解し、計算していく様は学者さまかと思いました。私共が教えられるのかどうか心配になってきました』



そんな事を言う2人だかこれは物価の価値と資料を照らし合わせた〈数字〉の話しだから出来るだけなのだ。あとは女神様のおかげ。



『女神様がたくさんスキルとかくれたってゆったでしょ。それで前世ではスキルとかは無かったんだけど学問や経験した事はこちらでスキルになったの』


『それで転生特典ってゆって元々あったスキルは少し強化してくれたのそれが今回は発動しただけなの』


そうチートなのだ。


『それはどの様なスキルか伺っても?』


この2人に隠す必要はないのだ


『えっとね、”並列思考”と”高速演算”と”記憶整理”なの元々はちょっとだけなの。女神様の所でいつのまにか鍛えられたみたいでその後強化されたの』


そう、あの神域で精神制御されていたおかげで余計な事を考えながら女神様と会話しながら女神様をあやしていたら強化されたらしい。


その上で転生特典なのだ。そらチートなるよ



『なので色んな能力あるけどまだちいさいで運動や魔法はこれから勉強しないとよわよわなのだけど計算とか座学は出来るの』



はーっとなら2人


『ちなみにスキルレベルはどの位ですか?』



•並列思考(Lv14)

•高速演算(Lv18)

•記憶整理(Lv9)


こんな感じなのだ。



2人とも絶句だった。



うんそうだよね。さっきステータス見て神眼使ったからわかるんだ。


ミレイが

『ス、スキルのレベル上限は15の筈なんですがLv18というのは一体…?』


ロブも

『しかもスキルLv15なんてひとつでもあればどの国でも上位者になれるレベルです。しかしその頃には年齢的ピークを過ぎるのが定説なのですが』


そうなのだ。普通は。もちろん僕の魔法や格闘系、数は多いがほぼLv1だ。


そしてラノベみたいにホイホイLv upする世界では無いのだ。この3つだけはやはりあの神域の影響がかなり大きいのだ。



そんな説明をする。


『でね、レベルが15を超えるのは僕が新しい”天魔族”っていうせいなの』


『普通のギフトじゃ無くて”種族ギフト”ってのを貰ってその中にある”上限突破”っていう種族特性スキルで上限を超えたの』



こんな話を金庫室の中で話す三人。


コハクとユオは人じゃ無く僕のソウルメイトだから普通に僕が居れば入れる。


なので我が家全員が金庫室で会話をすると言うカオスなのだ



ミレイが


『それでも前世での修練があったらばこその上限なのでしょう!素晴らしいです』



ニンマリしてコチラを見てくる。



そうだね。結果として修練を積んだのだろう。それが新しい人生で役に立つし楽しむ為の一環になるのだから素直に嬉しかった。



そう例え、悲しみと哀しみから生まれた



そんなスキルだったとしても



いや、そんなスキルだったからこの世界へと



紡げたのだろう。



やはり嬉しいものだ。



そう、僕は取り戻す人生を送るのでは無く



楽しむ人生を送ると誓ったのだ。




『ぢゃあ2人ともお給金なっとくしてね』



『僕もこれからいっぱい勉強して楽しくしてついでにお金も稼ぐの!なんたって2人の主人だからね!』


2人共すっと頭を下げて


『我々も給金に見合う仕事をさせていただきます。もちろんニコ様と一緒に楽しく、です』



バチコーン! ウインク決まったね。



やっぱりロブはおちゃめだった。



それを見たからだろうミレイも


『私もニコ様に楽しく過ごしてもらいます。もう少し大きくなられたら一緒に料理でもして楽しみたいです。異世界の料理なんてワクワクしますからね!』



バチーン!



全力で両目を瞑っていた。



くふふ。ミレイはウインク出来ないと



くふふ。メモメモ。



そんな様子を見てちょっと膨れていたお嬢さんだった。



僕らはとうとう金庫室でほっこりしだした。




リビングに移ってちょっとティーブレイク。




お家の管財はロブが責任者でやってもらう事になった。



ミレイもやってきてちょっとひと息と思ったら


僕の鼻腔を懐かしさが襲った。



ガバッとロブのティーカップを覗く。



『コーヒー』


あるんだアルステルスにも。



ふんすふんす!



むっふーとなった。戻った記憶には僕が無類のコーヒー好きなのもあった。




『おや?カフィはニコ様のいた世界にございましたか』



うんうん!御座いましたよ!



ハッとしてキッチンへダッシュ



トテトテだけどしかしミスった



キッチンが見えなかった、ちいさくて



するとミレイが抱っこしてくれた。



見渡す、見渡す。うーむ。



さすがにサイフォンは無かった。



『そのカフィ作るのにサイフォンって言う道具ってあったりする?』



『サイフォン!こちらにも御座いますよ!少々値が張るのと作る職人の腕で善し悪しが別れますが』



むっふー!あるのね!



サイフォンはロマンなのだ。



美味しいコーヒーはマシンでも作れるのに



サイフォンは僕の心を満たす!



あれはもうロマン武器なのだ。



ああ、この世界で勉強して修行してスキルを磨けば僕にも作れる様になるじゃないか!



ひとつ目標が出来た瞬間だった!



僕はそれを祝ってコーヒーいやカフィを


飲みたいとダダをこねた。盛大に。


2歳児フル活用だ。


金庫室でのスーパー2歳児の姿なんかもうどうでもいいのだ。


とにかくカフィが飲みたかったのだ


情熱とは伝わるものだ。せっかくならと


ロブ厳選の豆をミルで削り、ミレイが湯を沸かす。


僕はキッチンに高椅子を持ってきてワクワクで見ている



素晴らしい香りがキッチンに広がる。


椅子をそのままにしてリビングへ急ぎ



ちょこんソファで待つ。



ソワソワ


ソワソワ



するとミレイがすっとカップを置いてくれる



『ニコ様、せめてミルクと砂糖を使われては?』



心配してくれるのはとても嬉しい。



しかしカフィはブラック派なのだ。



しかもロブ厳選の一品はとても良い香りだ。



カップ持ち先ずは香りを楽しむ。



もう美味しい。



その様をロブはうんうんと頷きながら



見てくる。



さながら同士を見つけた時の動きだ。



いよいよ、火傷をしない様にゆっくりと



ゆっくりと口に含む。



ああっ!


懐かしい香ばしい香りが鼻を抜ける



熱さが喉元を通り過ぎて



僕は声を大にして叫ぶ!











『にっがぁーーーっい!!!』













天魔族でも2歳児にカフィは苦かった。






この日長い人生の1ページにそう刻まれた。



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