第8話  耳ってありました?

魔法とスキルの融合。




まさか、出来るなんて。




びっくりだ。





『むふっ!むふふっ!相変わらずお兄さんは早とちりさんなのですー!ユメリカは出来るなんて言ってないなのですよー!』




な、なんだと⁈




まさかのここに来て僕の厨二心を弄び出したのか⁈




『くふふっ。お兄さんは早とちりさんの勘違いさんなのです!弄ぶなんて心外なのです!』




そ、そうか。



早とちりの勘違い野郎の僕はだったか。




ふうーー。




『そうなのです。落ち着くのなのです』



『魔法とスキルの融合はある意味で出来ている技術なのです。しかしながら完全に融合が出来ているわけでは無いのです。』



どうした?急に謎かけみたいになったな。



『くふふ。そうなのです!謎なのです。ユメリカの答えが正解なのかも分からないのです!その理由はお兄さんならもうわかっている筈なのです!』



なるほど。




魔術と同じか。




研究と努力の末に生み出された技術。




ふーむ。




たしかに。ここで答えやヒントを聞くのはこれからの長い人生の楽しみのひとつを失う可能性があるのか。




うむ。聞かない。



そうしよう。




『さっすがなのです!さすがユメリカが選んだ魂なのです!お兄さんやはりすごいのです!』




うむ。悪い気はしない。



しかし僕は忘れてはいないのだ。



女神様は確かに選んだのだろう、僕を、僕の魂を。



『なんとなく』




うむ。思い出したらなかなかのダメージを喰らうな。



今は魂むき出しだから余計になのかな?



うむ。なるべくそっと忘れよう。



『あわわ、あわっ!ち、ちっがーうのですぅー。うぅ。』



しまった!女神様もダメージ大だ。




ダブルノックアウト寸前だ。



よーし、この話題は忘れよう。




うむ。そうしよう。




そうだ!転生特典だ。




もはや現段階でも貰いすぎだが。





女神様がくれると言うのなら遠慮なく頂こう。




『そ、そうなのです!遠慮とか意味不明な事は言わない方がいいなのです!そんな事言ったら天罰なのですっ!』




まさかの天罰。




遠慮して断ったら天罰。





嬉しいのと怖いのとの両責めとは。




さすが女神様。人の域を超えてらっしゃる。




眼福でなくそろそろ平伏だな。




うむ。思ったよりうまくなかった。




反省。




『そうなのです!お兄さんはユメリカからたっくさん貰ってアルステルスを楽しむのです!そして楽しんでいるお兄さんをユメリカが見て楽しむなのです!つまり、ユメリカのおすすめを断る事はユメリカを楽しまさない愚行なのです!』




うむ。なんとなくニュアンスはわかるのでよしとしよう。



やや文章がおかしかったが聞かなかったことにしよう。




『んっ、んんっ、そ、それでお兄さんが欲しい能力はありますか?さっきの話しで魔法関係はもういいと思うのでスキルですよね?』



魔法の才能はすでにもらっていたようだ。



有難い。ありがとう。



そうするとスキルか。



聞かれると案外パッと出てこないものだな。



うむ。困った。




『ある程度はユメリカのおすすめは授与、つまり才能に付与してあるなのです!なので手当たり次第でもいいのでとりあえず言ってみるといいのなのです!』



うーん、そうか。そうだよな。



思いつくやつを適当に言っていくか。




んー。あ!



探知と『あるのです』…か?うん?



ある?



『探知はもうつけてあるのです!なのであるのです!』



ああ、そういう。



つけてあるから、あるのです。ね。



うーん。じゃあ…隠密を『いらないのです!』…つけた、え?要らない?



『そうなのです!ユメリカ特製の〈隠蔽〉があるので隠密は要らないなのです!超上位互換なのです!』



おおう、そ、そんなんだー。



じゃ、じゃあ〜。んー。



剣じゅ『あるのです!』つ…。




おっふ。あ、あるのね。



『なのです!剣、槍、弓、徒手空拳、槌、棒、射撃、などなどおよそはあるなのです!”武芸の才”なのです!』



あ。そ、そうですかー。



う、うむ。うむむ?



射撃?



射撃が必要って事は”銃”がもうあるのか?




『アルステルスに銃はないなのです!』



え?じゃあなんで射撃のスキルが?



『お兄さんがスキルの種を持っていたのです!』



おおう。急な新情報。



スキルの種?



なんぞやそれ。




『スキルの種はまだまだスキルになるには時間がかかるのです!しかし磨き研鑽すればやがてスキルとして世界に現れるのです!今はまだ無いしかしいつか芽吹くかもしれない。それがスキルの種なのです!ちなみにスキルの種はお兄さんに与えた”神眼”でも見抜け無いなのです!種が芽吹けば世界が認める。これは”神の領域”なのです!』




ふーむ。ここにいると世界の秘密の一端を知りすぎるのでは?などとつい思ってしまう。



異世界から来た僕にあったスキルの種ね。



うむ。きっとあのゲームのやつだな。



ちょっと恥ずかしい。と言うかあのゲーム程度で種が出来ることにびっくりだ。



『スキルの為はたくさん、そしてすぐに出来るのです!大変なのはそれが磨かれ育つことなのです!極端な話で言うならば”ジャンケンのスキルの種”なんかは世界中の人々の中にひっそりとあるのです!しかしながら誰もジャンケンをスキルとして磨きあげる事が無いのです!なのでスキルとして芽吹く事はほぼ無いなのです!』



う、うん。そだね。



ジャンケンスキルってどうなるんだろ?



うむ。わからん。



しかし戦闘用の武術関係のスキルがまさかの一纏め。



“武芸の才”



集約されてたかー。となると他、他、他、



うーん、、あっ!ダンジョンあるよな!



ならばこれは欲しい罠か『あるのです!』…い…



あったかー。そっかー。




罠、の時点で言われるって事は発見も解除もだろうなー。




うーん。生産系かなー。




大雑把にあるやつ先に聞こうかな?





『はいなのです!お答えなのです!』




うん。いっぱいあったなー。



•錬金術

•薬学術

•鍛治術

•医学術

•木工術

•建築術

•彫金術

•調理術

•造園術



などなど。だ。


うむ。生産系は術って付ける決まりあるのかな?



わからん。



うーん、困った。



これ無い方を探すのがいいんじゃ無いか?



うーんうーん。



ダメだな。あるやつだけでも信じられないほどもらってるぞこれ。



冷静に考えたらやばくないか?



ほとんどあるじゃん。




うーん。



あ!裁縫!裁縫はどーですか⁈




『なのです!まだ付与してないスキルなのです!お兄さんやりますね!ユメリカが付けていなかったスキルを見つけるなんて!裁縫追加なのです!』




ふうーーー。



さらっと怖いこと聞いたよねぇ今。



女神様、スキル全部付けようとしてないよね?



ま、まさかね?




『大丈夫なのです!全部なんてそれこそ”神”でも無いとむりなのです!』



ほっ。よかった。



もうそろそろこれは確認作業を先にした方がいいのかも。




そうだよ。現時点でのステータスを確認すればいいじゃないか!



うむ。名案だ。



『う、うぅ〜。で、出来ないなのですぅ〜。ごめんなさいなのです〜』




え?、そうなの⁈



『ここ神域で今のお兄さんは魂で待機状態なのです。なので正確には地上に降りる時に全ての能力を付与するのです。そしてここでステータスを出してもまだお兄さんは認証出来ないなのです。なので神域では希望聞いて口頭で与える約束をするなのです』



あーそのパターンかぁー!



モノによってはこの真っ白な空間でステータスを確認している作品もあるけど



今の現実では実行不可能ということか。



うーん、そうすると僕が欲しかったりするスキルはほとんどある様な気がしてきた。




なのでもういいかなー。



だってほとんど人はこんなに能力があるわけでは無いのだから。



足りない事を補うのもまた楽し。だ。




『むう〜。そういうものですか〜?むっむっ〜。』




女神様的にはちょっと不満らしい。




有難いけど。




んー?あとはあったかなー?




んー。んー。んー。




ん?




あ!あれはどうだ!




再生!出来れば超再生!



ケガも安心になるやつ!




チラッと女神様を見る。



あ、あれ?



なんか悲しそうな顔だ。どした?




『むう〜、お兄さんのリクエストなのにぃ〜。ご、ごめんなさいっ!再生スキルは人類種には付与できないなのです!”神”の制約なのですぅ〜。』



そ、そうなの⁈



以外だな。割と聞く能力だったから。



よく魔物あたりから強奪したり…



はっ!



強奪⁈あるの?あったら僕の能力取られたら嫌じゃん!




『大丈夫なのです!強奪は神々の間でとっても問題になったなのです!それで全ての生物に禁止となったのです!仮に、万が一にどこかの異世界、異空間、次元の狭間、獄、だったりで存在していてこちらの神々の管理域に入って来たとしてもその時点で強奪に連なるものは消滅するのです!』




おおう。思ったよりも強奪に厳しかった。



でも取られる方からしたら安心だな。



じゃあ再生はなんなんだろ?



『再生、超再生は人類種に付与すると過信するのです。そしてどうせ治るので大した研鑽もせず生きていくことが多くスキルがある事でマイナスに働くので無いなのです〜』



そういうことね。



確かに超再生持ってたらバーサーカーみたいになりかねんな。



バーサーカーといか魔物みたいにガムシャラ突っ込んで行きそう。





うむ。さすがによく考えられているんだな。




すごい。




『なのです〜!そしてお兄さんもさすがなのです〜!まさか転生前に条件クリアするとはさすがにユメリカも思わなっかたのです〜!』




はい?条件クリア?




な、なんの?




『説明するのです!世界の一端に触れ求むるだけで無く思考し慈愛し未来に想いを馳せる。それらを実現せんとする才能を有し者に門は開かれる。その先に真理を問う者あり見定められよ。そして乗り越えし者には与えられん。』




な、なに?



なんか急に荘厳な雰囲気。




ちょ、焦るってば女神様〜。




チラッと女神様を見る。




しかし初めてみる雰囲気だった。




目が離せない。さっきまでの可愛い女神様じゃ無い。



“神”を否応なく感じさせる。




怖いのに優しい。



その表現すら陳腐に感じる。




なにがおきているのか。



なにがおこるのか。




わからない。




ただひたすらに




“神聖”




そうとしか思えなかった。





その瞬間だった。




可愛いらしい鈴の音のようなユメリカ様の声とは違った。




男の声?




いや、ちがう。



ユメリカ様を感じる。だけど



“それだけじゃない”




その声は中性的なのかもしれない。








『汝、門を開けし者。汝、真理を問い辿りつきし者。汝、我らが力を授けるに値せし者。』




『さすれば与えん』










神聖魔法』






声が届いたかどうかの瞬間だった。






上空からいや、天から荘厳で優しくそして力強い光が降り注いだ僕のへと。






僕は今、魂の状態だ。




なのに、なのにだ。




頭に、顔に、胸に、腕に、指に、足に、




そう無いはずの身体の隅々までに光の力を感じた。






光が収まると目の前の女神様がへたり込んで座っていた。




一体なにが起きたんだろう?




いや、わかっている。




そうわかるのだ。





これがスキルなんだ。と。





魂の状態でも授ける事が出来る程の圧倒的な力。





神からでは無い。わかるそれが。





“神々”からだ。






僕はしばらく呆然としていた。






ただひたすら呆然と。






『お兄さん!大丈夫なのです?』




そんな声でさっきまでの声で僕は我に返った。





『まさかお兄さんがこの時点で神聖魔法のスキルをもらうとはさすがのユメリカもびっくりなのです〜』





神聖魔法?





回復魔法とは違うのか?





むしろ神聖魔法の中に回復魔法が有ると思っていたが。






『それが違うなのです〜。能力を得たお兄さんにはお話しをしても大丈夫なので説明するのです!』




『神聖魔法はなのです!魔法なのですがスキルなのです。スキルなのです。神々が定めた特定の制約を突破する事で得られるスキルなのです!』




『魔法はイメージと理解と制御。それと魔力なのです。それらは魔力があればいつか実現することが出来る現象なのです。しかしその制約からの外れるものがあるのです。それが”神聖魔法”イメージと魔力で起こす現象には限界があるのです。それらを超えるのが”神聖魔法”先ほども話しに出たのですが所謂、再生なのです。そしてイメージ出来たとしても圧倒的に足りない魔力、それを補うのが”神力”なのです。』



『その神力を十全に扱えるようにするのが神聖魔法、門を開き地上に有りながら神域へとアクセスしその力によってを起こす力なのです!』




僕は無いツバを飲み込んだ。




人の身に余る大きな力だ。




『そして魔力だけでも神力だけでも成し得ない。両方か揃いさらに門を開け力を行使する。』




『魔法でありスキルである。しかしスキルだけでは成し得ない。故に』









“特殊スキル 神聖魔法”








はぁ〜、身体あればきっと全身汗だらけだな。





緊張なんかの度合いと違い過ぎてもう表現できん!




ふうーーーー。




ふっふうーーーーー。




気分的にやっておく。




そうしないと今の僕は消滅してしまいそうだ。




うむ。魂ジョークだ。






うむ。ほてった身体に心地よい冷気だ。






チラリと女神様を見る。




女神様もようやくといった感じで立ち上がる。






『はぁ〜びっくりしたなのですぅ〜』




そのちょっと気の抜けた様な話し方に癒された。






うむ。眼福。





出来る事ならひと息ティーブレイクでもしたい。




女神様もちょっと休憩みたいだ。




うん。だってね。




青い半透明のスライムみたいな大きなモノに埋まっているからね。




あれだよあれ。




人をダメにするクッション。




神域異世界バージョンだよきっと。





緊張と緩和。




ちょっと緩和し過ぎているな。と。





でもそれでいいのだ。



だってさっきのあのパワー。やばかった。




そして同時に思った。女神様がよく言う女神パワー。




ほんわか聞いていたがヤバいパワーだろうと思う事にした。




ふむ。ちょっと落ち着いたかな?





んーと。そう、スキルだ。




あと欲しいスキルってあったかな〜?




あんまり考えすぎると強欲とかの大罪スキルとか出てきたら嫌だから考えない様にしよう。




スキル、スキル、スキル、好きる。



おっと。




あ!あれはどうだろ!かっこいいやつ!








手から出てきてシュパッってやつ!





女神様はまだクッションだった。




そしてこちらをチラリの見ながら




『必要ないなのです〜。お兄さんには別のスキルで同じような事が出来るのです!』






そ、そっかぁー。




んーじゃあもういいか!女神様もリラックスモードだし。





そう思うと女神様がトテトテとこちらへやってきた。





『もういいなのですか?』




もっとたくさんでもいいんですよ。そんな事を言ってきそうな表情だった。




たぶん。




うん、たぶんね。





なんでたぶん?





それは仕方がないだろう?




『お兄さん、大丈夫なのですか⁈ 魂がフルフル揺れているのです!何か変わったことありましたか⁈』




震えるさ。魂でも。




いや、魂だから震えるのか?




そうか!これこそが




魂が震えるという事か!




妙にしっくりときた。



未だ不思議そうにこちらを見る女神様。



表情があればきっと僕の方が不思議そうにしていただろうよ。





意を決して僕は問う。



目はないけど女神様ならきっと僕の目線はわかるはずだ。




すっと見る。そこを。






美しく輝く金色の髪の毛。




その上の方を見ながら










耳ってありました?







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