第7話  出来るんですか⁈

スマホ



言わずと知れた文明の利器である。




ピンク色の可愛いらしい狐の絵が描いてあるそのスマホをニコニコしながら操作する5,6才の幼女。




女神様である。




ふんふん!操作しているその後ろには荘厳な神殿。




そしてここは真っ白な空間。





そしておそらく火の玉みたいになっている僕と同じ火の玉の白と黒。



魂むき出しの3人…みっつかな?





うむ。ザ•ミスマッチ




そんな事を考えていると微かに聞こえてくる今は懐かしく思えるその音。



ちいさなちいさなその音。




“プルルルル、プルルルル”





神様の世界もハイテクなんだなー。




いや、もしかしたら神様の知識が地上に降りて誰かが思いつくのかもしれないな。





なんて事を考えながら僕はふよふよと浮いている今日この頃。




しばしのコール音の後




『あ、あ!あの、ユ、ユメリカでっすぅ〜!シ、シシシャ、シャルお姉さま今、いっま、大丈夫ですかー?』





うむ。女神様とはいえ問いかけは地球と同じなんだな。






そこからしばらくユメリカ様のバタバタ劇を見ることになる。




さっき僕に説明していた事を早口で捲し立てたのち一度止まり、深呼吸。そして同じ説明を今度はゆっくりと2度3度していた。





うーむ。シャルお姉さま、頑張って!





途中、途中で何故かユメリカ様は神殿へと向かおうとして止まる。




止まる時には必ず電話口から若干の声らしきものが聞こえる。





ふーむ。たぶん説明の途中で走り出しそうなのを感じて止めているのだろう。




僕でもわかるくらいなのできっとお姉さまはお見通しなのだろう。




人ごとだとちょっとホンワカしてほっこりする。眼福。




しばらくスマホのやり取りをしていたと思ったら保留音が聞こえてきた。





あるんだ、保留。





するとユメリカ様はさっき見た杖を取り出しブツブツと呪文のような歌のようなのを唱えだした。




おや?





まさか最初からやり直しなのか?





そう僕が思ったとたん宙空に魔法陣。





しかし違う事がある。




魔法陣の数が3つだった。それはまた地面に打ちつけられたかと思ったら出てきた。





PCっぽいやつ。だ。




なんだろう。今回のはこじんまりしている。




言うならば、お家用。





そんな感じだ。VRゴーグルみたいなのもしていないな。なんて見ているとスマホをキーボード横の板みたいなやつの上に置いた。




うん。そろそろ僕も予想がつくよ。




同期しているんだね。




“ヴォン”




何かが立ち上がった。まあ言うまでも無いだろう。




そしてしばらく何某かのやり取りが続いていた。





僕たちは放置だ。




仕方ない。僕のために動いてくれている女神様を悪くなんて思うことなど無い。




うん?無いって。




すると画面らしきホログラムっぽい所にぺこぺこお辞儀をしながら『ありがとー!シャルお姉さまー!』と言っている声が聞こえた。




よかった。なんらかの解決方法があるのだろう。




そんなやり取りの間に僕はちょっとした冒険を楽しんでいた。




何故か足元?の魔法陣からは出られないのだがその中では移動が出来るではないか!




なので白と黒の魂たちとちょっとした追いかけっこみたいな事をして遊んでいた。



不思議だ。言葉も念話も何もない。およそ意思疎通をする手立てなんて無いのに僕らは遊んでいた。




そして気がついた。




目の前でほっぺをパンパンに膨らませている女神様がいることに。




うむ。言い訳のしようがない。




なんと無く3人でシュンとした空気を出してみた。




『むぅーっ!お兄さん!白黒ちゃん!ユメリカが一生懸命お姉さまに相談している時に楽しそうに遊び過ぎなのです!むっむーぅー!』





ぐうの音も出ないほどの正論だった。




さすが女神様。




さすメガ。だ。





ジト目だった。うむ。反省しよう。






『むーっ!ほんとにお兄さんったらー!』




5分程だろうか?体感ね。




お小言を言われていた。




まあ、仕方がないことだ。反省。




そして女神様は僕たち告げる。




『ユメリカはお兄さんのお家問題の解決の為少しの間あっちの神殿に行くのです!なのでユメリカが帰ってくるまでお兄さんたちは静かにここで待っていて下さいなのです。』





ふーむ。




あの神殿、飾りじゃなかったんだな。





『むーっ!聞こえてますよ!お兄さん!ちゃんと使ってます!なんならあそこはユメリカのお家なんですぅー!むーっ!』




そ、そうだったのか。




お家批判はよくない。だって住めば都なんだから。





そうして女神様はスタコラと神殿へ行ってしまった。




魂3つ。




ぽつーんだ。




しばらく待つが変化は無い。





ちょっとウズウズの雰囲気が出そうになるが我慢だ。ステイ。





そうこうしていると急にドデカイ鐘の音が響いた。




心臓があったら飛び出していたかもしれないくらいびっくりした。




それくらい大きな音だった。そしてまた神殿が光った。



その光はだんだんと収束していきある時点で光の筋になり空?の方へと飛び出した。



いや、さながらレーザービームが発射されたかのようだ。しかも2本。



音はしなかったがもししていたなら




“ドシュッドシュッ”




そんな光景だった。




しばらく待っていると女神様がこちらへとやって来ていた。



ご満悦の様子だった。



ちょっと鼻歌混じりだ。



『お兄さん!問題は解決なのです!ユメリカはやり遂げたのです!むふーっ!』



うん。嬉しそうでなによりだった。



しかしどう解決したのだろう?だって魔鏡だよ?お家の引っ越しなのかな?



そんな事を考えていると



『くふ、くふふ。ハズレなのですお兄さん!くふふふ。』



ハズレだったようだ。そして楽しそうだ。



『正解を教えてあげるなのです!』



ふむ。僕の事だ。いや、僕たちか。しっかりと聞こう。




『なんと!お兄さんのお家にお世話をしてくれる使用人さんが来てくれる事になったのですぅー!』




ほえ?




びっくりだ。





魔鏡に来てくれる人が居るなんて。




うーむ。大丈夫なんだろうか?人が寄り付けない魔鏡だよ?僕達のために無理させるのも申し訳ない。



『あ!だ、大丈夫なのです!そこは!』




ほ、ほんとに?




『むうー!お兄さんはユメリカの事を信じていないのです!むっ!むっ!遺憾なのですぅー!』



遺憾の意を、出されてしまった。




ふーむ?ふむふむ。



使用人、使用人ねぇ…。元日本人としてはピンと来ないなぁ。




『大丈夫なのです!ちゃんとユメリカが直接面接をしたのです!』




面接⁈



い、いつの間に⁈




『あ!面接と言ってもお兄さんさんが想像する面接では無いのです!ユメリカーナネットワークを使って候補者を選んで過去ログからユメリカへの信仰度を調査して最終選考に残った人に”神託”で質疑応答をしたなのです!』




おうふ。




びっくりだ。





デジタルとファンタジーのコラボみたいな説明だった。




『その結果、是非お世話したい!と言う人をユメリカちゃんと見つけたのです!もっちろん、強制なんてしてないのです!2人とも喜びのあまり号泣はしていたなのです!』




ふむ?2人も居るのか。



信仰度で選んでいたなら女神様を崇拝しているのだろう。そんな時に直接女神様からお願いされたらそら受けるか。



その2人は僕のお世話をする事に納得しているのかちょっと不安だ。




『むぅー!お兄さんは変な所で心配性なのですー!お兄さんはアルステルスに転生で地上に降りますがこの神域でユメリカが直接創造しているのです!言わばお兄さんは女神の子なのです!』



な、なんですと⁈



じ、じゃあ目の前のこのちいさな女の子の女神様は僕のお、お母ちゃん⁈




『むぅ!そ、そう言われるとちょっと違う気がするなのです!お兄さんは前世の魂からの創造なのでユメリカが純粋に神力でゼロから創造したわけでは無いのでちょっと違うのです!な、なので!うーんお、お姉さまなのです!』



ふむ。お顔が真っ赤だな。



さすがにおかあちゃんはダメな様だ。



しかしお姉さまにはちょっと憧れがあるようだ。



うむ。末っ子は姉になりたいものだと理解した。



あ、真っ赤になってほっぺがパンパンだ。




反省。女神様でホンワカしてはいけない。



『と、とにかく!さっきも言った様にゼロからの創造はとっても神力がいるのです!今のユメリカでは夢のまた夢くらい先の出来事なのです!でも今はお兄さんがいて転生のお手伝いをしてこの世界に言わば”降臨”させるのです!だ、だから!一応は女神の子、大きな括りではどうしてもそうなるのです!使用人の2人にもそう説明するしかなかったなのです!むぅー!』




必死だった。




女神様必死。可愛い。眼福。




でも僕のために色々してくれている。




感謝だ。



地上に着いたら祈りをちゃんと捧げようと思った。



そしてこっそりと



ユメリカお姉さまと心の中で呼ぶ事を決めたのだ。




うむ。ミスった。



女神様のお顔が真っ赤だ。




この場所は心の中が筒抜けだった。



うむ。ミスった。そしてちょっと恥ずかしい。



『お、お兄さん!使用人の説明し、しておくね!』



はい、お願いします。



『えっと、簡単に言うと執事さんとメイドさんなのです!』



なるほど。



ずいぶん簡単だった。



『執事さんは魔族の人で、えっとー、なんて言ったかな、あ!そう!ダンディーなのです!それでメイドさんはエルフ族の人でか、かれん?あ、可憐なのです!2人ともユメリカの事をとっても信仰してくれているのです!ものすごく詳しい事までは説明する時間が無かったのでまたお兄さんが説明してあげ下さいなのです!』



おーう。


思ったより情報が多かった。



ふむ。お世話は正直有難い。アルステルスでの常識や知識なんかも近くに教えてくれる人が居ると違うものな。



しかし、魔鏡までどーやって来るのだろう?



めっちゃ強いのかな?



『そ、それなのです!2人とも地上ではそこそこ強いですが魔鏡レベルはむりむりなのです!そこでお兄さんのお世話をする事による女神特典を渡したのです!』



女神特典とな?



なんぞや?



思うやいなや女神様の手から光が出てきた。



うむ。ここはよく光るな。



そしてその光が金色の硬貨になった。



見ると女神様、ユメリカ様の横顔が描かれている金貨だった。



『これは”女神コイン”なのです!』




ふんす。





うむ。そのままだった。




『むぅー!そのままがわかりやすいなのです!それにこのコインはどのお姉さま方でも”女神コイン”なのです!ユメリカが名前を決めたんじゃ無いなのです!』



ぶっくーっ。だった。



そうなのか。ごめんなさい。



『まったくお兄さんはー!で、この女神コインはユメリカの神力が込められているのです。それでこのコインを身体に埋めるのです!』




急にこわい事を言われた。





身体に埋める⁈




ご、ごうも…




『むぅー!ちっがーうのですぅ!このコインは神力によってすーっと痛みも無く埋まるなのですー!拷問なんてしないなのです!お兄さんひっどーいなのです!』




おーう。勘違いだった。反省。




そうだここはファンタジーのある世界だ。




『それでこのコインを所有、つまり身体に内蔵する事によってお兄さんのお家への入居許可がおりるのです!つまり、このコインを所持していると魔鏡の外からひとっ飛びでお家に行けるのです!アルステルスではダンジョンにしか無い”転移”の魔法がお家と森の特定の場所だけで使える様になるのです!』



何気にすごかった。




そして転移魔法は個人で使えないという事実を不意に知ってちょっと凹んだ。




『お兄さんは使える様になるなのです!』




ふぁっ⁈




な、なんですと⁈




『すぐには無理なのです!でもちゃんと勉強や訓練をすれば使えるのです!なんたって”天魔族”なのですから!』



ふふん。ドヤっ。




そうなのかー!さっそくロマンな目的が出来てしまった。



くふふふ。





おっと。浮かれているだけではダメだった。




使用人のふたりは長命種族の魔族とエルフ族。だとしても到底僕の寿命には及ばない。



しかしちいさい頃のお世話だとしてもなんだかちょっと寂しくなりそうだ。



『お兄さんの心配も予想していたなのです!なので女神コインに一度だけ寿命を2倍にする効果を付与してあるのです!但し!すぐには使えない様に制限をかけてあるのです!お兄さんと関わりお世話しながら生活をしてその中で本人たちが心の底から望み、また同じ様にお兄さんも望んだ時にだけ使用可能になるのです!』



『女神コインの力は当然ながら神の力。おいそれと使えないのです!コインが身体の中に入る理由も正確には魂にリンクするのです!なので魂からの願いでないとむりなのです!』




なるほどー。



ついつい可愛い見た目と行動でホンワカしてしまうが



さすがに神の1柱。



神力を使うには使うに値する魂を示さなければならない。ということか。




うむ。奥が深い。





『むっふー!お兄さんもユメリカの凄さがわかって来たようですね!くふふ、くふっ。これでお兄さんを地上に下ろす事が出来る様になったのです!』



おお!ついにか!



『なのでお兄さん!まだ途中だった能力の授与を考えるなのです!』



へっ⁈




あ!そうか!





確かに3種の神器しか確認してなかった。



ふむ。何があるだろーなー。



ブツブツと考える。



実際はブツブツは言ってないが。



うーん。ここはやっぱり魔法かな!



なんたって地球には魔法が無かったのだから!



アルステルスでは魔法の体系はどんなのなんだろう?




基本4属性にプラス闇と光。みたいな感じなのかな?





『むっふー!お答えしますよー!なんと!アルステルスではなんと!魔法は体系化していないなのです!』



ええっ⁈ど、とゆこと?



『魔法はフリーダムな状態なのです!そう!魔法の顕現はイメージと理解と制御なのです!地球で育ちラノベなんかを見ていたお兄さんはピンと来ませんか?』



きた。




そう、ピンと来たのだ。




“イメージと理解と制御”



その言葉だけでも使えそう気がする自分がいる。





『おっと、これを伝えて忘れるとはユメリカはうっかりでした!基本過ぎてのうっかりですよ〜』




魔力




『あーっ!な、なんでお兄さん先に言っちゃうんですかぁー!』




ええー。だって”魔法”だよ?



魔力が無いと使えないよね。




『うぅー。まあいいです!しかしながら体系化している技術があるのです!それが”魔術”なのです!その昔魔法を自由に扱える人とそうで無い人との比較や研究をした人がいたのです。そしてある程度纏めたものがまた後の世で研究されたのです。そしてその中でも使いやすさの差が出てきてそれをまた研究した人がいたのです!そうして脈々と受け継ぎ歴史と共に育ったと言っても過言では無いのが”魔術”なのです!』




ほへぇー。なるほどなぁー。




こういった世界では研究され体系化した”魔術”を転生者なんかがイメージと魔力ゴリ押しで”魔法”を使って



「俺なんかやっちゃいました?」



のパターンが多いんだろうな。



しかしだ。




歴史とは奥が深いはずだ。



しかも昔からたくさんの人々が色んな想いを込めて研究してきたのであろう。




なので一概に、そう。簡単に、




『魔術は魔法の劣化版』




なんて事は言ってはいけないしそんな事を思えばきっと世の中の発展は終わる。




それにだ。女神様は魔法を人々に授けたのだろう。遥か昔に。




その時代。そのまた次の時代。



しばらくの間、”魔術”はアルステルスに存在しなかったはずだ。




そう。




“魔術”は人が生み出した”技術”なんだ。




そう思って女神様を見る。



きっと正解だったんだろう。




とても満足な素敵な笑顔をしていた。




空想の中での事がこれから自分に起こる事だと思うだけでこんなに満ち足りた考察ができる事に喜びを感じていた。




『さすがお兄さんなのです!そうなのです魔術は人が人々が生んだのです!ユメリカはその情熱に打たれたのです!なのである一定の進歩が進んだ時に世界に魔術に”祝福”を与えたのです!』




祝福




個人にでは無く世界に魔術に。




ぶるっと鳥肌がたった様な気がした。



『そうなのです。ささやかな祝福なのです。とっても大きな祝福ではないなのです。しかし!”世界”に与えたのです!』



『そうして出来たのか魔術の適正診断なのです!』




『本人が技術の理解とイメージの親和性の高いものを判断する仕組みです。他の属性が使えないわけでは無く、”得意”を見つけるそれが適正診断なのです!』




はーっ!なんかすごい話を聞いてるよなーこれ。




でもそうすると魔法の才能、能力の授与は大雑把に言えば属性では無いのか。





そうするとさっき話題に出た”転移”もイメージと理解と制御。そして魔力。それらで実現できると言うことか。



だから女神様は僕に出来ると言ったのか。




『そうなのです。お兄さんの言う所のロマンを追えば実現出来るのです。でも見たことも発想もした事が無いものは実現出来ないのです。』




それが僕みたいな転生者。



違う世界からの発想。



魔法が無い世界だからこその空想という名の自由な柔軟な発想。



なるほど。



これは楽しい。ワクワクさんだ。



いい話を聞かせてもらえてご満悦だ。僕は。



倒置法。



うむ。つい、出てしまう程のご満悦だ。




こんな話しを聞くとアレコレ魔法や魔術を研究しそうだ。




そのうち魔法とスキルを融合!みたいな無茶な発想をして悶々としている自分がいそうだ。



へへっ。



すると女神様



『お兄さんやりますね!魔法とスキルの融合。実は…』



ええっ!ま、まさかー!







出来るんですか⁈







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