第122話

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「ミツグのこと、忘れないわ」



「お前もそろそろ、ちゃんとした相手見つけろよ」



3月初旬。



2年弱を過ごしたロンドンとも、あと少しでお別れだ。



いい加減な関係を続けて来たリジーとも、今夜が最後。



「信じて貰えないかもだけど私は本気だった」



「嘘だろ」



だってあの背の高い黒人は?。



モデルみたいな北欧人だっていただろ。



「彼らは仕事のパートナー」



「なら」



「いつか私に真剣になってくれるかなって、賭けてたけど惨敗だわ」



だからシンガポールでもどこへでも行って、私の前から早く消えてちょうだい。



そばかすが目立つ頬を濡らしながら、リジーはアパートから飛び出して行った。




何度も抱いた。



何度も口先だけの「愛」を呟き、彼女のそれも貰った。



セックスの演出だと思ってた。



だけど、リジーは本気の言葉を俺にくれていたんだ。




「俺、やっぱ最低だ」

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