第117話

三上の煩過ぎるイビキに目覚めると、咽の乾きを感じて部屋を出る。



廊下の柱時計は深夜の1時を過ぎた頃で、眠って1時間も経ってはいなかったようだ。



キッチンへ勝手に入って冷蔵庫の中にあるミネラルウォーターを頂くのも、いつものこと。



妙に冴えてしまい、ゲストルームにも戻らずにリビングのソファに座って咽を潤していた。




『ぁ』



微かに耳に届いた甘い声。



そして俺が座っている真上の天井が、ギシギシと言う振動を伝えてくる。



「ここ結構古いもんな」



リフォームされて綺麗だけど、築年数は50年くらいだって奥さんが言ってたっけ。



普段ならゲストルームで爆睡してるから、こんな音にも気付かなかったけれど、流石に真下に居ればわかってしまう。



こういうの盗み聞きとか絶対しないし、気分の良いもんじゃないのに、俺は動けずにいる。




「切ないな」



ぽつりと呟いた言葉は、彼らには届かない。

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