第115話
「千捺、なんだそれ」
「ん?。なんちゃって風明石焼き」
「熊谷さんから教わったのか」
「ううん。これはオリジナル」
目の前のテーブルには、一口大のオムレツのような物がたくさん盛られている。
失礼だけど、明石焼には全然見えない。
「琴平さん、兵庫出身だって聞いてたから頑張ってみたの」
褒めてと言わんばかりに西院さんを見上げる新妻のそれは、あまりにも愛らしくこちらがドキドキとする。
「問題は味だ」
出汁にくぐらせてパクリと味見した彼は、「フランスで買った塩」とだけ告げる。
パタパタとキッチンへと戻って行く彼女を見遣りながら、西院さんは苦笑いを零す。
「うちの料理、あまり期待するな。まだまだ修行中だから」
「あ、はい」
小さなガラス製の容器を持って舞い戻った彼女からそれを受け取ると、彼はみんなの付け汁の器にパラパラと塩を加えてくれる。
「マシになったはずだ。さあ、食べよう」
きっとこれが彼ら夫婦の日常。
微笑ましい夫婦と出会った日の思い出だ。
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