第103話
そして月日は巡り、私たちが渡英して14年目。
昴さんは42歳、私は34歳、倫は12歳、敦は10歳になった。
昴さんは異例のスピードでロンドン支社の最高職である支社長に就任した。
結局、こちらでの業績を認められた彼とともに、私たち家族はロンドンに定住することとなったのだ。
「パパ。グランマ、見付けたよ」
鈴が鳴るような可愛い声の倫が、水鳥が心地よさそうに泳ぐ池の畔にあるベンチの前でこちらに両手を振っている。
「ママ。僕が先に見付けたんだよ」
倫に負けじとジャンプしながら、泣きそうな顔で訴えている。
私と昴さんはゆっくりと芝生の上を手を繋いで歩きながら、子供たちの場所へと向かう。
「私たち家族に素晴らしき人生をくれた君へ。メリッサ・ハミルトン………」
昴さんがベンチのプレートを読み上げると、私たちは静かに手を合わせた。
「ハミルトン夫人。お久しぶりです」
まだ真新しいベンチはハミルトン夫人の為に旦那さんや子供、孫たちから寄贈されたものだ。
倫や敦に「グランマ」と呼ばれた彼女は、1年前に他界した。
一番の友人であり、倫たちにとってはロンドンのおばあちゃんであった彼女の死は、自分の身を斬られるような深い悲しみに苛まれた。
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