第101話

夜泣きも滅多にしないで、くぅくぅと鼻を鳴らすように眠る倫ちゃんを確認してベッドに横たわると、昴さんは私をぎゅっと腕の中に閉じ込めた。



「泣くな、千捺」



どうしても止らない涙は、切ない恋に触れしてしまったからなのか、どうなのかわからない。



ただ悲しいのだ。



「恋って辛いね」



「ああ。でも琴平の決断を悲嘆しては駄目だ」



「うん」



「明日の朝飯は、琴平の好きな中華粥を用意して笑顔で見送ってやろう」




翌朝、私は昴さんとの約束通りに朝食を振る舞い、琴平さんを「いってらっしゃい。またね」と笑顔で送り出した。




いつか失しなった恋の分だけ幸せになれる相手が、彼の隣に現れますようにと願いながら。

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