第98話

「千捺」



2階の寝室で電気もつけずにベビーベッドで眠る倫ちゃんを見つめている私を、昴さんが後ろから抱き締める。



「小柴のご両親や智充さんたちがいるから、千晴さんや輝政さんも乗り越えて行ける。僕らは何もできないかもしれないけど、応援してあげよう」



昴さんに千晴夫婦のことや、千晴が元彼に消えぬ恋情を持ち続けているかもしれないと言うことを告げたことはない。



けれど勘の良い昴さんのことだ、千晴に対する態度や表情に何かを汲み取っていたのかもしれない。



「昴さん」



「ん?」



「家族って、素敵だね」



私の両親も姉家族も、彼のご両親やお義兄さん夫婦だって、ハミルトン夫妻に熊谷さんの家族も。



そして、私たちも。



「ああ。ひとりでは築けないものを一緒に創ってる」



「ホントだ」



「もっと繋いで行こう。僕たちの家族を」




その夜、私たちはベッドの中で繋いで行く命の尊さを感じた。



何度もお互いの名前を告げながら、その中に愛と信頼と悦びと希望を確かめ合う。




それぞれの家族があるように、私と昴さんのそれもあるんだと感じさせる1日だった。

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