第88話
月曜の朝、昴さんは疲れも見せずに出勤すると、千香夫婦は大きなスーツケースにお土産をたくさん詰め込んで帰国の用意を始めた。
「千捺ちゃん、世話になったね。海外観戦が俺の夢だったから、ホントに感謝してるって、昴くんにも伝えといて」
「はい」
「千捺。また来年も観戦するから、昴さんにちゃんと頼み込んでおいてよ」
千香がカラリとそう告げると、智充さんは「いいのか」と驚いたように確認する。
「もちろんよ。智充が笑顔になれる場所に、私も一緒に行きたい。たまには子供抜きもいいでしょ」
「そ、だな」
ヒースローの空港で、しっかりと手を繋ぎ合わせて歩いて行く千香夫婦の後ろ姿を、人波に消えるまで私はずっと見送り続けた。
ふたりの長い夫婦生活をお手本にしながら、私も昴さんと一緒に歩いて行く。
ロンドンで再会した姉夫婦に、私は多くのことを学んだのだから。
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